新型コロナウイルスの感染拡大を機に、テレワークの働き方が一気に拡大した。ただ、オンラインという環境下は、対面になかったいくつかの障壁を生み出している。例えば、新人を育成するOJTの現場。テレワークでは、対面でできた指導ができず、顔が見えない分、新入社員の状況や状態を把握するのが難しい。オンラインでのOJT指導のは、対面より難易度が高いといえるだろう。そこで本記事では、テレワーク下でのOJTの課題や、失敗しない育成のポイントなどを解説していく。
テレワーク下でも失敗しない新入社員へのOJTのポイント

OJTを行う際、対面とオンラインでは何が大きく違う?

対面とオンラインの違いを探るうえで、対面のOJTのメリットついて考えてみたい。まず一つ目は人間関係の構築のしやすさだ。二つ目は、新人の状況や状態の把握のしやすさ。そして最後の三つ目は、手取り足取り教えられるところだ。

オンラインという環境下では、何気ない会話や偶発的な会話は生まれにくい。一方、対面は、テレワークよりも会話の量や会える人間の数が多く、人間関係を構築していきやすい。また、新人の業務状況が把握しやすいことで、疑問点の解消のスピードは対面のほうが速い。テレワークでは隣に座って画面を見てもらうというシチュエーションを作れないため、双方が満足のいく指導ができない。


テレワーク下(オンライン)でのOJTの課題は?

では、テレワーク下(オンライン)でOJTを行う際、具体的にどのような課題があげられるだろうか。大きく分けて2つ紹介する。

●観察ができない

オンラインで教育をする際、新人を注意深く観察することは困難とされている。外見で言えば、顔色や表情といった様子だ。仕事のプロセスを把握するのも難しく、どのようなスピードで仕事を進めているのか、どのような進め方で作業をしているのかがわからない。

また、新入社員側も、上司や先輩の仕事ぶりを観察できないため、理解に時間がかかるだろう。職場の雰囲気や人間関係なども見えないため、会社になじむ、慣れるまでの時間も、対面の研修より遅くなりそうだ。

●声かけができない

オンラインでは、「よくやっているね」や「何か困っていることはない」といった、新人を励ましたり、サポートしたりする言葉をすぐにかけることができない。対面では瞬時に対応できた言動の注意など、仕事に取り組む姿勢の軌道修正もなかなかうまく図れない。また何気ない雑談も気軽にできないため、新人との人間関係の構築に時間がかかる。新人からすると、ちょっとした業務の質問や確認がしづらく、やはり業務を理解するまで時間がかかってしまう。

テレワーク下(オンライン)でOJTを実施するうえでのポイント

では、観察や声かけができないといった課題に対して、どのようにして解決に取り組んでいけばよいのだろうか。

●定期的な対話の場の設定する

教育担当と新人の間で、あらかじめ「この曜日」、「毎日のこの時間」といったように定期的な対話の場を設けるのが効果的だ。そして、ただ日時を決めることだけでなく、きちんと双方が言い訳をせず約束を守ることも忘れてはいけない。特に話題がない日だったとしても、お互い顔を見合わすだけで安心感を醸成できる。

オフィス内で勤務していれば、特に取り決めがなくても、声をかけることで対話ができるがテレワークではそうはいかない。例えば、1日の終わりに業務報告の時間を作るといった定期的なリズムを自発的に生み出していくことが重要といえる。

また、教育担当は、ただ用件を伝達する場ではなく、対話の場であることを認識しないといけない。例えば、「困っていることはないか」、「調子はどうか」など、新人が話しやすい雰囲気をつくり、雑談も交えることで、新人の自然な様子を観察することができるだろう。

そして、教育担当は1on1だけでなく、事業部や部署のミーティングで新人に話を振るなど、職場になじめるような配慮も必要だ。

●オンライン日報を活用する

対話の場を作り、会話の仕方を工夫しても、やがてマンネリや話題がなくなるといった事態がやってくる。それを防ぐ手立てとして、例えば、オンライン日報を採用することで、対話のネタに困らないだけでなく、業務における早期の課題発見にもつながる。また、教育担当以外の従業員からのフィードバックも期待でき、そこから周囲との人間関係を構築しやすくもなる。

●課題を与えて進捗を確認する

テレワークが主体の働き方の場合、新人に早期からなかなか業務は任せづらい。そこでコンスタントに取り組めそうなレベルの作業や課題を与えるのが効果的だ。教育担当は作業や課題の依頼をただするだけでなく、定期的に進捗の確認を行おう。

すぐのフィードバックが難しい場合は、双方で期限を定め、必ず新人にリアクションすることがポイントになる。放置はモチベーションの低下を招くだけでなく、信頼関係も失いかねない。顔が見えないからこそ、定期的な連絡やフィーバックが肝要だ。

●言語化して伝える

対面の場合、例えばパソコンの画面を指差しながら、「これ」や「あれ」といった指示代名詞を使って教えることができた。ただ、オンラインではそうはいかない。何をクリックしなければいけないのか、右上なのか左下なのか、上から三番目なのか下から五番目なのか、きちんと言語化しなければ、新人に十分に伝わらない。Web会議ツールには画面共有の機能もあるが、言葉を明確にすることがオンラインの指導ではより一層求められる。

テレワーク下で起きやすい問題を理解したうえで、育成や指導を行う

テレワーク下のOJTでは、業務だけでなくオンライン、在宅という特有の環境下であることにも注意を払わなければならない。在宅で仕事をするため、オンとオフの境目がなくなるため、働くうえでのメリハリはなくなっていく。また、家庭の状況によっては、集中できる環境を確保するのが難しくなる従業員もいる。一人で業務に取り組む時間が多い分、不安感や疎外感、孤立感も感じやすい。

新入社員は就職や転職といった環境の変化に晒されており、入社したての頃は特に不安を感じやすい状態といえる。職場の雰囲気にまだ慣れず、周囲との人間関係も希薄なため、教育担当はそのような状況下に新人がいることを認識したうえで、フォローするようにしよう。相手の状態を理解することで、その後の育成や指導のアクションも変わってくるだろう。

●育成ビジョンの共有は安心感を生む

不安感や疎外感を解消するには育成ビジョンの共有も効果的だ。例えば、「1年後にどのような人材を目指してほしいか」、「会社が期待していることは何か」、「どのような想いでビジョンやミッション、バリューを会社は掲げたのか」、「上司や先輩は日々どのような想いで業務に取り組んでいるのか」といった会話を交わすことで、新人側は会社が期待していることや、一緒に働く従業員の考えが理解でき、安心感が生まれやすい。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、テレワークでOJT指導を行う企業が増えた。今後、対面(リアル)主体の働き方に完全に戻ることは考えにくく、テレワーク下でいかにうまく人材育成を行っていくかを会社全体で考えていかなければならない。本記事ではいくつかオンライン時の育成ポイントを紹介した。オンラインと言っても、人と人の関係で成り立っていることに変わりはないため、まずは新入社員が不安感や疎外感を抱きやすい状態にあるかを理解したうえで、OJTを実施するのが良いだろう。
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