「入社1年目」と「現在」におけるテレワークの実施状況
2020年4月入社の新卒新入社員は、新型コロナウイルス感染症拡大にともなって発出された緊急事態宣言によって、その多くが入社直後からのテレワークを余儀なくされた。それから1年以上が経つ現在(2021年6月)、コロナ禍で入社した社員におけるオンボーディングの実態は、コロナ禍以前に入社した社員と比べ、どう違っているのだろうか。現在の会社に新卒入社した20代の正社員(20入社196名、19入社197名)計393名
※勤務先の従業員規模は300名以上
※性別は均等になるように回収
※2020年4月~2021年3月テレワーク経験者
はじめに「テレワークの実施状況」について尋ねた。すると、20入社の「1年目研修期間」におけるテレワークの頻度は「ほぼ毎日」が42.3%、「週に複数回」が17.9%、「週に1回程度」と「週に1回程度より少ない」がともに11.2%となり、合計82.6%が「1年目研修期間」にテレワークを経験していた。「1年目配属後」と「現在」においては、「ほぼ毎日」の割合は減少傾向にあるが、3時点とも全体の約8割がいずれかの頻度でテレワークを経験している。
一方、19入社の1年目(2019年時点)では、「テレワークは全くなし」が「研修期間」では78.2%、「配属後」では62.4%と、テレワーク経験者は半数以下だった。一方「現在」では、19入社の93.5%がいずれかの頻度でテレワークを実施しており、20入社の82.1%よりもやや高いという状況に。3時点とも、20入社と19入社で、テレワークの実施頻度に有意差がある結果となった。
「期待役割レベル」の認識に年次間の有意差はなし
次に、「入社1年目での『期待されていた到達像』として最も近いもの」について尋ねた。すると、20入社と19入社の全体で「与えられた仕事について、上司や先輩の指示のもとにきちんとこなせるようになること」が35.6%とトップだった。次いで「社会人としての基本的なマナーや規律を身につけ、会社や職場に慣れること」が29.3%、「与えられた仕事について責任をもち、自ら周囲の協力を引き出しながらやりきれるようになること」が18.6%と続いた。また、20入社と19入社それぞれで見ると、「与えられた仕事について、上司や先輩の指示のもとにきちんとこなせるようになること」は20入社が32.7%で19入社が38.6%、「社会人としての基本的なマナーや規律を身につけ、会社や職場に慣れること」は20入社が30.6%で19入社が27.9%、「与えられた仕事について責任をもち、自ら周囲の協力を引き出しながらやりきれるようになること」は20入社が17.9%で19入社が19.3%だった。
このように、年次間でテレワークの実施状況は異なっていたものの、個人が認識しているオンボーディング期間中における「期待役割レベル」に有意差はなかった。
年次間で、「社内コミュニケーション」や「学びの充足度」に違いが表れる結果に
続いて、「入社1年目を振り返り、仕事を進めたり組織や職場になじんだりする上で、役に立ったものと不足を感じたもの」について分野ごとに尋ねた。すると、「業務支援・相談」分野では全般的に年次間で有意差はなく、「上司や育成担当者、職場の先輩からの面談や支援」については20入社、19入社いずれも半数以上が「役に立った」と回答。一方、「不足していた」は約2割と、全項目の中でも相対的に低い結果となった。これに対し、「社内コミュニケーション」分野では年次間の差がみられた。「同期との交流」や「職場メンバーとの業務外の交流」は、19入社で「役に立った」が高かった一方で、20入社では「不足していた」の選択率が高く、テレワークの影響が示唆される結果となった。
また、「学び・インプット」分野で、19入社よりも20入社で「社内の意思決定ルートについて知ること」を「役に立った」と回答した人が多かったのも、テレワーク下での仕事の進め方が影響したと考えられる。さらに、同分野の全ての項目において、20入社よりも19入社の方が「もっとあったらよかった(不足していた)」の回答が多いのも特徴的だった。入社3年目になり、1年目を振り返った際の気づきがさらに増えているということかもしれない。