前回もお伝えしましたが、うつ病を患っている方は2014年には、111.6万人と過去最多を更新しています。実に日本人口の1%近い方がうつ病にかかっていることになります。ところが、うつ病がこれほど広く世の中に蔓延しているにもかかわらず、世間の理解は追いついていないのが現状で、未だにごく一部の心の弱い人間が患う病気であると認識している人が大多数です。そうした境遇だからこそ、うつ病で苦しんでいる社員自体を先ず認めてあげてください。彼らは、「死にたい」、「つらい」、「苦しい」、「何故こんな目に」、「自分で自分をコントロールできない」……、想いは様々ですが、毎日不安を抱えて生きています。
企業の理解が得られることで、彼らは不安で自分の思いしか考えられない状態から、徐々に自分の現状を受入れることが出来るようになり、その後で一歩一歩前に進みだしていきます。幸いにも治療に効果が出て、うつ病から寛解(以前の元気を取り戻した状態)し職場に復帰する方も多く見えます。
元気を取り戻したからと言って、その時自己判断で薬を止めてしまう方が珍しくありません。その結果せっかく寛解まで来たのに再発してしまうことがあるのです。薬を減らしていくタイミングは自分で判断せず主治医の先生によく相談することが大切です。
うつ病は、単に気分が落ち込んだり、やる気が出ないという単純な心の問題ととらえられがちですが、医学的には脳の中の情報を伝達する神経伝達物質に問題が発生し、それが原因でうつ病が引き起こされると考えられています(神経細胞から放出された神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが、次の神経細胞にくっつくことで情報を伝えていますが、うつ病になるとこの神経物質のバランスが乱れて働きが低下するといわれています)。つまり、うつ病は単なる気持ちの問題ではないので、気力で回復できるものではありません。回復するためにはこの病の正しい知識を持った専門家の治療が必要なのです。しかも、うつ病は一度患ってしまうと中々完全回復することが難しい疾患です。現状のうつ病の症状を取り除き、病気になる以前の状態を取り戻すことが、その治療には求められます。仮に全ての症状を取り切れないまま元の生活に戻ってしまうと、再発の可能性が非常に高まることも、この疾患の完治が難しいといわれる所以でもあります。また、うつ病の症状には心と体の両面に現れることが多く、心身両面に目を向けた、適切な治療を進めていくことが非常に大切です。それ故、正しい知識と経験を有した、専門家の必要性がここにある訳です。
うつ病にかかる人が非常に多いことは既に述べましたが、就業している人もその対象になります。むしろ就業している人の方が、日常的に様々なストレスに晒されることでうつ病を発症する可能性を有しています。しかし、うつ病を発生したからといって会社はその人材を切り捨てるようなことは社会的に許されるべきではありません。仕事が原因でうつ病になった場合には、その人材のうつ病が回復できる様に最大限の援助を行うことが、会社としての責任であると我々は考えます。
うつ病を回復させ、復職に向かっていく時に専門的なアドバイスや適切なリワークプログラムを行うことが効果的です。(リワークプログラムとは、うつ病やストレス関連疾患などで休職中の方を対象にした、職場復帰を目指したプログラムです。職場復帰を想定し、仕事に適応できるように心身のコンディションを整えることや、ストレスを理解し再発を防ぐことを目的としています。)
しかし、会社単体では専門的なアドバイスや復職前のリワークプログラムを行うことが非常に難しいのが現状です。うつになってしまった方が、本来の力を早く仕事で発揮してもらうために外部の専門機関と協力して対応することをお勧めしています。
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