>>第2回:仲が良い会社=売上が伸びる会社にあらず、「なれ合い」と「助け合い」の違いを見極めよう
個人的な感情で情報を隠す社員は、会社にとっても損失をもたらす
「仲の悪さ」も、仲の良さと同様に「質とレベル」があります。「理想の製品やサービスはこうあるべき」といった、会議などで製品や会社がより良くなるために交わされる、レベルの高い意見のぶつかり合いから、単なる嫉妬や、「生理的に口もききたくない」といった質の低いものまでさまざまです。そして利益という側面から見ると、これらには大きな違いがみられます。前者の場合は、仲が良くないといっても、お互いに「自分が最高の案を出している」という自負のもとにぶつかっているわけですから、そこに個人的悪意があるわけではありませんし、会社に損失をもたらす仲たがいではありません。情報も最低限の部分は互いにオープンであることでしょう。
ところが、後者の場合は違います。個人的感情での不仲の最終目的は、ただ一つ「相手を消す」ということです。その人が「仕事で失敗」することを望みます。そのために行う手段の一番の典型が、その人が知っておかなければいけない情報をわざと知らせなかったり、嘘をついて偽の情報を流したり、といった「情報の遮断」という行為に出ることです。
なぜ「情報の遮断」を行うのか。その理由は、それが「有効かつ効果的」だからです。正しい情報を伝えないことで、多くの社員は「ほぼ自動的に」ミスをします。そして会社に損失をもたらし、その責任をとらされて失脚する、という流れにつながります。確実にそうなることがわかっているので、「情報の遮断」をしたがるのです。このように考えると、「正しい情報をタイムリーに得る」ということがいかに大切かおわかりいただけるのではないでしょうか。
また、「経営」という一段高い位置からその争いの様子を見てみると、前者の「フェアな争い」は、競い合いの結果、会社そのものが上昇スパイラルに入ります。むしろ歓迎すべきことで、両者を讃えてもよい位です。しかし、後者の「情報を遮断する社員」というのは、単に会社に損失をもたらす「赤字社員」に過ぎません。どのような理由があろうとも、会社側は情報を遮断した社員を放置せず、指導する必要があります。「単なる痴話げんかでしょう」と放置しておくと、こうした社員は生理的に気に入らない社員がいる度にその手法を繰り返します。そして、結果として対外的な会社の評価を下げ、徐々に赤字へと導いてしまいます。このような社員が一旦社内に居座ってしまうと、なかなか数字の改善はできなくなります。
このように、「会社に損失をもたらす行動をとってしまう社員」をマネジメントすることも、会社経営にとっては非常に大切なことであり、「利益を下げない組織」にするために重要なポイントになります。
いい情報も悪い情報もオープンにして「良い循環」を
私が社会人になりたての頃は、「報・連・相(報告・連絡・相談)」という言葉をよく聞きましたが、最近ではこうしたことも言われなくなりつつあるかもしれません。しかし私が経験を積めば積むほど実感するのは、ことわざや昔からの言い回しというのは、「人間の普遍的なエゴ」を上手くとらえており、本当に侮れないということです。つまり報連相というのは、「報連相をすれば絶対にうまくいく」という成功条件を伝えたいのではなく、「人間のエゴが悪い面に出た事案を検証すると、必ず報連相を行っていなかった。だから報連相を軽視してはいけない」という「戒め」の言葉なのだということを実感するのです。報連相をせずとも、うまくいく場合はいくらでもあります。しかし、会社に損失を与える事項は、意図的に報連相をしなかったことに起因することがほとんどです。「報連相を徹底しておけば、少なくとも会社が倒産、吸収されてしまうほどの危機は未然に避けられる」というとらえ方をするが良いのだと思います。
人間というのは、自分にとって良い情報は自らすぐ報告したがりますが、反対に都合の悪い情報は隠したがる傾向があります。情報を自分だけで囲い込んでしまうような「癖」のある社員は、それだけで組織においてはハイリスクですので注意が必要です。
その一方で、そのような気質の社員がいても、会社そのものが常に情報をオープンにせざるを得ない職場環境を作っておけば、こうした問題は起こらないわけです。報連相は、ピラミッド型の組織であれば有用ですが、今はフラットな組織もかなりあります。その場合、誰に報連相をしていいのか明確にならないこともあります。そのような組織でも必要かつ重要な情報を皆が共有できるように、たとえば社内のネット環境に掲示板的な場所を作る、ということも有用です。
上記を実施する社内ルールとして、「良いことも悪いことも、遅滞なく必ずこの場所に情報を書き込む」という形をとります。全員に「情報を書き込まない」行為そのものがルール違反になることを伝え、社員にはどのような情報もアウトプットしてもらうようにします。そして、機密情報以外は原則オープンにして、関係者は誰でも閲覧できるようにします。上司や部下、役職や部署などに関係なく、特定の場所に各自が「報告・連絡・相談」を書き込み、各自が特定の場所に「自主的に情報を見に行く」。こうした環境を整えることで、健全性も保たれます。
これにより、個人的理由だけで重要な情報を特定の人に教えない、嘘の情報を伝える、といったことも防ぐことができ、「レベルの低い仲たがいによる会社の損失」を根本から回避することができます。
バックヤードができる仕事の一つに、組織の中に「良い循環を起こすプラットフォームを作る」ことがあります。社内の情報が詰まることなく良い循環で回れば、良い情報のときは経営者や現場が最大限にそれを活かす方法を考えられ、売上や利益を最大化させることができます。一方、悪い情報であっても、それが最速で循環することで、その損失やリスクを最小限に抑えるにはどうしたら良いかという対策を全員で考え、最短の期間で対応できるわけです。こうすることで、利益が落ちるのを最小限にとどめることができます。
社員同士の人間関係に、バックヤードの社員が業務としてどこまで関わるべきか、線引きが難しく悩まれる方もいるかと思います。そのような時は「利益視点」、つまり「これは会社の利益に影響する可能性があるか否か」という視点で見てみましょう。そうすると、バックヤードが実務としてどの範囲までフォローすべきか、が明確になることも多いのではないかと思います。
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