配慮のし過ぎは逆効果になることも
よくある例は、復職者を自身のそばに置き、朝つらいと聞けば出社時間を遅らせる、仕事はしなくていいからと、仕事を配慮するというものだ。上司はまるでカウンセラーのように、部下のことを過度に傾聴し、配慮をしすぎるのである。また、上司はそのように対応していることで、きちんと部下のメンタルヘルス問題にも対応できていると考えていることが多い。しかしながら、これらの配慮は、残念ながら逆効果になることが多い。復職者からすると、そのように配慮されていることで自分は役に立っていないと感じてしまい、また症状が悪化してしまうことがあるからだ。あくまでも企業は職場であり、働く場所であり、治療の場ではない。復職者も、きちんと仕事をしてこれまで迷惑をかけて分を挽回したい、早く周囲に認められたいと考えていることが多いのである。
休職者の周囲の人が、「どうしてあいつだけ配慮されているんだ」と、頑張ることがバカらしくなってしまうという負の面もある。頑張らないほうが配慮され、頑張る人には仕事がどんどんと積み重なっていき、頑張る人から疲れて辞めたり、休職したりするのである。
そうなると、職場はどんどんと頑張る人からつぶれていくという悪循環が蔓延し、もはや生産性の高い職場ではなくなってしまう。本来職場というのは、頑張る人がより頑張れる環境であるべきだが、メンタルヘルス対策を導入したての時はあべこべになって、頑張る人への配慮が欠けてしまう。
復職社員と接する際の2つのポイント
そうならないために、どのような点に気を付けて復職者と接すればよいだろうか?Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所では、以下の2点をいつも強調してお伝えしている。それは、
1.健康を心配していることを伝える
2.チームの大切なメンバーであることを伝える
の2点である。1だけでは、先ほどのようにあべこべの結果になってしまう。また、2を強調しすぎると、休職者の方にはプレッシャーになってしまう場合がある。要は2つのバランスが大切なのだ。
このようなポイントは、管理職研修などを通じて、繰り返し継続的に訓練することが大切である。少なくとも1年に1回は、継続的に研修を実施したい。毎年1回でも定期的にそのような場があると、管理職が個人で問題を抱え込まず、オープンに相談できる土壌も形成できる(もちろん守秘義務には配慮した上で)。この繰り返しが生産性の高い職場につながるのだ。
御社では、管理職が一人で問題を抱えていないだろうか? あるいは、管理職ごとに自由に勝手に判断させていないだろうか?
メンタルヘルス問題は、会社が統一的に対応することが、休職者本人・周囲の人・上司・会社にとって、良い結果を導く。経営者はそのような考えでメンタルヘルス問題に取り組んでもらいたい。
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所
代表 臨床心理士・社会保険労務士 植田 健太