人手が充足している要因は「賃金や賞与の引き上げ」が最多
昨今、ポストコロナに向けて、経済活動や社会生活を取り戻す動きが急速に進んでいる。一方で、人手不足を訴える企業は増加傾向にあるといわれているが、人手の充足・不足につながる要因としてどのようなことがあげられるのだろうか。まず帝国データバンクが、全体に対し「人手が不足しているか」を尋ねたところ、「不足していない」は3割程度にとどまり、「不足している」は約7割だったという。
そこで「人手が不足していない」とした企業に「その要因」を尋ねたところ、「賃金や賞与の引き上げ」が51.7%と最も多かった。以降、「働きやすい職場づくり」が35%、「定年延長やシニアの再雇用」が31.2%と、多様性を担保する項目が続いた。また、「福利厚生の充実」(26.6%)、「公平で公正な人事評価」(22%)といった、“個人が成長・安心できる職場”に関する項目がそれぞれ2割を超えて続いた。
自由回答には、「既存社員のベースアップのほか、入社時の初任給を年収ベースで約50万円引き上げた結果、応募件数が増加した」や「時間外勤務の抑制や有給休暇の取得率向上に力を入れて、従業員の定着と採用促進に対応している」、「健康経営やDXなどで従業員の付加価値を上げたり、教育にかかる時間を削減した」などの声が寄せられたという。
人手不足要因のトップは「条件に見合った人材からの応募がないこと」
一方で、「人手が不足している」とした企業に「その要因」を尋ねたところ、「条件に見合った人材から応募がない」(54.6%)が最も多かった。とりわけ、即戦力を求める中小企業ではその傾向が著しく、採用に苦難している状況がうかがえたという。以降、「業界の人気がない」(45.4%)、「企業の知名度が低い」(42.2%)、「労働環境が厳しいと受け止められる」(37.2%)、「賃金や賞与などに満足が得られない」(35.7%)と、労働環境や自社の魅力などの項目が上位にランクインした。
さらに、「時間外労働の上限規制や休暇取得の義務化など働き方改革の逆作用」(13.8%)も1割を超え、国が進めている政策が人手不足の要因のひとつになったとする企業も存在した。業務の見直しを実施する上で、残業の削減と賃金のバランスを考慮した働き方改革に取り組むことが急務であることが示唆される結果となった。
自由回答では、「社内で求めているスキルを所有する人材が不足しているが、応募が来ない」といった声が目立った。他にも、「労働環境に対するマイナスイメージにより、面接に来る人材は非常に少ない」、「中小企業は、正規・非正規ともに賃金を上げられないため人手が集まらず困っている」などの意見があり、業界や企業規模によって、人手の補充に頭を抱えている様子が見て取れる。