採用担当者の方を悩ませるのが、応募者の個人的な「持病や既往症の情報」を採用面接の場で聞いていいのか、ということだ。実際、当事務所でも「採用面接時に応募者の持病や既往症を確認したいのですが、問題ないだろうか」というご相談を受けることがある。
既往症が原因と考えられる自動車事故が社会問題となったこともあり、関心が高まっているようである。
聞いてもいいの? 採用面接における応募者の持病や既往症確認

法令ではどのように定められているのだろうか?
(1)労働安全衛生法
 労働安全衛生規則においては、健康診断項目の中に「既往歴および業務歴の調査」が挙げられている。使用者は、労働者の安全確保のために、既往歴を確認する義務があり、適切な措置を講じなければならないとされている。
(2)職業安定法に基づく厚生労働省の指導
 「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」は差し控えるべきとの指導が行われている。よって、確認にあたっては、合理的・客観的な必要性が求められる。

 では、どのように確認するべきか?
 人事担当者の皆様であればお気づきだろうが、通常の健康診断における既往歴の確認では、詳細な情報は得られず、限界がある。また、面接の段階で持病や既往症に関する健康診断資料の提出を求めることは現実的でなく、口頭の確認では、入社後、問題が発生した際にトラブルになる可能性が高くなる。
 これらを勘案すると、業務に支障がある持病や既往症については、書面による自己申告を求めておくべきではないだろうか。
 万が一、重大な事実を隠していた場合には、採用取り消しや解雇といった処分も検討する必要が出てくるだろう。

確認の際の注意事項

次に確認の際の注意事項とは?
 法律上、確認が可能であるとしても、説明が十分でなかったり、対応が不適切であったりすると、トラブルの原因となる。繊細な情報であることを充分に認識した上で、次の点を説明しておく必要がある。
(1)業務上の必要性があること
 労働者や第三者の安全確保が目的であることを説明する。機械操作や自動車運転時に危険である等、「なぜ聞かなければならないのか」を説明することにより、納得を得るようにしるのである。
 また、採用となった場合に支障のない業務への配置を検討する旨、説明を加えれば納得性は高まるだろう。    
(2)記入は任意であること
 記入用紙にも「答えたくない場合は答えなくて構いません」と記載しておこう。「無理に書かされた」との印象を持たれないよう、注意が必要だ。記入のない場合は、それも含めて総合判断の一材料とすれば良いだろう。
(3)記入した情報は他の目的には使用せず、適正に管理すること
 鍵付ロッカーに保管する等、他者の目に触れないよう、注意しよう。保管や廃棄の方法を定め、誤って情報が洩れてしまうことのないようにしなければならない。取扱者へ研修を行う等の措置も必要だろう。応募者にも適正に管理する旨、説明を加え、安心してもらうことが肝要である。

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