個人オーナーが利用可能な国民年金保険料の「前払い制度」
日本国内で個人事業を営む場合、年齢が20歳以上60歳未満であれば、国籍にかかわらず国民年金への加入が法律上の義務となる。加入後は月々、年金保険料を納付しなければならない。現在、国民年金の保険料は1ヵ月当たり16,610円、年間では約20万円であり、個人オーナーにとっては決して少額ではない。ところが、国民年金の保険料は、前払いをすることにより納付額を減らすことが可能である。このような仕組みを「国民年金前納割引制度」という。
国民年金保険料の納付期限は、「納付対象月の翌月末日」と定められている。例えば、令和4年1月分の保険料は、令和4年2月28日が納付の締切日である。ところが、「前納割引制度」を利用して納付期限よりも早く保険料を納めることで、割引が発生し、納付額が節約できる。もちろん、保険料を前払いして納付額が減っても、将来、受け取る年金が減額されるなどのデメリットは一切ない。
割引額が最大になる「口座振替納付での2年分前払い」
国民年金の「前納割引制度」では、「納付方法」と「前納期間」との組み合わせにより、12通りの納め方が用意されている。具体的には、「納付方法」には『口座振替納付』、『クレジットカード納付』、『納付書納付(現金納付)』の3種類が、「前納期間」には『1ヵ月』、『6ヵ月』、『任意の月から当年度末』、『1年』、『任意の月から翌年度末』、『2年』の6種類がある。ただし、納付方法と前納期間の組み合わせの中には前払いが認められていないケースも一部あり、整理をすると次のとおりである。
このような事情から、本制度は「口座振替納付」で「前納期間2年」を選択した場合に、割引額が最大になるという特徴がある。従って、国民年金の保険料支出を最小限にとどめたいのであれば、「口座振替納付による2年分の保険料の前払い」を申し込むのが最良の選択肢と言える。
この点も含め、令和3年度の前納割引制度の割引額・割引率を整理すると、次のとおりである。
2022年4月からの保険料を最大に節約するには“2月末”が申し込みのリミット
前述のとおり、国民年金保険料の節約幅を最大にする方法は、口座振替納付で2年分の保険料を前払いすることである。ただし、この制度を利用するにあたっては大きな注意点が存在する。必ずしも、「申し込めばすぐに利用できる制度」ではない点である。
口座振替納付で2年分の保険料を前払いする場合、4月分の保険料から2年分をまとめて一括払いすることになるのだが、申込期限が毎年2月末日と決められている。そのため、令和4年4月からこの制度を利用するためには、令和4年2月28日までに専用の申込用紙で申し込まなければならない。
仮に、申し込みが令和4年2月28日を過ぎた場合、申込用紙は受領されても、令和4年4月から本制度の対象となるわけではなく、翌年の「令和5年4月から2年分の保険料の口座振替による前払いを申し込んだもの」として取り扱われることになる。従って、令和4年度については、割引を受けることができなくなるのである。
割引額の発表から申込期限までは“わずか1カ月”
実は、本稿を執筆している令和3年12月時点では、前納割引制度の令和4年度の割引額は公表されていない。新年度の割引額は、毎年1月下旬に厚生労働省から発表されることになっているためである。そして、厚生労働省からの発表が行われた翌月の2月末日には、同年の4月からの「口座振替による2年分の保険料前払い」の申し込みが締め切られることになる。つまり、春からの保険料において最大限の割引を受けることを考えた場合、「新年度の割引額の発表から申込期限」まではわずか1ヵ月程度しかないわけである。
法人の代表取締役が納付する厚生年金の保険料には、「前払いをして割引を受ける」という仕組みが存在しない。従って、年金保険料の前納割引制度は、個人オーナーの社長だからこそ利用できる有利な制度と言える。
しかしながら、2月末日の申込期限を逸してしまい、春からの年金保険料において最大限の割引を受けられなくなった事例が、毎年のように多発している。「気が付いたら申込期限を過ぎていた」といったことがないよう、保険料の節約を希望する個人オーナー社長の皆さんは、忘れずに手続きをしていただきたい。
- 1