厚生労働省「平成26年度雇用均等基本調査」によると、従業員30人以上の企業において、女性の活躍を推進する上で必要な取り組みとして「女性のモチベーションや職業意識を高めるための研修機会の付与(38.1%)」が上位に挙がっています。裏を返せば、「女性のモチベーションや職業意識が低いこと」を企業として問題視していることがわかります。
確かに、女性の管理職意向が低いことは様々なデータで示されており、その意味で、「昇進意欲」は低いと言わざるを得ません。しかし、管理職意向が低いことは、そのまま女性の仕事への意欲全般が低いことを意味するのでしょうか。
本稿ではこの問いについて考えていきます。結論を先取りすると、女性は「管理職意向がない」からといって「成長意欲が低い」わけではなく、仕事への意欲全般が低いとは言えません。仕事において前向きな「成長意欲」がある女性が管理職を目指すには、旧来の画一的な「管理職」のあり方を見直し、女性も管理職として働きやすい「環境」を整備することが必要であり、環境を整備する前に、「女性は意欲が低い」などと嘆くのは、本末転倒だと言えます。
昨今の働き方改革にも女性活躍推進の狙いが含まれており、副業・兼業やテレワークなど、時間や場所にとらわれない働き方が徐々に浸透してきています。しかし、まだ導入企業が少ないこともあり、こうした働き方が推進されることで本当に女性の「活躍」が進むのかについては、これまであまり検証されてきませんでした。
本稿では、パーソル総合研究所が今年2月に実施した「働く1万人の就業・成長定点調査2018」の結果を用いて、副業・兼業やテレワークなどの時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の推進が女性の管理職意向を高めることを示し、女性にとっても魅力的な管理職のあり方について議論していきたいと思います。
※なお、本稿では、特に議論に上りやすい正社員に絞って議論します。
管理職意向は低くても「成長意欲が低いわけではない」
まず、管理職になりたい人の割合について、あらためて見てみましょう。性年代別に管理職になりたい人の割合を見ると、図1に示すように、特に20代・30代で女性の管理職意向が低いことがわかります。(なお、管理職への昇進可否が定まる40代以降は、管理職になれなかった結果として「意欲の冷却」が生じることが考えられるため、ここでは20代・30代に絞って分析しています。)