HR領域でテクノロジー化されるのはどの業務か?
リクルートワークス研究所は、3月に「世界の人事が注目する『HRテクノロジー』2019-2020」を発行しました。このレポートでは、人事の領域におけるテクノロジーの最新トレンドがまとめられています。特に採用領域では最大9割の業務を自働化できることが示唆されています。候補者へのアプローチから、候補者のスクリーニング、一次面接、採用手続きに至るまで、ほとんどの領域でテクノロジー化がすでに進んでいます。こうしたテクノロジーを活用すれば、人事は最終面接をアレンジするだけで済みます。また、機械学習によるテクノロジーアセスメントも進んでいるので、自社の要件さえ決めれば面接なしで最適な人材を獲得できる段階にまできています。
現代ではLinkedinやFacebookといったSNSに個人の職歴や活動履歴が公開されています。こうしたSNSをサーチして自動的にメッセージを送ることもできるようになっています。日本ではまだまだ主流ではないですが、海外ではすでにLinkedinが名刺代わりにビジネスプロフィールを掲載する場になっています。
「ウォー・フォー・タレント」と呼ばれるほど、優秀な人材の獲得は激化しています。特に現代ではテクノロジーやデータを制した企業が勝つ可能性が高いため、優秀なエンジニアやデータサイエンティストの獲得はIT企業にとって最優先事項になっています。しかし、常に担当者が24時間365日、よい人材を世界中から探すことは不可能です。採用のチャンスを逃さないためには、人材発掘の段階から自動化を進めるのは当然のことなのでしょう。
採用業務が完全自動化される未来はすぐそこまできています。
「人の感情に寄り添う仕事」はテクノロジーではできない
採用以外の領域でも、給与計算や勤怠管理といった事務的な仕事は段階的に自動化されるでしょう。研修、教育の領域もオンライン学習やライブ配信でほぼ完結できるようになってきました。異動や人員計画は、将来的にAIの示唆に基づく手法で行われる可能性があります。しかし、人事の仕事のすべてが自動化されるわけではなさそうです。例えば人材育成の領域では、特に感情や人への思いやりが必要になるリーダー育成の部分に関しては対面での実施が効果的だと感じます。労務対応でも、労働組合との交渉、退職勧奨や休職者との面談はやはり人間が行うべきでしょう。また従業員の動機付けやコミュニケーションに関わる、人事制度の設計や職場づくりの部分はやはり機微がわかる人間の担当者が考えるべきです。
このように考えてみると、自動化やテクノロジー化ができない仕事が意外と多く存在していることに気づきます。人の感覚や感情への配慮が必要となる部分は、やはり人事部が担っていくのでしょう。一方で人の手で行うべき仕事が絞られてくるという発見もありました。テクノロジー化によりそもそも労働者が必要なくなるビジネスもあるかもしれません。そういった企業では人事部がなくなる可能性もあります。
ではこれからの時代、人事部はどうなっていくのでしょうか。