運転中、または建設中という国は32カ国、計画中だけの国は9カ国となる。国ごとの状況を見ると、米国は運転中が104基、建設中が1基、計画中が9基。米国は1979年のスリーマイル島事故以来、原発新設を凍結してきたが、2012年に新規建設を再開した。福島の原発事故を目撃したにもかかわらず、方針を明確に変更したのだ。
また、中国は運転中が15基に過ぎないが、建設中がなんと32基、計画中が23基もある。建設中と計画数は他国に比べてダントツに多い。
注目はベトナム。まだ1基も稼働していないが、2月にベトナムの政府高官が「2030年までに10基運転したい」と述べている。さらに3月に来日したベトナムのチュオン・タン・サン国家主席は「今年中にベトナム南部ニントゥアン省で原発建設を開始する」と発言した。
原子力発電は成長ビジネスであるし、廃炉にするとしても原子力関連企業の力が必要だ。原子力関連企業と聞いただけで敬遠する学生が多いが、原子力関連企業は就職に適した企業なのだ。そこで、今回は原子力関連の有望企業を紹介する。
原子力発電所全体の計画、設計、原子炉本体の製造などの分野では、東芝、日立製作所、三菱重工の3社が独占状態にある。
原発の工事・保守点検では、新日本空調。原発の空調関連工事に実績がある。日本では、1963年に茨城県東海村で原子力発電が開始されたが、太平電業はその工事に参加している。1963年以降、太平電業は日本の原発工事の70%以上に関与してきた。原発工事会社の老舗とも言える存在だ。
原発では、原子炉を頑丈な圧力容器で覆う。圧力容器は高温・高圧に耐えなければならない。この圧力容器で有力なのが日本製鋼所だ。同社は1907年に兵器製造会社として設立された。戦艦大和の砲身を作ったのは同社であるし、現在でも自衛隊の戦車や艦船の砲身を作っている。高温・高圧に耐える砲身作りの技術が圧力容器に生きている。
原発内で気体や液体の流れる方向や圧力を変更するのに必要なバルブを生産しているのが、東亜バルブエンジニアリング。1967年に敦賀原発1号機にバルブを納入したのを皮切りに、これまで海外を含む多くの原発に納入している。
使用済み核燃料を輸送する時に使用される鉄鋼製容器をキャスクというが、このキャスクを作っているのが、日立造船と木村化工機だ。
今回紹介した企業のうち、学生は東芝、日立製作所、三菱重工のことは知っているだろう。しかし、その他の企業を知らないのではないか。今回紹介した企業は全て上場企業で、優れた技術力を持っている。脱原発という日本国内のムードに左右されることなく、学生は冷静な目で企業を選ぶべきだ。
東洋経済HRオンライン編集長 田宮 寛之