連続休暇に「プラス1日」する『プラスワン休暇』
働き方改革を実現させるための第一歩として、休み方改革が不可欠であるという認識が少しずつ浸透しつつある昨今、日本人の“休み方”を変える取り組みは、政府や各企業がさまざまな形で制度化して進めている。その代表的なものとして挙げられるのが、『プラスワン休暇』だ。労働基準法に、年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に年次有給休暇取得日を割り振れる「計画的付与制度」がある。プラスワン休暇は、この制度を利用して、土日や祝日に1日以上の休暇をプラスする取り組みである。
厚生労働省では、目安として2~3日の休暇に年次有給休暇を1日付加する形を提案しており、例えば、月曜日に休めるように計画休暇を設定すれば、従業員は土日と合わせて3連休を取得することができる。土日に限らず、飛び石になっている休日の間の日を年次有給休暇とすることで、通常よりも長い休暇を確保することも可能だ。この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が5.3%高くなっているという(平成26年就労条件総合調査)。
日本人の有給休暇取得率が低い要因に、「職場の空気が気になる」、「自分だけ休みづらい」といった日本人特有の心理が挙げられるが、『プラスワン休暇』を導入すれば、有給休暇の取得日が制度として定められるため、いちいち自分から「休みたい」と伝える必要もなくなり、ためらいを感じずに有給休暇を取得できるだろう。企業にとっても、従業員の休暇があらかじめ決まっているので、労務管理がしやすく計画的な業務運営が可能になるというメリットがある。また計画的付与だからといって、全従業員が同じ日に休む必要もない。例えば、部署ごとの交替制付与方式を取り入れてもいいだろう。特にサービス業や流通業など全社的に一斉に休業することが難しい業種には適していると言える。
親子の時間を創出する『キッズウィーク』の成果と課題
休み方改革を推進する施策として平成30年度にスタートし、話題となったのが『キッズウィーク』である。地域ごとに学校の夏休みなどの長期休業日を分散化することで(学校休業日が増えるということではなく、夏休みなどの一部を他の時期に回す)、大人と子供が一緒にまとまった休日を過ごしやすくするための取り組みだ。厚生労働省では、労働時間等設定改善法に基づく指針を改正し、働く人が子供の学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう、事業主に配慮を求めている。『キッズウィーク』を導入することで、得られるメリットは少なくない。親子で地域の行事に積極的に参加したり、親の休日に合わせて家族旅行を計画したりできるほか、親の有給休暇取得の促進にもつながると期待されている。では、実際にどのように進められているのだろうか。自治体の具体的な取り組み事例をご紹介しよう。埼玉県秩父市では、平成28年12月に「秩父祭の屋台行事と神楽」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受けて、川瀬祭の7月20日と秩父祭の12月3日を「伝統文化に親しむ日」と制定し、平成30年度より市内小中学校および幼稚園の休業日とした。伝統文化の次代の担い手である子供たちが、保護者や地域住民とともに、秩父市の代表的な祭りである川瀬祭と秩父夜祭に参加することを通じ、伝統文化に触れ、地域愛を育て、家族や友達、大人たちとの絆を深めることが狙いだ。これに合わせて、秩父市報に「有給休暇を取得して、お子さんと一緒に秩父夜祭に出かけよう」といった内容の記事を掲載し、年次有給休暇の取得を呼び掛けている。
また、香川県丸亀市では、平成30年度に、小・中学校、幼稚園および認定こども園が行う学校・園等の行事の振替休業日を他の時期の土曜日・日曜日、国民の祝日と組み合わせて、3連休から5連休の新たな学校休業日とした。
このキッズウィーク推進に当たり、行政(国の関係機関を含む)、教育委員会、商工会議所、地域コミュニティ、PTA等から組織する推進協議会を立ち上げ、周知啓発用のポスター、チラシを配布して年次有給休暇の取得を呼びかけている。
その他にも全国の各市区町村等で独自の取り組みが行われ、徐々に認知が広まっているが、『キッズウィーク』に関しては課題も少なくない。「アイディアはいいが、親が休みを取れなければ意味がない」、「子供の休みと同じタイミングで休みが取れるかわからない」、「同じ市町村でも休みたいタイミングは人それぞれ」といった意見も多く、『キッズウィーク』を浸透させるためには、やはり企業側の取り組みが鍵を握る。もっと議論を深めながら、先述した『プラスワン休暇』など親が有給休暇を柔軟に取得できるような仕組み・体制づくりを進めていくことが不可欠だろう。
- 1