社員にとっては自己成長や新たな活力に
日本航空株式会社(以下、JAL)がワーケーションを導入したのは、2017年夏。当初は休暇取得促進が主な目的だったという。同社は総実労働時間1850時間を目標に掲げており、この達成には年次有給休暇を20日近く取得することが不可欠だった。そこで活用したのが、ワーケーションだったというわけだ。休暇をメインにしつつ、一部の業務を就業時間として認めるよう制度化。現業部門を除いた、テレワークを利用できる社員を対象にし、テレワークと合わせて週2回程度、月間で10日程度取得できるようになっている。これまでの取り組み事例としては、和歌山県白浜町の遠隔地でのテレワーク体験から始まり、鹿児島県徳之島町での地域創成や関係人口への影響も考えた取り組み、ワーケーションを行うことで+αの体験ができるアクティビティを融合したプログラムを体験するなど、ワーケーションの可能性に繋がるさまざまな施策を実施してきた。冬の軽井沢でミーティング&親睦を深める
ではワーケーションを実践することで、企業・社員双方にどのような効果が期待できるのだろうか。同社にてワーケーションの普及を進める人財戦略部ワークスタイル変革推進グループアシスタントマネジャーの東原祥匡氏は、「ワーケーションを含むリモートワークを活用することで、メリハリのついた業務を意識することができ、また休暇の取得促進にも繋がっています。取得方法はさまざまですが、企業にとってはより柔軟性のある働き方の推進に、社員にとっては自己成長や新たな活力に繋がるでしょう。さらに地域にとっては地域活性化、関係人口の増加など、三方よしの誰もが損をしない制度として期待されていると感じます」と語る。同社では、ワーケーションを全社的に浸透させるために、さまざまな取り組みも行っている。実際にワーケーションを行うだけでなく、例えば理解促進に向けたワークショップや、イントラネットでの専用ページの解説、社内報への掲載、勤怠システムにおけるワーケーション勤務時の登録など、社員自身が「ワーケーション」という言葉に触れ、正しく制度を理解する仕組みも構築した。さらに従来はテレワークの実施できる社員のみ行ってきたが、シフト勤務の職場で導入を検討してみたり、チームとしてワーケーションを実施してみたりと、浸透させるためにさまざまな動きが見られるという。利用者も2017年夏は11名だったのに対し、2018年夏は78名、年間では170名を超えるなど、浸透が図られており、今やワーケーションという言葉を知らない社員は、少数派になっているようだ。
一方JALの社員の中には、自己成長や新たな活力に繋げるためには、特別な施設や環境があると、よりワーケーションの効果がでると感じている人も少なくないようだ。より満足度を高めるために、今後はさらに地域と連携を図りながら、施設や施設周辺の環境整備、観光資源の充実などを図っていく必要もあるだろう。いずれにせよワーケーションは、日本人の働き方を大きく変えるきっかけになるかもしれない。
「我々のワーケーションは、休みも仕事もどちらもしっかり両立させるのが狙い。今回も非日常の場所で心身ともにリフレッシュしながら、新しいアイディアを出し合いました。こうした尖った取り組みを世の中に発信することで、日本全体の働き方の変革に少しでも役立てば嬉しいです」
「東京から軽井沢まで新幹線で1時間。それこそ9時に全員集まって仕事が始められます。普段東京のオフィスで働いていると、1日中みんなで同じテーマで話せる機会ってなかなかありませんが、こういう環境なら議論に集中できる。普段から、ざっくばらんなメンバーですが、今日はより一層本音で話すことができました」
「軽井沢ということで非日常感が味わえました。今回は1日中ミーティングをするワーケーションでしたが、みんな集中しながらも、あちこちから自由な発想が飛び交うなど、今までのワーケーションの中でも一番充実していました」
「会社で仕事をするのとは気分がまったく違い、効率もあがりました。ワーケーションの価値は何といっても楽しくやれること。ただ頻繁にやろうと思うと値段の面などで選択肢が狭まってしまうので、今後は手軽に使える施設がもっと増えるといいです」
「ずっと東京の同じオフィスで働いていると、目の前の仕事に追われて、新しい発想が生まれにくいですが、こういう環境なら新鮮な視点で自分たちの仕事が見直せます。また業務以外でもプライベートのようにみんなで食事をしたり、観光をしたりしながら、メンバーの知らない一面を見ることができ、より一層親交が深まります」
「軽井沢は自然豊かで、気持ちが開放的になります。仕事の面では、議論に集中でき、普段は思いつかないようなアイディアがどんどん湧きました。また、施設も新しくて、アメニティや食器なども揃っており、ユーザーが使いやすいよう気配りがされていると感じました」
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