株式会社KDDIエボルバは2023年5月29日、障がい者雇用推進の新たな取り組みとして、同年1月より「チューター制度」を導入したと発表した。本制度は、同社の「障がい者雇用専門部署」において、障がいのある社員が、障がいのある新人社員の業務習得や会社生活をサポートおよび育成するものだ。これにより、障がいのある社員の新たなステップアップならびにキャリアパスを支援していきたいという。
“障がいのある社員”が“障がいのある新人”を育成する「チューター制度」をKDDIエボルバが導入。職場定着率は100%へ向上

制度導入により、新人社員の定着率向上とチューターのステップアップを後押し

「チューター」とは、企業における新人社員の教育担当で、業務内容を中心に教える人のことだ。障がいのある新人社員のチューターとなる場合、業務指導以外にも、仕事や環境に慣れるまでの負担感で心身が疲弊し変調が現れやすい新人社員の気持ちの変化に寄り添った細やかなフォロー対応や、お互いの意思疎通を行うコミュニケーションが求められる。しかし、新人社員の障がいの種類や特性によっては、フォロー等が難しいケースもあるという。また、チューター本人の心身負担感や、指導状況が見えにくい環境である場合には、上司や他社員から評価されにくく、スキル・ステップアップにつながりにくい可能性もある。このことから、障がい者雇用推進に取り組む企業の現場では、スキル・ステップアップやキャリアパスが課題だといわれている。

このような課題の解決に向け、KDDIエボルバでは、「障がい者雇用専門部署」で障がいのある社員が新人社員の育成を行う「チューター制度」を導入した。同部署には、障がいのあるスタッフ500名以上が在籍し、約8割がBPO・コンタクトセンターにかかる事業を担い、約2割が部署内での事務や清掃、農業、植栽等の業務を担っているという。この「チューター制度」の導入に向け、まず同社では課題を整理した。その上で、「チューターとして新人社員と向き合い指導する」ための伝え方や距離感、コミュニケーションの在り方、さらには「認知のゆがみ」によって起こりうる事象や新人社員が抱える不安感の理解と対応などを踏まえたチューター育成を行った。さらに、管理者とチューター間の日常的な連携により、指導・助言、評価体制を整えたという。

なお本制度は、社員の新たなステップアップ・キャリアパスの道を開くための施策として位置づけている。2022年4月からのトライアル運用を経て、正式な導入に至ったとのことだ。

本制度導入により、チューター自身の視野を広げることで、よりよい人間関係の構築や社会人として手本となる自覚の高まり、責任感と自主性の成長につながっているという。また、チューターが日々寄り添う環境にあることで、新人社員の心理的安全性の確保や業務習得、環境適応への効果を示し、新人社員と職場全体のコミュニケーションを活発化しているとのことだ。結果として、2023年3月末時点において、新人社員の定着率は100%、職場全体の定着率は約99%へ向上したという。

同社では、障がい者雇用専門部署において、チューターを担う社員が正社員登用に進む成長支援とキャリアパスの整備や、ステップアップ新人社員の受け入れ・育成にかかる管理者の補助業務、チューターによるチューターの育成・研修といった「役割の拡張」を目指していきたいとしている。

障がい者雇用が推進される中、障がいのある新人社員の育成方法に悩む企業もあるだろう。こうした制度の導入は、新人の不安に寄り添った指導が実施できるだけではなく、チューターとなる障がい者社員自身のステップアップにもつながると考えられる。本事例を参考に、障がい者における入社後の育成方法や、キャリアアップの支援方法を検討してみてはいかがだろうか。

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