急成長中の人材サービス企業B社が、弱点だった経理・財務領域の強化に成功し、経営力の向上を実現し、業績を順調に伸ばしている。それを可能にしたのは、「プロパートナーズ」という仕組みを活用して「社外CFO 」を獲得し、週2回の出社で、経営管理のプロとしての意見具申や経理・財務部門のマネジメント、担当者の育成・指導に当たってもらうようにしたことだという。はたして「社外CFO」はどのように経営のサポート・強化を実現したのだろうか。
プロパートナーズ導入企業 B社 代表取締役 水嶋繁俊さん(仮名)
プロパートナー B社 社外CFO 戸塚毅さん (仮名)
取材協力:
エッセンス株式会社(http://www.essence.ne.jp/)
取材:
経営プロ編集部
Part2 「経験の幅を広げ、大きく成長できるプロパートナー」
プロパートナー/B社・社外CFO戸塚毅さんに聞く、「社外CFO」という働き方を選んだ理由、仕事の実際、これからの展望。
複数の企業を手がける面白さと可能性の広がり
――まずこれまでのキャリアについて大まかに教えていただけますか?戸塚 新卒入社した外資系企業に9年勤務し、その後複数の企業で財務、人事、経営企画のマネジメントを経験してから、現在務めている上場企業のCFOになりました。その会社が業種の違う企業を買収した際に、その企業のCFOも兼務するようになりました。
――プロパートナーという道を選んだのはなぜですか?
戸塚 勤めていた会社のM&Aを通じて複数の企業のCFOを兼務するようになったのですが、それによって1社の常勤/専任でいるより仕事が面白くなることに気づいたんです。異なる業種や成長段階の企業を手がけることで1社にいるより色々な経験ができ、そこからシナジー効果が生まれてきます。物の見方や考え方、仕組みの導入のしかたなど、ひとつの会社でやったことを異業種の会社、規模や制度の異なる会社に応用すると、効果的であることが多いんです。こうした応用を経験することによって、私の専門領域のスキルが上がっていく。その可能性をさらに広げてみようと思い、エッセンス社のプロパートナーのお話をお受けしました。
大切なのはまずしっかり話し合い、 会社のニーズと自分にできることを確認すること
――B社の社外CFOをやってみようと思ったのはなぜですか?戸塚 最初に水嶋社長にお会いして、B社の経理・財務の課題について色々お話を聞いたとき、私でお役に立てると感じました。課題は経営面での困りごとから経理の実務面に欠けていることまですべて明快でしたし、私がサポートすることで解決できるばかりでした。解決策についてその場でいくつかアドバイスしたところ、私の週2回半日勤務という条件でもやっていけると水嶋さんも思われたようです。経営者が「やれる」と確信してくれたことが、こちらとしてはとても心強かったですね。
――経理部門の仕組みはどのように決めたのでしょうか?
戸塚 それまで水嶋社長が自ら行っていたことを、これから会社が成長していくためにどうすれば有効なかたちにできるか、対外的な対応をどうすればいいかなどをひとつひとつ詰めていきました。私の関わり方の基本は、社長を初めとする経営陣の相談に乗ることですから、週2回の経営会議と全体会議に出席することでカバーできます。また外部の顧客や外注業者、銀行などとのミーティングや交渉に同席することもありますが、基本は週2回の出社日に合わせてもらい、スケジュールの調整が難しい場合は別途日時を設定します。
――経理業務はどのように行っていますか?
