特別な理由がない場合(例えばその職場でパワハラがあり、その結果休職した等)、元の職場へ戻す。新しい環境はそれ自体がストレスとなるからである。
2.他の部下と同様に処遇し、公平に扱う
あくまでも人事評価などの処遇は公平にすべきである。メンタルなのによく頑張ったと甘い評価を付けると、周囲の頑張っている社員はやる気をなくしてしまうからだ。そもそも休職した時の仕事のフォローは周りの社員が行っていたことを忘れてはならない。
このポイントを間違えると、周囲の頑張っている人が頑張り損になりかねず、職場崩壊につながっていってしまう。職場の基本は「頑張る人がより頑張れる環境作り」である。休職者の周りの頑張っている人にも目を向ける、筆者が最も強調してお伝えしているポイントである。
3.以前と比較して、単純な仕事を労働時間に見合った量だけ配分すること
仕事がなさすぎるのもストレスになる。納期的には余裕があり、きちんとできたか、できなかったかを上司が判断できる仕事をアサインすべきである。あいまいに机に座ってさえいればよいから、とするのは逆効果である。ある職場では3カ月間仕事を与えず、上司の隣で8時間座ってさえいればよいとしていた。その結果復職者は、自分は必要ないという思いに駆られ、思いつめまた休職してしまったという例がある。仕事がなさすぎるのも人はストレスになるのである。適切な仕事のアサインは上司の腕の見せ所である。
4.心理状態に波があることを踏まえ、行動をよく観察し専門家にも報告する
きちんと職場の状況を、例えば産業医等に伝えることが大切である。産業医は面接の時しか部下の様子を知ることができない。きちんと一番身近にいる上司が健康管理スタッフを通じてでも状況を伝えるべきである。その際に大切なのは、「なんとなく最近元気です」といった印象ではなく、「遅刻が今週3回ありました」などという数字できちんと伝えられるようにすることである。
5.順調に回復していたとしても、3~6か月後に、再発することがあることを覚悟しておく
メンタルヘルス疾患は多くの場合、よい時と悪い時の波が交互にやってくる。上司としても徐々にその波が緩やかになってくるものだという理解のもと、一喜一憂せずにマネジメントに臨むべきである。
6.定期的な通院の必要があるときは、時間的な配慮をする
定められた時にきちんと通院するのは早く回復する大前提である。そのためにきちんと通院できるよう時間的な配慮を忘れないようにすべきである(ただし、ほかの社員から見てあまりにも依怙贔屓と思われないように気を付けるのも忘れてはならない)。
7.医師から処方されている薬を服用することに対して否定的な発言をしないこと
「まだ薬飲んでるの?」などの一言が、部下の服薬を辞めさせてしまうということは意外とありがちである。薬の服薬の指示は、あくまでも医師の指示通りすることが正しいと考え、素人アドバイスをしないよう気をつけるべきである。
以上のような心得を管理職研修でも繰り返し伝えることで、職場で復職者を迎える不安というのは低減していくものである。経営者や人事責任者は、管理職に対しメンタルヘルスに対する正しい知識を習得できるよう常に考えていく必要がある。そのことが会社のリスクヘッジになるだけでなく、人が辞めない育ちやすい組織の土壌になるからである。
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所
植田健太