アメリカから見た日本企業の人事部は“石器時代”
少し前から、人事領域におけるAIの活用が話題にあがるようになりました。といっても、まだまだ興味本位のレベルです。多くは「AIが発達すると、代替される業務が増えて人事管理の在り方が変わるよね?」という話が中心です。正直なところ、人事部はこれまでAIはおろか、ITにすら疎遠な部署でした。IT企業は別ですが、それ以外はITに詳しい社員がほとんどいません。多くの人事部は、やっと最近タレントマネジメントシステムが導入され始め、データ分析やビッグデータに触れられるようになった段階ではないでしょうか。
一方アメリカではIT活用が積極的に行われ、AIによる人材データの分析が少しずつ始まっているようです。アメリカからある日本企業に視察に来た学生が、ITの導入状況をみて「まるで石器時代だ」と言ったといいます。
日本企業の人事部では、いまだに一部の業務をファイルや紙で行っている場合もあります。まだまだExcelでの管理が中心という企業も多いでしょう。こんな状況を、そのアメリカ人学生がみたら、もっとびっくりするに違いありません。そのため、人事業務の中でAIを活用するのは、まだまだずっと先の未来だと感じています。
AIがあれば人事部はいらない!?
しかし、日本を代表する大手企業の人事部の中には、AIを活用しはじめている事例もあるそうです。社員が数万人以上のある大手上場メーカーでは、社員のデータをビッグデータとしてAIに投入しています。たとえば、入社時のSPIの結果と昇格試験や業績データ、研修結果を組み合わせ、ポテンシャルのある人材を見極めて選抜育成に活用するトライアルを行っているとのことです。まだまだテスト段階ですが、教師データとして現社長や会長のデータを読み込ませてリーダー候補を探しており、そのことに一定の結果が見え始めているともいいます。
こうしたお話をお伺いすると、完璧なAIが完成したら人事部はほとんどいらなくなるのでは? と考えてしまうことすらあります。
人事部の業務は7割から8割ほどが事務作業や分析、管理の仕事です。ですが人件費の分析や最適な人員計画といったデータ分析は、AIが考えて自動で最適化したほうが良い答えがでるはずです。
また採用、教育業務も、AIで優秀人材や候補人材を分析して、性格検査の結果も照合すれば、面接などで選抜する手間もなくなるでしょう。さらには労務管理も、社員の健康データやエンゲージメント調査の結果をAIに読み込ませてリアルタイムで管理すれば、メンタル不調や離職を未然に防ぐこともできるはずです。そう考えていくと、人事部がAIに代替される可能性が見えてきます。
現在は投入された人事データが少ないので、まだまだその日は来ないと思いますが、AIがさらに進化した時には人事部をなくす企業も生まれるかもしれません。