正社員やアルバイトなどの雇用形態を問わず、「シフト制」で従業員の労働時間を管理している場合、労働日や労働時間が不定期であるが故に、従業員側の不満が爆発し、労働トラブルになることがあります。その原因をたどると、「シフト制」の働き方について、労使で認識の違いが生じていることがあるのです。なぜ、「シフト制」に関するトラブルが起きてしまうのか、また、トラブルを未然に防ぐにはどうすればいいのかを解説します。
「シフト制」の雇用管理には要注意! 労働トラブルを避けるために必要なこと

「シフト制」とはどのような形態の労働なのか

「シフト制」とは、労働契約を結ぶ段階では労働日や労働時間が確定しておらず、一定期間ごとに勤務表を作成して従業員に通知をすることで、労働日や労働時間が確定する労働形態を指します。具体的には、たとえば1ヵ月分の早番や遅番、夜勤、休日などを割り振ってシフト表を作成し、従業員の方に通知して働いてもらうような場合です。

つまり、「シフト制」では勤務日や勤務時間帯が不定期になるので、実際に決定したシフト表を従業員の方が見たときに、「こんなシフトになるなんて、募集要項や労働条件通知書には書いていなかった」と食い違いが生じることがあります。したがって、従業員の方とのトラブルを防止するためには、まず雇入れの段階から対策を講じておくことが大切です。

従業員を雇うときに気をつけなければならないこと

従業員を募集するときには、応募者に対して業務の内容やお給料の額、労働時間などの「労働条件」を明示する必要があります。この明示は、「職業安定法」に定められていることなので、募集を行う者の義務です。

「労働条件」は、できる限り具体的かつ詳細に明示するように配慮する必要があり、応募者が募集要項を見た際、誤解を抱かせないようにすることが大切です。また、募集要項へ記載するだけではなく、応募者と労働契約を締結するときにあらためて労働条件を明示しながら説明し、応募者に正しく理解してもらうことが、トラブルを防ぐためには重要です。

明示すべき労働条件は、「従事すべき業務」や「始業及び終業の時刻」、「休日」、「賃金」などであり、原則、書面での明示が必要です(労働者の希望があればメールなどでの明示も可能です)。労働者に対し、労働条件を書面で明示することは、「労働基準法」で定められています。違反すると「労働基準監督署」から行政指導を受ける可能性がありますので、注意が必要です。

ただ、「シフト制」を採用している職場では、労働契約締結の時点ではまだシフトが決まっていないために、始業時間や終業時間が確定できないことがあります。そのような場合、たとえば「早番は8時30分から17時30分まで」、「遅番は9時から18時まで」といった具合に、原則としての始業時間や終業時間を明示します。

労使の認識がずれたまま労働契約を結んでしまうと、従業員として働いてもらったとしても、「こんなことは聞いていない」と従業員の不満がたまっていくきっかけになりますので、最初が肝心です。

では次に、シフトを組んでいくときに気をつけることをご説明しましょう。

シフトを組む際に注意しなければならないこと

労働契約を締結するときに労働条件を明示していても、締結時に細かいことまですべてを明らかにしておくのが難しい場合もありますが、実際にシフトを組む際に必ず認識を合わせておくべきことがあります。それは「一定の期間において目安となる労働日数や労働時間」と、「一定の期間において労働する可能性のある最大の労働日数や労働時間」です。

たとえば、1ヵ月ごとにシフトを組む場合は、はじめに「1ヵ月のうちシフトに組み込まれる日数などの目安」をきちんと話し合い、労使の認識を一致させておくことが重要です。業務の繁閑によってシフト数がある程度増減するのは仕方ないとしても、「3月は15日分のシフトが入っていたのに、4月は5日分しか入れてくれなかった」ということになってしまうと、従業員の方の不満が一気に大きくなる可能性が出てきます。したがって、シフトを組む段階で従業員の方と話し合い、意見を聞いておくことがトラブルを防ぐために必要なのです。

また、一旦シフトを組んでしまうと、労働日が確定しますから、会社側の都合で一方的に従業員の方の労働日を減らして休ませると、「労働基準法」で規定されている「休業手当」を支払う義務が発生する可能性があります。もし、会社側の都合でどうしても決定したシフトを変更する必要があるときは、従業員の方とよく話し合い、勤務日を振り替えるなどの措置を取り、お互いが納得して変更するようにしましょう。

もし、「労働基準法」上のルールがよく分からない、という場合はお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。「労働基準法」だけでなく、労働に関する法律は複雑な上、法改正も頻繁に行われていますので、気軽に相談できる環境を作っておかれると安心です。

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