前回までに、「マイナンバーは10月から通知される」とお伝えしてきました。では具体的には、どのように通知され、企業は何をしなければならないのでしょうか。最初の関門となる「マイナンバー通知」についてさらに細かく見ていきましょう。

マイナンバー取得前の3つの注意点

マイナンバーについて、すでに情報収集している人事のみなさんは、最初に、全従業員からマイナンバーを提示してもらい、本人確認を行う手間を心配していることでしょう。
従業員本人だけではなく、その扶養家族も対象になりますし、パート、アルバイトすべてが対象になります。
本人確認については、どのような手順で行うのか、現場が混乱せず、最低限の手間ですむよう、前もって考慮しておく必要があります。

しかし、その前にもうひとつ、重要な仕事があるのです。
マイナンバーは、今年10月から、個人あてに「通知カード」という形で郵送されます。
こう書くと「通知カード」というハガキが郵送されることを想像しますが、実際には、簡易書留で、住民票の家族ごとにまとめて郵送されます。

ここで注意が必要なことが3点あります。

1.簡易書留で配達

第1に、簡易書留ということは、だれかが家にいないと受け取れません。不在の場合は、再配達、職場などに配達、さらには郵便局で受けとる、ということもできるので、郵便配達時間に家にだれもいないことが予想される場合は、このような形で、確実に受け取れるよう、従業員に徹底しておきましょう。

2.住民票の住所に郵送

第2に、通知カードは、現在の住民票の住所に郵送されます。「郵便局に転送届を出しているから、大丈夫」というのは間違いです。通知カードは「転送不要」で送付されるため、郵便局へ転送届を出していても、転送されません。
従業員の中に、引っ越しはしたが、まだ住民票の異動手続きをしていない人はいないでしょうか。親元を離れて一人暮らしをしている場合は、まだ実家に郵送されるのでいいのでしょうが、そうでない場合は、前の住所に郵送されてしまいます。

そのようなことがないよう、従業員の住民票の住所が現住所になっているか確認し、手続きがすんでいない場合は、転出・転入の届出をするよう指導しなければなりません。転出届は郵送でもできますが、転入届は基本的に市町村役場の窓口に行く必要があります。忙しい時期に、役所に行くために、遅刻、早退、外出されたくなければ、時期的にある程度余裕をもった対応が必要でしょう。

3.紛失しないよう注意

第3に、そして、いちばん心配なのが、通知カードの紛失です。

人事の皆さんは、社員が社会保険の資格取得時に年金手帳を紛失してしまい、なかなか会社に提出してくれない、という事態に遭遇するのではないでしょうか。
年金手帳は、日本国内に数年にわたって居住している20歳以上の人は、必ず全員がもっているはずです。しかも、ぺらぺらの紙1枚ではなく、手帳型になっており、なんとなく重要な感じが漂っています。しかし、それでも紛失する者が後を絶ちません。

マイナンバーの通知カードは、クレジットカードと同じ大きさです。年金手帳よりも、紛失しやすいことを考えておかねばなりません。
すでにマイナンバー広報用のテレビCMが始まっていますが、これから10月まで、どれほど政府による広報が行われるか定かではありません。従業員がマイナンバー通知カードの重要性に気づいておらず、なにげなく廃棄してしまうこともあり得ます。政府広報だけに頼るのではなく、「マイナンバーの通知カードが送られてきたら、たいせつに保管すること」と従業員に徹底してください。

もうひとつ、大事なものだと思ってしまいこんだのはいいのだが、いざ会社で「持ってきて」と言われたときに、もらってから何ヶ月もすぎていたので、どこに入れたかわからなくなってしまった、というパターンの紛失もあり得ます。

実際に従業員のマイナンバーを使う機会は、中途退職者でなければ、2017年1月末までに提出する源泉徴収票への記載が初めて、という場合も多いことでそう。
実務的には、そのときまでに従業員からマイナンバーを取得しておけばよいのですが、紛失の危険を考えれば、通知カードが送られてきてから、なるべく早く、会社におけるマイナンバー取得を行っておいたほうがよいでしょう。

まとめると・・・

以下の3点を、確実に行うことがマイナンバー対応の最初の関門です。

1.「マイナンバーの通知カード」は簡易書留で送られてくるので、再配達などを利用し、確実に手元に届くよう従業員に徹底する
2.住民票が現住所と違っていないか確認し、違っている場合は早急に手続きをするよう従業員に指導する
3.従業員が通知カードを紛失しないよう徹底し、なるべく早めに会社でのマイナンバー取得手続きを行う


■関連情報
2015年10月にマイナンバー通知開始。準備は万全ですか?
システム・アウトソーシング全般の資料をダウンロード


◆訂正とお知らせ◆

上記、第2に、「郵便局に転居届を出していても、転送期間は1年なので、それを過ぎてしまえば、やはり前の住所に配達されてしまいます」という、通知カードが郵便にて転送されると誤解を受ける記載がございました。(2015/8/6削除・訂正)通知カードは「転送不要」にて送付されるため、転送はされません。訂正してお詫び申し上げます。

なお、東日本大震災被災者の方など、やむを得ない事情で住民票の住所地で通知カードを受け取ることができない場合に限り、居所に送付することも可能です。詳しくは下記をご参照ください。

総務省ホームページ マイナンバー制度と個人番号カード

◆◆◆◆◆

執筆協力:メンタルサポートろうむ 代表 李 怜香
社会保険労務士、産業カウンセラー、セクハラ・パワハラ防止コンサルタント。
職場のコミュニケーション、メンタルヘルス、ハラスメント防止、人事総務実務(労働社会保険手続き、給与計算、マイナンバー等)について、ご相談、研修を承っている。
15年以上の経験で、法律と心理、双方から中小企業をサポートしている。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!