デロイトトーマツグループは2020年2月、一般社団法人at Will Workと共同で実施した「働き方改革の実態調査2020」の調査結果を発表した。調査期間は2019年10月25日~12月27日で、2013年から日本企業を対象に実施している『働き方改革の実態調査』の4回目となる。生産性向上と働きがい向上の両面の実現を目指した働き方改革に対する、企業の取り組み状況や組織風土を調査・分析することで、課題解決の方向性を明確にするのが目的だ。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果

約9割が働き方改革を実施する一方、「効果を実感した」企業は半数という結果に

最初に、「働き方改革の取り組み状況」について尋ねた。その結果、「既に働き方改革を実施した」が20%、「現在推進中」が69%と、約9割の企業が働き方改革に取り組んでいることがわかる。調査開始時の2013年、および前回調査の2017年と比較しても大幅に増加しており、働き方改革の着手はほぼ一巡している様子がわかる結果だ。

一方、働き方改革を進める目的に対し「効果を実感した」との回答は、53%にとどまっている。取り組み状況と比較して効果の実感度が低いことから、企業の働き方改革はまだ道半ばだといえそうだ。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果

働き方改革の目的は従業員の定着と新規採用の強化

次に、「働き方改革を実施する目的」について質問したところ、「従業員満足度の向上・リテンション」が88%と最多となり、2017年と比較しても約14%増えていることがわかる。続いて、「多様な人材の維持獲得、D&I促進」が67%、「採用競争力強化」、「コンプライアンス対応」が50%という結果に。人材不足という課題がある中、企業は従業員の定着と新規採用の強化をめざした、働き方改革を推進していると推測できる。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果

施策内容は、ほぼ全ての企業が「長時間労働の是正」と回答

「企業が実際に検討している施策」の上位5位を見てみると、「長時間労働の是正」が95%となり、大多数の企業が検討していることがわかる。働き方改革関連法の施行を受け、取り組みを進めている様子が見て取れる。続いて、「業務プロセス・ルールの見直し」が59%と、生産性向上に向けた既存業務の効率化が挙がった。この他、多様な働き方を推進する、「オフィス外勤務の促進」、「組織風土改革」、「オフィス環境の整備」なども上位となっている。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果

効果の実感度が最も高いのは「コンプライアンス対応」

次に「働き方改革における効果実感割合」について見ると、働き方改革として行っている施策全体の効果を実感している企業は約半数にのぼった。しかし、目的によって効果に対する実感の割合に差があることが分かってくる。

項目別に見ると、残業時間に制限を設けることを目的とした「コンプライアンス対応」は80%で最多となり、多くの企業が高い効果を実感している。これ以降「従業員満足度の向上・リテンション」が61%、「多様な人材の維持獲得、D&I促進」が54%、「採用競争力強化」が48%と続く。働き方改革の目的として重視されている割合が高い一方で、その効果が実感されていない項目もあるようだ。その他、働き方改革の目的として定めている企業はごく少数であるものの、「デジタルトランスフォーメーション推進」64%、「セキュリティリスク低減」61%といった、テクノロジー活用に関する項目でも効果実感の割合が高い結果となった。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果

働き方改革を次なるステップへ。キーポイントは「イノベーションの創出」

今回の調査結果から、企業は働き方改革の必要性を理解し取り組みを実施している一方で、施策内容と効果に対する実感の割合にはバラつきがあるという実態が明らかになった。

デロイト トーマツが定義する「働き方改革の3ステップ」に照らし合わせると、多くの企業がステップ1の「コンプライアンスの徹底」を終えた段階で、ステップ2の「既存業務の効率化」を推進中というフェーズにあるのは一部の企業といえる。しかし、本質的な働き方改革を実現するには、これらのステップで取り組んだ「多様な働き方により発現した時間」や「柔軟性の高い考え方」をベースに、従業員自らが成長や変革をしていくことが必要だ。加えて、企業の発展を目指す「イノベーションの創出」が最も重要になるだろう。
「働き方改革の実態調査2020」でわかる取り組み企業の状況と施策効果
働き方改革を進めるにあたり、企業にはこれらを相互に加速するため、次なるステップへ向けて取り組む姿勢が求められそうだ。

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