廃止前から『就活ルール』は形骸化していた
2018年9月、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が、就職活動の時期などを定めた『就活ルール』について「経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をしていることには違和感を覚える」(※1)と発言した。経団連では「大学3年生の3月に会社説明会などの広報活動を解禁 ⇒ 4年生の6月から面接開始 ⇒ 10月以降に内定出し」というスケジュールを会員企業に示していた(2020年卒生まで適用)。この『就活ルール』、日程の見直しは適宜行われてきたが、今回の会長発言は見直しどころか「廃止する」という宣言にも思えるものだった。
この時点では、まだ中西会長の“問題提起”に過ぎなかったが、事態は急速に動く。同年10月、経団連は2021年卒以降の学生を対象とした『就活ルール』は策定しないと決定。翌2019年4月には、経団連と国公私立大の学長からなる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が「ジョブ型雇用を念頭においた採用も含め、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべき」(※2)との共同提言を発表した。
そもそもこれまでの『就活ルール』は、破った際の罰則が設けられておらず、経団連非加盟の企業に守る義務はない。非加盟の外資系やベンチャーはより早い時期から選考を開始し、会員企業もこれに対抗、3年生の3月以前に「インターンシップ説明会」や「業界説明会」を開催して実質的な採用活動をスタートさせていた。もはや『就活ルール』は形骸化しており、廃止は時間の問題だったといえる。
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