確かに、その日の朝、一人の受講者が3分ほど遅れて会場入りしました。遅れて来た方が、「すいませーん、ちょっと電話してたもので。私、超売れっ子なんで」とおどけ、周りから笑いが起こり場が明るくなりました。新米だった私は、良い雰囲気を壊したくない一心で、何も注意しなかったのです。
しかし、時間通り来た受講者から見れば、納得がいかないのは当然です。人によっては、30分も前に会場に来ている人もいました。にもかかわらず、講師が何も注意しなかったら、正に「正直者が馬鹿を見る」という状態です。アンケートに、「納得できない」と書いたのは、その受講者だけでしたが、他の方もきっと納得いっていなかったことでしょう。
この出来事は、その後の私の仕事に対する姿勢に、大きな影響を与えました。
これは、上司としての姿勢にも通ずるものがあります。
一人のメンバーが、ルールを守らなかったとします。それに対して、上司が何も指摘しなかったら、他のメンバーはどう思うでしょうか?
口には出さないことが多いと思いますが、「なんで、注意してくれないんだ?」と思うはずです。そして、「我々はしっかり守っているのに、おかしいじゃないか」とも感じるでしょう。つまり、納得できない状況になるはずです。
そして、一度そのようなことがあると、それは記憶に残ります。「あの上司は、ルールを守らなかった人に何も注意しなかった」と。
もっとまずいのは、あるメンバーには注意したのに、同じことをした他のメンバーには注意をしないということです。これは、「えこひいき」をしていると捉えられる恐れがあります。このような上司は、ますます信用を無くし、上司としての統制が効かなくなり、チーム力は一気に低下するのは間違いありません。
最近、マネジメント研修を行う際に、「叱り方」を教えてほしいというオーダーが度々あります。これは、もしかすると注意すべき時に注意できないマネジャーが増えていることを表しているのかもしれません。
目先の良い関係性や、良い雰囲気を優先して注意しないと、チーム力を低下させる大きな要因になってしまいます。マネジャーとして信用されるためにも、注意すべき時に注意する。これが基本のようです。
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