組織の問題の多くはリーダーとメンバーの分断
私は、副業でALIVEに携わりながら、現業では人事をしております。人事として携わってきた領域は、人材開発から始まり、組織開発、採用。今は、戦略人事(HRBP)として、事業の人・組織の戦略パートナーとして従事しています。人事制度や労務、採用など幅広く行っている中で、戦略人事(HRBP)の業務としては組織開発が増えてきています。粒度は様々ですが、具体的には下記のような組織として何か手立てを打たなければ改善されない相談があります。
・組織のモチベーションが下がっているように感じるが、何か出来ることはないか(管理職)
・組織の目指す方向が分かりづらく、自分の存在意義を見出しづらい(メンバー)
・マネジャーが圧迫的であり、感じていることや思っていることを言いづらい(メンバー)
相談を受けて、まず私からは、“対話をしましょう”とお伝えします(前提として、ボトルネックを把握した上ですが)。上記のような状況が起こっている組織では、多くの場合、リーダーとメンバーの“分断”が生じているケースが大部分を占めています。その“分断”を引き起こしている要因は、相互理解であり、対話の欠如であると解釈しています。
対話で重要なのは「聴くこと」と「否定をしないこと」
組織で対話を行ってもらう前に、私はリーダー(管理職や相当役職)の方と話をします。いきなり、「対話をしましょう。さぁ、どうぞ」といっても、何からどう手を付けて良いのか分からず困惑してしまうでしょう。まず、「メンバー1人1人と向き合ってください」とリーダーの方にお伝えしています。
組織で心理的安全性(psychological safety)を担保するためには、私は1人1人との信頼が前提としてある上での話だと思っています。1人1人と向き合う際にお願いしていることは、“聴くこと”、“否定をしないこと”です。
前回の記事(※)でも紹介しましたが、ALIVEではこの対話をする前提の“聴くこと”、“否定をしないこと”などの作法を、セッション毎のリフレクションを通じて、学ぶ機会があります。
※:「自己開示とフィードバック」をくりかえすことで、人はどのような成長実感を得られるか
現業の会社からも過去、50名弱の社員がALIVEに参加し、多くは現在リーダーとして組織や事業を牽引しています。その参加者の配下組織やメンバーのエンゲージメントスコアを見ると、相対的に高い傾向が結果として表れています。
他者からのフィードバックと内省を通じた自己認知が、硬直化した価値観を壊す
昨今、組織マネジメントの難易度が、急速に高まっていると感じています。「Z世代」や「α世代」などと呼ばれ、生まれた時代によって過ごした環境が激しく変化し、その環境下で得た学びが異なるため、人格や考え方、志向性は大きく異なっています。また、男性育休やLGBTなど世論の動きが活発化しており、リーダーの変革が急務です。その環境下でリーダーに求められるのは、言わずもがな、「多様性のマネジメント」です。
人事として、前述したような組織開発の相談を受けることがあるのですが、肌感覚としては、プロパー(新卒)で入社した社員からの相談割合が多くなっています。それは一種の固定化された組織価値観に縛られており、成功体験が輪をかけて、その価値観を硬直化させていると解釈できます。
その硬直化された価値観を壊すのはなかなか慣れ親しんだ日常では難しく、他者からのフィードバックによる外的な刺激と、内省を通じた自己認知。つまり、外的な刺激と内的な刺激の両軸が組み合わさって初めて壊されるものだと思います。
ALIVEが運営する研修では、様々な企業から参加する社員が1つのチームをつくり、プロジェクトを進めていく形式をとっています。そのプロジェクトチームこそ、多様性のマネジメントの練習台です。またリフレクションのプログラムもあり、チームのメンバーからフィードバックを受け取り、内省を深め自己認知を広げていきます。このプロセスは、価値観を壊し広げていく可能性を秘め、1人1人の未来へ繋がるきっかけになります。
私の好きな言葉の一つに、「啐啄同時」があります。雛が卵から孵化するとき、雛が内からつつく頃合いに、親鳥が外からつつくことで殻を破る手助けをするという意味のこの言葉。これと同じように、人の変化変革も「内発的な動力」と「外発的な動力」の2つが組み合わさることで、新しい可能性が拓けると私は解釈しています。
リフレクションでフィードバックを受け、内省し、自己認知をする。このサイクルを回すことで、1人1人に眠る可能性を広げていきたい。そう願いながら今後もALIVEの運営に携わっていきたいと思います。
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