新たなインターンシッププログラムで、DX領域における障がい者の活躍を目指す
デロイトトーマツは2021年4月より、世界の経営者ネットワークを利用して障がい者支援を行う「The Valuable 500」に加盟し、障がいのあるメンバーの活躍推進に向けてコミットしてきた。その結果、同グループには2023年4月現在、280名超の障がい者が在籍しているという。さらに、2ヵ年経過の定着率はグループ全体で96.7%と、高い水準を保持しているとのことだ。特に、有限責任監査法人トーマツの特例子会社であるトーマツチャレンジドは、2006年より障がいのある従業員の活躍推進に取り組み、それぞれの強みを生かした活躍を支援してきた実績を持つ。トーマツチャレンジドは同グループ全体の障がい者活躍推進の中核を担い、グループ内の従業員と連携しながらその知見を共有。2023年4月からは、ショートタイムワークを希望する人に向け、段階的なトレーニングを取り入れつつ長期的な育成を目指す「プレ雇用プログラム」も開始したという。そうした中で今回、同グループは新たな取り組みとして、KindAgentとともに、障がいのある学生や既卒者に向けて「Diverse Abilitiesインターンシッププログラム」を開発した。本インターンシッププログラムでは、あらゆる障がいの特性を理解し、それぞれの個性にも配慮した中長期的な人材育成を目指している。同社によると、発達障がいのある人は、発達特性によるコミュニケーションの不得手さや本来能力を発揮する要件の個別性などから、業務経験を得ることが困難な場合もあるという。その一方で、「パターン認識」、「記憶」、「数学」といった分野で突出した能力を発揮する場合もあり、近年、デジタル領域でのポテンシャルが指摘されているとのことだ。また、身体障がいのある人も、障がいの特性から就職先が限られてしまうことがあるものの、より社会で活躍する可能性も秘めているという。加えて同グループは、障がいのある人々の就職やスキルアップの機会には地域差があるといった課題も認識している。
このような課題を踏まえ同グループは、「日本企業が競争力を強化していくために必要とされるDX領域で、障がいの有無に関わらず中長期的な視点で人材育成をしていくこと」が、今後の日本によい影響を及ぼすと考え、本プログラムを展開しているという。
約5ヵ月の完全オンラインプログラムで、基礎から実践的スキルの習得を促す
今回開発した「Diverse Abilitiesインターシッププログラム」の特徴は、以下の通りだ。●3ステージの段階的なIT学習プログラム
プログラムの内容を3ステージに分け、約5ヵ月にわたり基礎から実践までを行う。1stステージでは、オンラインIT学習プログラムを受講して、デジタル人材としての基礎を学習する。2ndステージでは実習を主とし、仮想プロジェクトにおいて体験を積む。3rdステージでは同グループに配属され、OJTにより実践的なスキルを磨いていく。
また、1stステージ・2ndステージでは、ディスカッションを含めたキャリア教育も組み込まれており、学習したツールを将来どのように活かせるかなどを、意識しながら学んでいける仕組みとなっている。さらに、講師がそれぞれの障がい特性や個性を尊重しながら、面談による定期的な学習サポートを行う。
●医師・心理士によるカウンセリング、心理教育を含むセルフケアトレーニング
プログラムの期間中、専門医もしくは心理士がカウンセリングやICTツールを用いて、定期的に状態を把握し、学習をサポートする。また、安定的に働いていくためのメンタルヘルスケアに関する心理教育をカリキュラムに組み込むことで、参加者も自らの特性を理解し、受容した上で対処することも学べる。プログラム全体を通して、自分らしく働いていくために大切なメンタルケアの素地を養うことと“将来のありたい姿を描く力”を獲得することを目指す。
●完全オンラインでのプログラムの提供と、同グループでの就労機会
プログラムの受講は完全オンラインで、日本全国から参加できる。プログラム受講後は、正式な選考を経て、同グループにリモートワーカーとして就業することも可能。
2024年4月より、民間企業における障がい者の法定雇用率が段階的に引き上げられる予定だが、現状で未到達の企業や課題を抱える企業も多くあると考えられる。本事例は、障がいのある学生や既卒者への支援を含めたインターンシップを行い、自社への採用へとつなげる先行事例となりそうだ。他社の取り組みを参考にしながら、障がい者が個々の特性を活かしながら働ける環境の構築を目指してみてはいかがだろうか。