急成長中のIT企業A社が、営業部門の仕組み作り・マネジメント・人材育成に取り組み、短期間で成果を出している。その秘密は「プロパートナーズ」という仕組みを活用し、IT営業のプロフェッショナルに週1日から2日程度、「社外営業部長」として入ってもらったことだという。はたしてそれはどのように成果を上げたのか。そもそも「社外営業部長」とは何だろうか? そんな疑問と興味を抱きながら、実態を取材すべくA社を訪問した。
プロパートナーズ導入企業 IT企業A社 代表取締役 米沢泰盛さん(仮名)
プロパートナー IT企業A社 社外営業部長 鳥越雅彦さん(仮名)
取材協力:
エッセンス株式会社(http://www.essence.ne.jp/)
取材:
経営プロ編集部
Part1 なぜプロパートナーズだったのか?
プロパートナーズ導入先A社代表取締役・米沢泰盛さんに聞く、プロバートナーという仕組みの特長
リスクが大きい営業部長のヘッドハンティング
――まず、「社外営業部長」というかたちでプロフェッショナルに入ってもらうに至った経緯をお聞きしたいのですが、そこにはどのような課題があったのでしょうか?米沢 弊社は設立から6年という新しい会社で、これまでは創業メンバーが営業を牽引してきました。しかし、事業が拡大するにつれて経営陣/役員としての仕事の比率が高くなり、営業部長としての役割を兼務するのが難しくなってきたんです。一方、部下たちはまだ若く、経験もありませんから、案件は獲得してくるものの、それをチームで共有し、役割を効果的に分担してサービスに仕上げて顧客に提供していくといったことがなかなかできない。役員兼務の営業部長も彼らを手取り足取り指導して事業を回していくのは難しいという状態でした。
――そこで営業部長を正社員として採用しようとは思わなかったのですか?
米沢 もちろんそれも考えました。しかし、部長クラスをいきなりヘッドハンティングで迎え入れるというのはそう簡単ではありません。かなりの年俸を約束し、人材紹介のコストもかけて探しても、100%条件を満たす人が見つかるとはかぎりません。弊社の特性やめざす方向とその人の経歴、考え方がどこまで合うか、どこで妥協するかは大きな賭けです。そんな悩みを抱えていたときに知ったのがエッセンスという会社が提供するプロパートナーズというサービスでした。人材を雇用するのではなく、プロフェッショナルの能力を、必要な部分だけ提供してもらうということなら、リスクなしに足りない部分を埋めることができるのではないかと思いました。
必要なのはクリティカルな課題を解決してくれるプロ
――しかし、企画やマーケティングといった分野ならまだしも、営業部長は営業部門を率いていくリーダーです。毎日会社にいて、社員と会い、信頼関係を構築し、チームとしての活動をコントロールして、初めて役割を果たすことができるのではないでしょうか?米沢 正直なところ、最初は不安もありました。しかし弊社の場合、成長のために今こそ重要なのは営業の仕組みづくり、人材育成、マネジメントであると思いました。そのために毎日いることが重要なのではないと考えるようになりました。
――創業期は、創業メンバーの優れた感覚と超人的な情熱、行動力でやってきたけれども、これからは営業の仕組みを明確にし、人を育てていく必要があるということでしょうか?
米沢 その通りです。創業メンバー/役員はプレイヤーとしてある意味カリスマ的な能力を持っているけれども、必ずしも仕組みづくりや人材育成のプロではないんですね。一方、若い部下たちの方にも、ただカリスマのやり方にしたがって動くのではなく、自分たちが成長できるようなやり方で働きたいという意識がありました。それなら我々創業メンバーではできない、仕組みづくりや育成、マネジメントの部分をプロに補完してもらえばいいのではないか、その方が我々との相乗効果が生まれるのではないかと考えたんです。「社外取締役」が企業にない部分を補完してくれる役員なら、補完的な役割を果たしてくれる「社外部長」もあっていいのではないかと。
コンサルとの違いは、現場に入り、情熱をもって結果を出すこと
――コンサルタントとの違いはどこにあるのでしょうか?米沢 コンサルタントは外から提言するだけで、コミットメントのレベルは低いですよね。「社外部長」は提案して終わりではなく、現場の責任者として手も脚も動かします。結果を出すために人を動かします。
――鳥越さんを紹介されたときの印象はどうでしたか?
米沢 まず何度か会ってこちらの課題と求めるもの、それに対して彼のキャリアや考え方などについてじっくり話しました。鳥越さんは小さなベンチャーの営業担当からスタートし、営業部門の仕組みを創造・拡充しながら会社を何十倍にも大きく成長させたという実績を持った人ですから、スキルや物の見方などが卓越していて、弊社の期待に応えてくれるのではと感じました。
――そこから「社外営業部長」としてやってもらおうと決断するまで、どのようなプロセスがあったのでしょうか?
米沢 営業の仕組みづくりや人材育成の、どれをいつまでにやっていくのか等々、ミッションやスケジュールを明確に決めていきました。この辺がプロパートナーズという仕組みのいいところだと思います。人を雇うとなると、入ってもらってから決める部分が多くなりがちですが、そこをあらかじめはっきりして取り組んでもらった。短期間で成果をあげることができたのはそこが大きいと思います。
――人柄といったことは重視しましたか?
米沢 情熱をもって取り組んでくれる人かどうかということは非常に重視しました。弊社は若い会社で、我々創業メンバーの情熱が大きな原動力となって成長していますから、そこに温度差があっては、いくら専門性が高くてもかみあいません。その点、鳥越さんは急成長したIT企業の営業部門を創業メンバーとして創り上げた実績と情熱があり、その先の成長のためにプロパートナーとしての道を選択した人なので、こちらとしては言うことなしです。
わずか半年で当初の課題をクリア
――「社外営業部長」として、どのくらいの期間でどのような成果が出たかといったことをお聞かせいただけますか?米沢 面談して話し会い、やってもらうと決めたのが今年の2月ですから、まだ半年くらいですが、コアとなる4名の社員を短期間で戦う営業に育ててくれましたし、仕事の仕組みも明確化されて、チームとして動けるようになってきました。事業の拡大を続けていくために、これから人をどんどん採用していかなければならない状況ですが、新しい人材が入ってきても、的確に育成していける体制も整ったと考えています。
――鳥越さんはどのくらいのペースで出社しているのでしょうか?
米沢 最初は週1日、今は1日半ですね。それでも情熱をもって営業担当を厳しく育ててくれますし、彼らも成長できることに喜びを感じています。特に一番年次が上の社員は、カリスマ役員の下で試行錯誤しながら悩んでいたんですが、今は心から鳥越さんを尊敬し、貪欲に色々なことを学んでいます。週1日でも1日半でも、プロが加わるとこうした人と組織の活性化が生まれるんです。そこが期待以上でしたね。
――当初設定していたミッションがクリアされたら、鳥越さんは卒業ということになるのでしょうか? それとも役割を変えて活躍してもらうことになりそうですか?
米沢 まだ弊社は拡大期の入り口に立ったところです。会社が成長していく過程で必要な仕組みもマネジメントも変わっていくでしょう。たとえば社員たちがさらに育っていくと、これまでのようなベーシックな仕組みづくりや育成ではなく、もっと大きな組織の仕組みづくりや、ハイレベルなマネジメントが必要になるでしょう。その先には社外役員という道もありえるかもしれません。これからも鳥越さんには役割を変化させながら、活躍してもらいたいと考えています。
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