戸塚 それまで税理士事務所に委託していた経理事務は、去年の4月から新たに採用した専任の社員が担当するようになり、彼女と私がチームを組んで業務を行っています。彼女からの問い合わせや業務連絡には、私がどこにいてもPCやモバイルツールを使って答えることができますから、特に支障はありません。同席して一緒に作成した方が効率的な書類は私が出社したタイミングで作業をしますが、社内にしっかりした実務担当者がいてくれれば、社外CFOとのチームで効果的に経理業務を回していくことができます。実務面ではこのチームをいかに作るかがとても大切ですね。
コミュニケーションと業務効率の質を高める
――成功のポイントはどこにあったと思いますか?戸塚 週2回の出社で的確にミッションをクリアしていくためには、業務効率の質を高める必要があります。私にはそれまでに社外CFOの経験があり、そこで遠隔からのコミュニケーションや業務プロセスの効率化などについて、徹底的に考え、経験を積んでいましたから、それほど問題はありませんでした。苦労を強いてあげれば、あまり経験スキルがない経理実務担当を指導・育成しながら業務を進めなければならないことでしょうか。彼女とはPCやスマートフォンを通じて常時コミュニケーションとってはいますが、それでも私が会社にいないことから生じる不安はそれなりに生まれますから、そのメンテナンスの意味も兼ねて、月に1回メンターとして前月の振り返りを行い、できたことやできなかったこと、翌月の課題などを明確にしています。
経営的視点から成長段階に合った最適なアドバイスを提供する
――経営陣、水嶋社長へのサポートでは、特に心がけていることはありますか?戸塚 私に求められているのは経営的視点に立ったサポートです。会社にはその発展段階によって必要なものと、それにかけられるコストがありますから、「今、これにいくらかけるのが最適か」を極力客観的な視点からアドバイスしています。
――何が最適かは会社の状態によって変化していくこともありますか?
戸塚 会社は成長に合わせて管理体制や活用すべきサービスをタイムリーに変えていかなければなりません。いずれ必要となることでも、時期が早すぎればコストに見合った体力がないためにかえって会社にダメージを与えてしまうことになります。たとえば上場をめざす企業は体制を整えることを急ぎすぎる傾向がありますが、すべてを一度にそろえる必要はないわけで、必要なものを優先順位にそって整えていけばいいのです。
――戸塚さんは上場企業のCFOを経験しているから的確な判断ができるのですね。
戸塚 上場をめざす企業やM&Aなど、ベンチャーの色々な成長段階や経営基盤改善策を経験した上で、上場企業にも関わるようになったからこそ、色々なものが見えると言った方がいいでしょうか。最初にお話ししたように、複数の企業に関わることで見えてくるものがあり、それがプロパートナー、社外CFOとして企業に提供できる大きな付加価値になるわけです。もちろん守らなければならない企業の秘密はありますが、それ以外に他社へ応用が可能な普遍的な経験スキル、ノウハウというのもたくさんあります。
働き方を研究開発できるプロパートナーというかたち
――プロパートナーという働き方の魅力はどういうところにあると思いますか?戸塚 最初にお話ししたように、異なる業種や成長段階にある複数の企業に同時に携わることで、1社の常勤/専任で働くより豊かな経験を積むことができるという点です。1社の経験を他社へ応用していくことで、大きな価値を生み出せるのは、プロフェッショナルとしてとても楽しいことです。
――1社での安定より仕事のやりがい、自分の成長を選ぶということでしょうか?
戸塚 変化の激しい時代であることを考えると、必ずしも1社に勤務していることが安全であるとは言えないのではないでしょうか。むしろ複数の企業に携わっていることがリスクヘッジになるかもしれません。その意味でもプロパートナーという働き方にはメリットがあると思います。
――これからどのようなキャリアを歩んでいこうと考えていますか?
戸塚 今は私にとって働き方のR&D段階だと考えているんです。今の状態が完成形であるとも思っていません。これから時代の流れを考えると、人口が減少し、プロ人材の不足によって企業のノウハウが希薄になっていく中で、私のように幅広く多様な経験をしている人間に対するニーズが高まっていくでしょう。そのためにできるだけ色々な企業で様々なことにチャレンジしていきたい。今はまだそういう生き方・働き方で突出した存在になった人はいませんから、その先駆け・ロールモデルになることも可能ですし、これからの社会が必要としている新しい働き方を確立することで社会貢献することもできる。プロパートナーには、そうした時代の開拓者になれるという魅力もあると言えるかもしれません。
- 1