株式会社タバネルは2022年5月30日、「若手社員の心理的安全性調査」の結果を発表した。調査期間は2022年5月20日~21日で、直属の上司がいて、部下がいない20~34歳の正社員500名から回答を得た。これにより、非管理職の若手社員が感じている心理的安全性の実態や、上司との関係性への影響などが明らかとなった。
所属チームの心理的安全性が「高い」と答えた若手社員は2割未満。「心理的安全性」と「目標理解」には相関関係も

所属チームに心理的安全性を感じている若手社員の割合は

「心理的安全性(psychological safety)」とは、“自分の考えや気持ちを誰に対してでも発言できる状態”である。近年、チームの生産性や業績にも好影響を及ぼす一因として、テレワーク環境下では特に注目されている。

はじめに、同社は「自身の所属するチームは、心理的安全性が高い状態であるか」について、「A:その状態である」と「B:その状態ではない」のどちらに近いかを質問した。その結果、「Aに近い」が18%、「どちらかと言えばAに近い」が49%、「どちらかと言えばBに近い」が26%、「Bに近い」が7%となった。「心理的安全性が高い状態にある」と感じているのは、全体の2割未満であることがわかった。

なお、以降の設問において、この回答結果を以下のように分類して示している。

●「Aに近い」とした回答者……「心理的安全性:高」群
●「どちらかと言えばAに近い」とした回答者……「心理的安全性:中」群
●「Bに近い」「どちらかと言えばBに近い」とした回答者……「心理的安全性:低」群
所属チームは心理的安全性を感じられる状態か

心理的安全性の高いチームに属す人ほど「成長できる」との実感を持つ

次に、同社は「所属チーム内にいると、自身が成長できるか」について、「A:成長できる」と「B:成長できない」のどちらに近いか尋ねた。回答結果を心理的安全性:高・中・低群ごとに見ると、「心理的安全性:高」群では、「Aに近い」または「どちらかと言えばAに近い」と答えた割合の合計が、88%だった。

一方で、「心理的安全性:低」群では同割合が37%と、「高」群の半分未満となった。心理的安全性の高いチームの方が、「成長できる」と感じている若手社員の割合が多いようだ。
所属チーム内で成長できるか

「心理的安全性高」群では、過半数が目標達成に向けた取り組みに積極的

続いて同社は、「心理的安全性がチーム目標の理解に与える影響」を調べるため、5つの項目(「チーム目標を理解している」、「目標や仕事について進捗共有されている」、「目標や仕事の結果について、チームで振り返りをしている」、「所属チームの目標が達成されると嬉しいし、できないと悔しい」、「所属チームの業績が良い」)について、自身の状況を質問した。「あてはまる」もしくは「ややあてはまる」の合計数値を心理的安全性:高・中・低群に分けて比較すると、「心理的安全性:高」群では、5つの項目全てでトップとなり、「当てはまる」と「やや当てはまる」の合計はいずれも6割以上と過半数を占めた。心理的安全性が高いチームほど、目標の理解が進んでいることがうかがえる。

また、心理的安全性:高群と低群で数値が乖離していた項目は、「目標や仕事の結果について、チームで振り返りをしている」で、高群が75%だったのに対し、低群は27%と、48ポイントの差があった。また、「所属チームの業績が良い」についても、高群は61%、低群は25%と差が開いていることから、心理的安全性の確保は業績にも影響することがうかがえる結果となった。
【心理的安全性の高低群別】チームでの目標や仕事の共有、業績等についてあてはまるもの

心理的安全性が高くなるほど「部下が上司を信頼・支持」する傾向

続いて同社は、「心理的安全性が上司・部下の関係性に与える影響」を調べるため、新たに5つの項目(「上司はメンバーを信頼して仕事を任せている」、「上司は、仕事の改善提案等に対し実現のために努力する」、「上司は、困ったときに助けてくれる」、「全般的に見て、上司は部下を支持している」、「上司は、メンバーを公平に取り扱っている」)について、「あてはまる」と「ややあてまる」の合計数値を心理的安全性:高・中・低群に分けて、回答を比較している。

その結果、「心理的安全性:高」群では、5つの項目全ての割合が他の群を上回った。また、高群と低群の間で特に数値の差が大きかったのは「全般的に見て、上司は部下を支持している」で、高群では76%、低群では27%と、49ポイント差だった。心理的安全性が高いチームの上司ほど、部下を信頼・支持し、公平に対応していると推測できる。
【心理的安全性の高低群別】上司からの信頼・支持・公平さ等についてあてはまるもの
最後に、「上司の部下への働きかけ」について把握するため、「上司のフィードバック(以下、FB)は具体的である」、「上司の言動は一貫している」、「上司が優れた仕事をしたときに認めてくれる」、「仕事の失敗に対し、人ではなく仕事ぶりを責める」、「上司が仕事の期限を明確に示してくれる」の5項目について尋ねた。すると、いずれの項目でも「心理的安全性:高」群の数値が最も高くなっていた。特に、「上司のFBは具体的である」では、高群が72%だったのに対して、低群では25%と、47ポイント差があった。心理的安全性が高いチームの上司ほど、具体的なFBや言動の一貫性を実現できているようだ。
【心理的安全性の高低群別】上司のFBや言動の一貫性についてあてはまるもの
心理的安全性の高いチームほど目標達成への取り組みを行っており、「業績が良い」と実感する若手社員は多いようだ。調査結果からは、心理的安全性の高さが、上司・部下間の関係構築にも好影響を及ぼすことがうかがえた。組織力強化のためにも、会社全体の「心理的安全性を高める」ことをいま一度意識したい。

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