キャリア教育系の科目として、共通教育科目の中でベーシックスキルとしてP-D-C-Aサイクルの自律的な運用を学ぶ「キャリアデベロップメント」、これからのVUCAの時代をどう生きるかという視点で自分の将来を考える「ライフキャリアデザイン」という2科目がありますが、特にそれ以外では、一部の大学で行われているような就職支援プログラムのような科目は設定していませんでした。ちなみに就活対策については、すべてガイダンスで、テーマごとにきめ細かく実施しております。
キャリア教育を見直すといっても、大学の学びの中で社会人基礎力を養うべきであるという本来のスタンスは変えません。しかし、成長を促進するうえでは、もう少し別の切り口も必要なのではないかということで、いくつかのプログラムを検討しております。
うまく説明することが難しいのですが、例えばスポーツの世界でも、最近、筋力トレーニングなどの体力強化、あるいはメンタルトレーニングなど、そのスポーツ本来の種目とは異なる観点からパフォーマンスを引き上げるトレーニングの有用性が認知されつつありますが、まさしくこうした視点からプログラムを開発しようとしております。
そうすると、専門はその種目のトレーニングで、キャリア教育は筋力トレーニングみたいな位置づけにあるのかなと考えております。基礎体力が弱い段階でいくら練習をしても怪我をしてしまうリスクが高いと同時に、結果にもなかなか結びつきませんよね。ですから、そういった意味では、キャリア教育を行うキャリアセンターは、言わばスポーツジムに当たるでしょうか?
さらにそうしたトレーニングを、産官学の連携のもと「学外で実施する」ということが重要だと考えております。その理由としては、次の3点が挙げられます。
(1)大学での学びと仕事とのつながりに気づくこと
工学系の分野はかなり直接的に仕事との関連性があるのですが、文系でも思考や行動の型については、同じように気づきを得られるはずです。例えば、大人との関わりの中で、P-D-C-Aサイクル、仮説設定→情報収集という思考の型、また、経済学の有用性や法律を理解する重要性などの気づきを得られればと考えております。言い換えれば、そうした気づきを得らえるような仕組みと仕掛けにこだわったプログラム設計を行う必要があると考えております。
(2)社会と仕事に対する視野を広げること
残念ながら、本学には社会と仕事に対する視野が狭い学生が多いと言わざるを得ません。VUCAの時代と言われる今日において、変化に対するアンテナを高く張ることは極めて重要です。これを補強するために、現在活躍するTOPランナーの方々と関わる機会を増やしていければと考えております。
(3)実践的な課題の中で思考と行動を鍛える
インターンシップやフィールドワークのようなできるだけ実践的な場で、しかも大人と関わりながら何かに取り組む機会を、増やす必要があると思っています。そうした取り組みを通じて、学生同士の関わりでは気づけない論点に触れたり、自身のロールモデルとなりうる存在と接したりすることで、思考と行動が鍛えられるでしょう。
具体的にどんなプログラムが良いのかなど、まだまだ詰めていかないといけない部分がありますが、このコラムで随時ご案内できればとも考えております。同時に、企業の皆様のほうから大学の教育に求めることがあれば、ぜひご意見をいただければと存じます。
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