ここ数年、組織・人事関連のキーワードとしてすっかり上位に定着した「エンゲージメント」。“高いロイヤリティーや好感を持ち、積極的な関与や行動が伴うなど強い絆で結びついている状態”と定義され、「従業員が所属組織に対して前向きにコミットしている状態」を指します。
第29回:御社の経営幹部・部下たちは“熱意あふれる社員”か? 「12の質問」で組織・従業員エンゲージメントを明らかに
毎年話題となる、米国最大の調査会社・ギャラップ社が実施する「グローバル職場環境調査」の2022年実績データ(2023年発表)によると、日本企業はエンゲージメントの高い“熱意あふれる社員”の割合がたったの5%。調査した145ヵ国の中で、イタリアと並んで最も低く、4年連続横ばいの世界最低水準が続いています。世界平均が23%と、2009年の同調査開始以降、最高となったにも関わらずです。

「自分が何を期待されているのか」、「何をやればよいのか」は明確か?

上述の調査結果からすると、日本では、100名の会社でやる気に満ち溢れている社員は5人。20名の会社なら、1人しかいないことになります。これが今の日本企業の平均的な状態なのだと、調査結果が示しているのです。御社はどうでしょうか。「さすがにそこまでは酷くないよ」、あるいは「もしかしたら、当社も…」など、さまざまな状況にあるかと思います。しかしこのデータを見れば、なぜいま日本でこれだけ「エンゲージメント」が話題になるのか、一目瞭然ですね。

この状況からして、経営者・経営幹部・人事責任者の皆さんの喫緊のテーマや関心として、「どうすれば自社の従業員エンゲージメントの状況が分かるか」、「エンゲージメントの高い従業員を育むにはどうしたらよいのか」といったことがあると思います。これらについて、まさにこのギャラップ社の調査項目自体が答えを教えてくれることをご存知でしょうか?

同調査は「ギャラップQ12(キュー・トゥエルブ)」という12項目の質問からなっており、その各質問項目が満たされた人は「エンゲージメントの高い、やる気に満ちた人」、そうした人たちで構成された組織は「エンゲージメントの高い、やる気に溢れた組織」となるのです。

今回はこの12問をすべて見てみましょう。御社の経営幹部各位にどのような組織運営、スタッフとのコミュニケーションをしてもらえばよいか、具体的なヒントが多く得られること間違いなしです。

まずは、最初の2問です。

●Q1:私は仕事の上で、自分が何を期待されているかが分かっている

●Q2:私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている


この2問が確認しているのは、「会社や所属組織が自分の役割や期待値、そのためのセットアップをしっかりしてくれているか」についてです。

そもそも、「誰に何をやってほしいか」がはっきりしていなければ、本人も何に仕事上の情熱を注げばよいか分かりません。また、Q2の「必要なリソースや設備」を提供しているかどうかも見逃せません。「やれ」と言われても、手立てがなければどうしようもありませんよね。

各人が認められる機会・場があるか?

続いて、Q3からQ7の5問です。

●Q3:私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある

●Q4:この1週間の間に、良い仕事をしていると褒められたり、認められたりした

●Q5:上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる

●Q6:仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる

●Q7:仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる


ここで確認していることは、「本人が職場において存在感を持つことができ(居場所があると思えて)、周囲に認められ、自分の成長を後押ししてくれる人や場があると思えているか」についてです。

この部分は、筆者自身の解釈では“当人自身のモチベーションに関わる部分”で、日頃から研修や講演で次の公式をお話ししています。

「モチベーション=(やりがい×成長)+(承認×仲間)」

中長期的なモチベーションは、自分がやりがいと成長を仕事に感じることができ、職場において認めてくれる仲間たちに囲まれていることから生まれ、保ち続けることができるのです。

会社や同僚に共鳴・共感できているか?

Q8からQ10の3問では、自分の会社や同僚に共鳴・共感できているかを問うています。

●Q8:会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる

●Q9:会社の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる

●Q10:仕事上で最高の友人と呼べる人がいる


「自分自身の頑張りが第一」とはいえ、自分が身を置く場が魅力的なものでなければ、頑張りようもありません。自分の心を震わせてくれる会社のミッションやビジョンがあるか。共に切磋琢磨したいと思える同僚や上司に囲まれているか。高みを目指して努力奮闘しようと思える良きライバルや友が存在しているか。ある面、まずはここがエンゲージメントの高い組織づくりのスタートラインだと思います。

成長できる機会、認められる機会、場があるか?

最後に、次の2問。

●Q11:この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合いについて話してくれたことがある

●Q12:私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った


それまでの10問での投げかけを受けて、改めて総括するような設問ですね。加えて、半年や1年という時間軸が入っていることで、「いま、どうですか?」ということを回答者に強く意識させている設問でもあると感じます。あなたの成長を気にかけ、支援してくれる人が存在しているか。学び、成長する機会を実際に得ることができているか。

さて、御社経営幹部各位の状況は、いかがでしょうか。経営幹部の皆さん自身は、どうでしょう? 御社全体としては、いかがでしょう?

もちろん、いきなりこの12の質問を満点回答させるようなセットアップは、なかなかできないものです。しかし多くの項目が、経営幹部や各組織の上司の皆さん自身の取り組みで創出可能なものでもあることを、感じていただけたのではないでしょうか。

我々が、それぞれの会社・組織で「ギャラップQ12」に取り組み、「熱意あふれる社員」の割合を高め、ぜひともギャラップ社の次年度調査におけるスコアを大幅に引き上げたいものです!
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