人事評価制度は企業に風土にあった制度にすることがとても重要です。それは、経営者の考えや、従業員の現状を踏まえるということです。そのために、マニュアルが不要なほど簡単で、誰もが運用できる仕組みが必要となります。
「透明」でなければ評価制度ではない
「人事評価制度」の目的は、人を評価して賃金に反映することだと多くの経営者の方が考えています。正当に評価されて賃金が上昇し、昇進することは、従業員にとってうれしい話です。しかし、本当に正当な評価ができているのでしょうか?これまで100社以上の人事評価制度を設計してきた経験では、難しいと感じています。やはり主観的な評価が根強いことを多く見てきました。現場では「公平」という言葉をよく耳にしますが、公平さにこだわり過ぎて、評価を調整している企業が多くあります。確かに、公平に越したことはありません。しかし、それよりも「透明」にするほうがよいのではないでしょうか。知らないところで、知らない基準で評価される、というのでは、これ以上に不透明で、説明不足なことはありません。
では、透明とは一体どういうことなのでしょうか。方法は簡単です。はじめにルールを公表します。「賃金の配分方法」やその「配分率」、「評価に対する処遇」、また、「評価基準」と「評価に対する理由」などです。この部分を、意外とおろそかにしているケースが見受けられます。特に、「評価基準とその評価に対する理由」を公表することで、人材育成にいかすことがでできます。当たり前のようですが、透明にすること(公表)がもっとも重要なのです。
制度構築に失敗はなし
また、同じくよく耳にするのが、「評価制度なんて意味がない」、「この評価制度はよくない。失敗だ」、「年功序列はよくない」といった声です。本当によくないのでしょうか。年功序列は、むしろ理解しやすい制度です。以前は成果主義を導入しようとしている企業が多くありました。今もそれは基本的に変わりません。しかし、企業にはそれぞれの風土があります。歴史のある企業、ベンチャー企業、要員計画を新卒採用のみでおこなってきた企業、中途採用ばかりの企業など、その企業の業種や規模、方針で風土は培われます。制度が風土に合わなければうまく運用できません。
その中でも、「職種」は大きく影響すると思います。たとえば、職人のようなケースでは、ある程度の経験を必要とします。勤続年数の問題はありますが、当然、ほぼ年齢・勤続年数と技術は比例するのではないでしょうか。こうした職種の場合、どうしても年齢や勤続を基準に考えると、評価は年功序列になるのではないでしょうか。また、SE(システムエンジニア)といった職種では、比較的若くして能力の頂点を迎えるようですので、年功序列型だと、評価が能力に比例しないようです。それぞれの企業には、それぞれの風土があります。自社の風土に合った制度でなければなりません。他社の制度を踏襲することはないのです。
そして、もっとも重要なのは、企業が従業員に求めることや従業員が納得できる内容を、具体的にすることです。具体的な基準で評価され、その評価に納得できることで、従業員は認められるという気持ち(=うれしい)、会社は業績が上がる(=楽しい)という相乗効果が起こるのです。
真田直和
真田直和社会保険労務士事務所 代表
https://www.nsanada-sr.jp/