“キャリア自律度の高い層”の割合や特徴とは
近年、日本企業では人材マネジメント改革である「ジョブ型雇用」に注目が集まっている。「ジョブ型雇用」とは、「会社の事業戦略において必要なジョブに対し、会社と個人が合意の上、個人はジョブを遂行し、会社はそれに見合った報酬を提供する“取引ベース”での雇用関係」を指す。その前提として、個々のビジネスパーソンが自身のキャリアを選択し、構築に責任を持つ「キャリア自律」が求められている。そうした中、マーサージャパンは「キャリア自律」の実態を調べるべく、本調査を実施した。まず同社は、「キャリア自律度に応じたグルーピングと構成比」を分析している。その結果、「キャリアの自己選択」と「キャリアの構築責任」がいずれも高い「キャリア自律度が高い層」の割合は、全体の11%にとどまった。
あわせて「キャリア自律度の高い層の特徴」を調べたところ、業種としては「企画・マーケティング、インターネット・ゲーム、士業等」の専門職に出現する割合が高かったという。また、転職未経験者と比較して、転職経験者のほうがキャリア自律度の高い層が多く、エンゲージメントやパフォーマンスも高いことが判明したとのことだ。
“キャリア自律度が高い層”は、低い層より平均年収が高い結果に
次に、同社はキャリア自律度と個人年収の関連性を調べている。個人属性を、「従業員5,000名規模の日系企業に勤務」、「営業の主任・係長クラス」、「大卒で勤続13年」、「東京都在住の35歳、男性」に揃え、キャリア自律度の高い層/低い層に分けて平均年収を比較した。すると、「キャリア自律度の高い層」は平均年収が744万円、「キャリア自律度の低い層」は689万円で、55万円の差があった。“キャリア自律の高い層”は「会社のパーパスへの共感」や「成長機会」を重視
続いて、同社はキャリア自律度が高い層/低い層に対し、「働くうえで、特に大切にしているもの」を聞いている。すると、キャリア自律度が高い層は、「会社の理念・パーパスへの共感」や「達成感のある仕事や成長機会」を大切にしている傾向があった。一方で、キャリア自律度が低い層は、「雇用の安定性」や「働く仲間との関係性」を重視する割合が高かった。また、両者が共通して重視しているのは「ワーク・ライフ・バランス」や「報酬水準」だった。
キャリア自律を高めるために有効な施策は「上司のビジョン・戦略共有」など
最後に、「キャリア自律を高めるうえで有効な施策」を、ソフト・ハード面に分けて同社が調べている。その結果、ソフト施策では「上司のビジョン・戦略共有」や「丁寧なコミュニケーションとフィードバック」があがったという。ハード施策では、「キャリア機会の公開や拡張(ポジション公開、副業)」や「能力・キャリア開発支援」があげられたとのことだ。本調査より、「ジョブ型雇用」の前提として重要な「キャリア自律」の度合が高い層は、全体の1割程度にとどまることがわかった。個人の「キャリア自律」を高めることで、企業価値や社会全体の生産性を高めることにもつながると考えられるため、有効な施策等を参考にしながら、社員の「キャリア自律」を促してみてはいかがだろうか。