夏場のインターンシップが採用の勝負所に
半日~1日程度で完結するごく短期のインターンシップ、いわゆる「1Dayインターンシップ」の実施を経団連が解禁したのが2017年。これを機に、業種業界を問わず、各社こぞってインターンシップ導入に踏み切った。今年6月にHR総研が企業の採用担当者を対象に実施した「2020年&2021年新卒採用動向調査」でも、「2021年新卒採用でより重要になると思われる施策」のトップは、前回の調査に引き続き「インターンシップ」で、46%と実に半数近くの企業が挙げた。さらに21年卒から、採用活動の解禁日などを設けてきた、いわゆる「経団連ルール」の廃止が決定。従来は解禁間近の1~2月がインターンシップ実施時期のピークだったが、今年はルール廃止を受けて、8~9月に開催を前倒しする企業が急増した。空前の売り手市場が続く採用活動は早期化を避けられず、勝負所は夏場のインターンシップへ移りつつあるようだ。
限られた優秀層にアプローチしようと各社が工夫を凝らすなか、破格の参加報酬を提供するインターンシップも珍しくない。
就活クチコミサイトのワンキャリアが、2020年卒の学生を対象に実施した調査によると、先述のアウローラ以外にもDeNAが4日間で10万円、リクルートとサイボウズが5日間で10万円、LINEが25日間で50万円、日本マイクロソフトが35日間で35万円など、名だたる人気企業が「高額報酬インターンシップ」を導入、学生の人気を集めている。
優秀な学生をひきつけるのは企業の本気度
高額報酬は確かに魅力的だ。では、これらに応募する学生達が単なる“お金目当て”なのかというと、決してそうではない。ここ数年で乱立した各社のインターンシップは、1日限りの1Dayタイプから数ヵ月にわたる長期プログラムまで、期間も中身もさまざま。玉石混交が現状なのは否めないだろう。学生の参加率こそ右肩上がりで伸びているものの、一方で、優秀な学生ほど肝心の内容に厳しい目を向けているようだ。就業体験とは名ばかりで、座って話を聞くだけの企業説明会と変わらない中身の乏しいインターンシップでは、学生達を惹きつけるどころか、逆に時間の無駄と見切られてしまう可能性さえある。
現に、前述のHR総研の調査で、学生に望ましいインターンシップの実施期間を聞いたところ、上位校の学生ほど複数日程を好み、中・下位校ほど1Dayを好む傾向が見られた。複数日程だから中身が濃いとは限らないが、意識の高い優秀な学生であれば、「所詮、半日や1日程度では大した情報や経験は得られない」と判断しても不思議ではない。つまるところ、彼らが求めているのは、自力では得られない企業のナマの情報や自らのキャリア観の確立に役立つ有意義な就業体験であり、それを提供することでよりマッチング精度を高めようとする企業の“本気度”なのだから。
インターンシップに伴う「高額報酬」も、学生には、そうした本気度の高さを推し測る目安の一つと受けとめられているのかもしれない。報酬だけでなく、海外でインターンシップを開催する企業も現れるなど、グレードアップは今後も続くと見ていいだろう。いずれにせよ、インターンシップをブームと捉え、ただ漫然と実施しているだけの企業が、激しさを増す優秀人材の争奪戦に後れを取ることは間違いない。
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