人材の確保と質的向上が経営を大きく左右するようになり、人的資本経営の有用性と重要性を真摯に受け止め、人材への投資を活発に行う企業は増える一方の状況です。中でも、製造業界は2000年代初頭からグローバル化の波が押し寄せており、事業の成長のためにグローバルで活躍できる社内人材の発掘・育成あるいは新たな人材の獲得が急がれています。

こうした状況を受け、自動車部品の製造などを手がける株式会社ヒロテックは業界に先駆けて人材のパフォーマンス最大化を目的にタレントマネジメントに着手。人材データを分析・活用する「科学的人事」を実践しながら確かな成長を遂げてきました。

今回は、1958年に設立(1932年創立)、自動車生産設備で海外進出したことをきっかけに急拡大し、国内は従業員数1,928名(2023年9月現在)、海外拠点と合わせグループ全体約5,600名規模(2022年10月現在)で事業展開を行っている株式会社ヒロテック 人材開発センター 部長代理 小西 信博氏と、多彩なタレントマネジメント機能を搭載する「タレントパレット」を開発・提供している株式会社プラスアルファ・コンサルティング 取締役副社長 鈴村 賢治氏の対談にてタレントマネジメントの実践方法やもたらす効果、理想のあり方、人材戦略などをテーマに熱く語り合いました。


プロフィール


  • 小西 信博氏

    小西 信博氏
    株式会社ヒロテック 人材開発センター 部長代理

    芝浦工業大学機械工学科卒業後、株式会社ヒロテック入社。自動車組立設備の設計業務に携わる。1990年代に三次元CADによる設備設計を立上げ、その事例をCAD開発元主催アジアパシフィックカンファレンスで発表。2001年技能五輪国際大会に機械製図職種コーチとして参加。その後国内技能五輪全国大会のCAD化を推進。2016年より新設された人材開発センターにて教育コンテンツ作成と若年者育成に従事。2017年より製造業界に先駆けてタレントマネジメントに着手し、人材戦略の推進に取り組んでいる。

  • 鈴村 賢治氏

    鈴村 賢治氏
    株式会社プラスアルファ・コンサルティング 取締役副社長

    システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、その後、テキストマイニングやデータマイニングなどの分析コンサルティングを多数経験。2007年、プラスアルファ・コンサルティングに入社し、取締役副社長に就任。データ活用の知見を活かしたタレントマネジメントシステム「タレントパレット」事業を立ち上げ、社員のパフォーマンスを最大化する「科学的人事」を考案。その方法論の確立と啓蒙活動に尽力している。

ヒロテック小西様・PAC鈴村様

「人事の民主化」のために、人事情報の収集と共有に着手

鈴村氏:ヒロテックさんは2016年に人材開発センターを創設されたとのことですが、創設の背景と目的を教えていただけますでしょうか。
PAC鈴村様
小西氏:設立趣旨として「今後の事業展開を睨み、グローバル化と安定的な生産を維持・拡大するための体制づくりと、それを担う人材開発を効率的・効果的に実施する必要がある」と掲げており、当時、人材開発が不十分だったり、キャリアパス・キャリアプランがなかったりと人事的な問題を複数抱えていました。それらを解消しながら、グローバルで活躍できる人材を輩出するのが本センター設立の目的です。スローガンに「社員の成長が会社の成長へ」を掲げ、人材開発センターは「『世界一のエンジニアリング会社』を実現する人づくり」が最大のミッションとなっています。

鈴村氏:今でこそ人的資本経営の流れで人材の価値が見直されていますが、ヒロテックさんは当時から「人づくり」を重視されていたのですね。

小西氏:はい。「社員の成長が会社の成長へ」という言葉を自分なりに解釈すると、「知られていない能力や人材の発掘」「誰もが納得する判断材料」「強みを伸ばし弱みをサポート」の3つに集約されました。これらの意味するところは、人材の見える化、人材情報の共有、データに裏付けされた判断で、よく鈴村さんがおっしゃっている「科学的人事」に他ならないでしょう。

この3つを実現することで、社員がやりがいを持って働きながら成長し、能力を100%発揮するようになる。そうした状態を実現しながら、8カ国17拠点に展開する当社がワールドワイドにつながり、各拠点の間で優れた人材の行き来ができれば、会社が理想的に発展できると確信しています。

その上で、私たち人材開発センターが取り組むべきこととして、人事の民主化がありました。これまでの人事は属人的で、人事情報を持っているのは一部の人事担当者に限られていました。しかし、それでは人材の発掘も育成も叶いません。社員一人ひとりの顔と名前が一致することは大前提として、保有資格や業務経歴などを見える化し、社員同士で共有することが必要不可欠です。

そうした環境が構築されれば、社員同士のつながりが強化され、お互いの強みを知り、学び合いや共創も生まれるはずだと考えていました。そのような中で、当時はまだ一般的ではありませんでしたが「タレントマネジメント」という言葉を知り、これを実践していく必要があると思慮したのです。

鈴村氏:小西さんはこれまでも長く人事に携わってきたのですか。

小西氏:入社して装置技術、設備設計、検査と技術畑を歩み、2016年の人材開発センター開設に合わせて異動となりました。技術領域ではいち早く3D CADを取り入れるなどデジタル化に取り組み、メディアにも取り上げられるなどしました。
ヒロテック小西様
鈴村氏:技術面でも人事面でも、「いち早く」は小西さんの経歴を表すキーワードになっていると感じます。当社がタレントマネジメントシステム「タレントパレット」をリリースしたのが2016年で、ヒロテックさんは2017年とかなり早々にご導入いただいています。

小西氏:キャリアを棚卸し、人事情報を社員間で共有できるシステムを探した結果、タレントパレットに行き着きました。同様のソリューションを複数比較検討したところ、私の求めていた機能が全て備わっており使い勝手もいい。自分たちの組織に合わせて自由度高く使い方を設計できることや、テキストマイニングで社員の声を見える化するなど、他社にはない強みの機能があると知り、導入を経営層に提案して決定となりました。

現在までにタレントパレットでは、社員情報基盤の構築、人材のグルーピング、採用管理、社員の声の可視化、目標管理、離職防止など、幅広いシーンで活用しています。

協力:株式会社プラスアルファ・コンサルディング


この後、下記のトピックが続きます。
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●「人事の民主化」のために創設した「人材開発センター」の役割
●従来の人事に感じた危機感、グローバル人材育成をどう確立させたか?~グローバル人材3つの定義に迫る
●タレントマネジメントのソリューションや人事情報を意思決定の根拠に
●成長続ける企業がこれから注力する「科学的人事」4つの手法


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