改正点はいくつかあるが、そのうちのひとつが「職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることを明示」されたことである。
しかし、セクシュアルハラスメントといえば、主に男性が女性に行うものという考え方が一般的であり、実際にもそのようなケースが多数であるため、「同性に対するセクハラ」と言われても、具体的にどのようなものか、イメージがわかないのではないだろうか。
とはいっても、セクシュアルハラスメントを防止する対策をとることは、事業主の義務となっており、今回の施行規則改正についても、「内容がよくわかりません」とすましておくわけにはいかない。
「性的な発言」がセクハラになることも
基本に戻って、職場のセクシュアルハラスメントの定義を見てみよう。職場におけるセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
(厚生労働省 都道府県雇用均等室パンフレット「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」より)
上の文中の「性的な言動」には、「性的な発言」」と「性的な行動」が含まれる。
後者は多くの人がセクハラという言葉で連想するような、性的な関係を強要したり、不必要に体に触ったり、というものだが、前者については、実は「これがセクハラ?」と思うようなものも含まれている。
具体的には、下記のような内容である。
性的な事実関係を尋ねること
性的な内容の情報(噂)を流布すること
性的な冗談やからかい
食事やデートへの執拗な誘い
個人的な性的体験談を話すこと
「食事やデートの誘い」以外は、同性に対して行われると想定しても、それほど違和感がないものばかりである。
男性同士にありがちなのはワイ談、女性同士にありがちなのはウワサ
今回改めて、施行規則で明示されることになったが、このような「性的な発言」については、セクシュアルハラスメント防止の研修の中では、必ず「同性に対して、または、女性から男性に対してもセクハラとなりうる」という例として触れている。たとえば、職場の先輩が新人に対して、「恋人いるの?」「彼氏(彼女)とはどこまでいってるの?」と聞いたり、ましてや具体的な行為の内容を根掘り葉掘り問いただす、さらには、風俗に行った体験談を「武勇伝」のように話すなどの行為が「性的な発言」にあたる。たとえ不愉快に感じても、後輩・部下の立場で、「そんな話はやめましょう」とは、かなり言いにくい。
職場での上下関係だけの問題ではなく、不快感を表明したりしたら「話のわからないヤツ」「おじょうちゃん」などと、さらに性的なからかいの対象になる可能性もある。
また、就業時間中に、そのような話をするのは問題がある、と考える人も、お酒が入ればまた別、と考えがちだ。歓送迎会、新年会、忘年会などの、職場ぐるみの宴席などは、セクシュアルハラスメントを考えるときは、「職場」として扱われ、そのような場での行為が問題になった判例も多数ある。油断は禁物だ。
では、女性同士の場合はどうだろうか。
ありがちなのが、「ウワサを流す」という行為である。
話している方は、他意のないおしゃべりだったとしても、内容によっては、セクシュアルハラスメントになりうる。
具体的には「しょっちゅうオトコが変わってる」「ホテル街で男性といっしょのところを見かけた」「上司とデキてる」などと、性的に放縦なことを匂わせる内容が危ない。
それが事実かどうかは関係なく、職場でそのようなウワサをたてられることによって、本人が苦痛を感じるようであれば、これもまたセクハラである。
男性同士の場合もそうだが、「相手を傷つけよう」という悪意がない場合でも、被害を受けた方にとっては、職場に来ること自体がつらくなってしまうという結果になることもありうる。
「たいしたことではない」と軽視するのではなく、性的な発言や行動は、本来職場にふさわしくないものであり、同僚、先輩後輩、上司と部下の間の信頼関係を壊す可能性のある問題だという認識を、しっかり持っておきたいものである。
メンタルサポートろうむ
代表 李怜香