「人的資本経営」は経営者・役員でより認知が高い傾向
企業価値の決定因子が有形資産から「人的資本」を含む無形資産に移行しつつあるなか、企業の認識はどのような状況なのだろうか。はじめに、「経営戦略において、人的資本を重要視する潮流があることを知っていたか」と尋ねた。すると、全体では「知っていた」(詳しく知っていた/少し知っていたの合計値)が66.4%となった。属性別では、「知っていた」の合計値は役員・経営者(73.8%)の方が、人事・教育担当者(62.1%)より11.7ポイント高かった。すでに「人的資本経営」の考え方は、企業内において一定の割合で認知されており、特に役員・経営者の意識が高いことがわかる。
約6割が「経営戦略と人事戦略を連動」と回答
続いて、所属している企業において「経営戦略と人事戦略が連動しているか」を尋ねたところ、「連動している」が16.7%、「ある程度連動している」が40.8%だった。日本においても、「経営戦略と人事戦略を連動させる潮流」は浸透してきているようだ。人材価値向上のため、「満足度調査の実施」や「自主的な学びの支援」に取り組む企業が多い
また、「人的資本の価値向上に向け、検討または実施している取り組み」を尋ねた。すると、「従業員満足度調査の導入」(53.2%)と「従業員の自主的な学びの支援」(52.9%)の2項目で半数を超えた。一方で、「HRテクノロジーによる異なる部署間のデータの一元管理」(12.6%)や「CHO/CHROの配置」(11%)などは、1割程度にとどまった。人材価値向上への取り組みは進んでいるものの、その価値を可視化・開示するのに重要なテクノロジーを活用したり、経営体制を整えていたりする企業はまだ少数のようだ。「ISO 30414」に基づく、人的資本価値の指標化はどの程度進んでいるのか?
さらに、人的資本開示の国際規格のひとつである「ISO 30414」で定められている11領域のうち、「指標化を実施している」項目を尋ねた。すると、回答が多かったトップ3は、「コンプライアンスと倫理」(47.9%)、「人件費」(44%)、「採用、異動、離職」(42.5%)で、いずれも4割を超えた。一方、少なかった項目は「後継者育成計画」(21.4%)、「リーダーシップ」(23.3%)などであった。指標化がある程度進んでいる項目はあるものの、いずれの回答も半数以下にとどまった。人的資本価値を可視化するには、指標化(数値化)から進める必要があるだろう。