研修の「オンライン化」で見えてきた手法の特徴
2020年4月からの「新入社員研修」は、先の見えないコロナ禍で、従来の「対面研修」を「オンライン研修」に置き換えて行なった会社が多数にのぼった。しかし、準備期間が短かったため、次のような「失敗」が多く見られた。1.従来の1日分の研修をそのまま「1日のプログラム」にしてしまい、受講者は、短い休憩時間を挟んで、1日中画面に縛り付けられる。
2.きちんと受講しているか不安なため、厳しい受講管理を行なう。
3.膨大な量と種類の「提出物」を課す。
「オンライン」という形式は新しかったものの、研修内容に用いられた方法は古いままだったのだ。
しかし、いわば「強制的なオンライン化」を通して、「オンライン」と「オフライン」それぞれのメリットやデメリット、さらに、「オンライン」の中でも、双方向か一方向か、同期か非同期かという、提供手段による特徴がはっきりしてきたようだ。簡単にまとめると次のようになる。
1.オフライン研修
「時間」と「空間」を共有し、直接対話できるので、“チームビルディング”や“エンゲージメント強化”に向いている。また、デバイス等の準備が必要なく、主催者・受講者のITスキルも問われない。
2.オンライン研修
a.e-ラーニング(非同期・双方向)
いつでもどこでも学習できる。自分のペースで学べる。リアルタイムではないが、“フィードバック”や“ディスカッション”もできる。
b.オンデマンド(非同期・一方向)
いつでもどこでも学習できる。また、大人数にも対応できる。「コンテンツの作成」が比較的容易である。
c.リモート授業(同期・双方向)
全員の顔がわかる程度の比較的少人数で、リアルタイムで行なう。対話がしやすく、講師からのフィードバックもその場で行なえる。
d. ウェビナー(同期・一方向)
大人数に対し、一度に学習機会を提供できる。また、ウェビナーの内容を録画し、アーカイブにすれば、そのままe-ラーニングやオンデマンドのコンテンツとして二次利用できる。
「ブレンディッド・ラーニング」の組合せ例
「ブレンディッド・ラーニング」とは、前述の通り「効果」、「効率」、「コスト」を考えて、オンラインやオフライン、さらにオンラインの中の様々な手法を組み合わせて行なう研修を指す。様々な研修の手法をブレンドすることで、1種類の研修より学習効果が高まることも知られている。さらに「効率化」、「多様な働き方への配慮」という点でも「ブレンディッド・ラーニング」は効果的といわれている。
では、どのような研修のブレンドスタイルがあるのか、組合せ例を見てみよう。
(1)<ウェビナー>または<e-ラーニング>
(2)<オフライン研修>または<オンライン授業>
(3)職場実践、上司との質疑応答
(4)オンラインでの課題提出
「非同期オンライン(ウェビナー、e-ラーニング)」で事前学習を行ない、その後に「オフライン研修」または「オンライン授業(同期・双方向)」で、ディスカッション等、「時間を共有してこそできる」、「受講者同士のつながりができる」ような研修を行なう。いわゆる「反転授業」に、「職場実践」を加えたものだ。
知識をインプットする事前学習である(1)は、効率的なウェビナーや個人のペースでできる e-ラーニングが向いている。「事前にできることはできるだけオンラインで効率よくすませておく」という発想が必要だ。
そして、(2)の「オフライン研修」や「オンライン授業」では、(1)の「知識」に対して受講者の「感情」を動かすようなコンテンツを組み入れたい。「自分ごととして腹落ちする」ように工夫するのが大切だ。
さらに、(3)の「職場実践」で、「知識」を実際に試してみて、その中から出てきた「疑問」に上司が答えることによって、研修効果を最大限に高めることができる。
さらに、(4)で「知識」を確認するテストや、この研修で身についたことのレポートを課すことにより、研修でもたらされた「行動変容」を定着化させていく。
「ブレンディッド・ラーニング」という言葉は目新しいかもしれないが、内容を具体的に見てみると、研修としては案外オーソドックスな形式ではないだろうか。
これはあくまで一例となるが、それぞれの職場の状況に応じてブレンド・アレンジし、ぜひ研修の形式に組み込んでいただきたい。
李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
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