企業戦略としても年々関心が高まる「健康経営」
経済産業省では、健康長寿社会の実現に向けた取り組みの1つとして、2014年より東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」の選定を行っている。また、2016年度からは日本健康会議と共同で「健康経営優良法人認定制度」を運営している。これらは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する「健康経営」を推進するため、健康経営に取り組む法人が社会的に評価される環境を整備することを目的としているという。健康経営は、2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」にも位置づけられ、人的資本経営の土台として注目されている。また、投資家や就活生などが健康経営優良法人認定の有無を企業評価に活用する動きが見られるなど、企業戦略としての位置づけにも関心が高まっている。
「健康経営銘柄」では特に優れた取り組みを実践している上場企業を選定
「健康経営銘柄」では、特に優れた健康経営を実践している上場企業を選定し、投資家にとって魅力ある企業として紹介している。「健康経営銘柄2024」の選定は、2023(令和5)年度健康経営度調査の回答に基づき評価を行うとのことだ。「健康経営優良法人認定制度」は企業規模別に2部門で認定
「健康経営優良法人認定制度」は、企業規模別に「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門において、「健康経営優良法人」を日本健康会議が認定する制度だ。2024年度の認定の概要は、以下の通り。2023年度健康経営度調査の回答に基づき、要件の達成状況を判定する。大規模法人部門の上位法人500社は、「ホワイト500」として認定される。
2.健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の認定について
健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請書の内容に基づき、要件の達成状況を判定する。中小規模法人部門の上位法人500社は、「ブライト500」として認定される。
なお、本年度は公募の結果、日本経済新聞社が同制度の運営事務局となり、積極的な広報活動等を通じて健康経営のさらなる普及に取り組むとのことだ。
2023年度調査では「情報開示の促進」や「社会課題への対応」の調査ポイントを変更
「健康経営度調査」とは、法人の健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析するとともに、「健康経営銘柄」の選定および「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定にあたっての基礎情報を得るために実施される調査のことだ。認定の前提となる同調査への回答法人数も年々増加しており(昨年度は3,169法人)、特に日経平均株価を構成する225銘柄のうち8割を超える企業が回答している。各業界のリーディングカンパニーの多くが、経営戦略の一つとして健康経営に取り組んでいるのだ。2023年度の調査では、主に以下の3項目において変更を加えているという。
1.情報開示の促進
特定健診・特定保健指導の実施率や、業務パフォーマンス指標の測定および開示を評価対象とする。さらに、労働安全衛生・リスクマネジメントの開示状況について問う設問を追加。これにより人的資本に関する非財務情報の開示・評価の動向を踏まえつつ、健康経営の質の向上を図る。
2.社会課題への対応
個別事情に応じた柔軟な働き方や生産性低下防止に関する設問を新たに追加する。子育てや親の介護、女性特有の健康課題等による従業員の心身の負担が社会的な課題となっていることを踏まえ、従業員の業務パフォーマンスを最大化し、組織の活力を高める。
3.健康経営の国際展開
健康経営の国際的な普及促進の検討にあたり、海外駐在員や現地法人の健康増進、健康課題への対応状況について把握することを目的とした設問を追加する(なお、評価には用いない)。
あわせて、回答企業へのフィードバックに関しても本年度から対象を拡大し、「ブライト500」への申請法人に対しても、結果のフィードバックを行うとのことだ。これにより同省は、中小規模法人のさらなる裾野拡大を目指すとともに、既に取り組んでいる法人に健康経営の取り組みをより強化してもらうことを期待している。また、次年度以降、中小規模法人部門に申請する全法人に対してフィードバックを行うことを検討する予定だという。
なお、大規模法人部門においては、全法人の評価順位や偏差値等を記載したフィードバックシートの交付を引き続き行うとのことだ。
調査回答・申請は10月まで。来年3月に選定と認定を行う見通し
今後のスケジュールについては、以下の通りだ。2023年8月21日~10月13日 17時
<健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請期間>
2023年8月21日~10月20日 17時
<選定・認定時期>
2024年3月頃(予定)
申請は、下記の「健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト」にて受け付けている。
健康経営度調査に回答することで、自社の取り組みの進度が数値として可視化できるだろう。また、求職者や投資家に向けた情報開示にもつながるため、企業の価値向上にも期待できる。健康経営をさらに推進したい企業では、こうした優良法人の選定・認定への申請を検討してみてはいかがだろうか。