講師
小松 弘明氏
ソフトブレーン・サービス株式会社 取締役会長
三和銀行(現三菱UFJ銀行)を経て、ソフトブレーン(株)に入社。銀行員時代を含め2万社を超える企業経営者からの相談を受けるなど、営業プロセス構築に関するコンサルティングで中堅・中小ベンチャー企業の経営者からの支持も高い。著書に『宋文洲直伝 売れる組織』(日経BP社)、『会社の見直し方』(幻冬舎)。
営業は科学。気合だけでは続かない
弊社は、「営業」に特化したコンサルティング会社です。目標から逆算して必要な業務を洗い出し、効率的に組み立て、営業活動を構築していく「営業プロセスマネジメント」という手法を生み出しました。プロセスマネジメントの考え方は、結果に至るプロセスの管理が重要であるというものです。結果や人間を管理しても大きな成果は得られません。具体的には、目標とする結果を「設定」し、そこに至る営業活動を「分解」します。そして、それぞれのプロセスを明確に「視覚化」、「標準化」した後に、各プロセスの計画・実行・計測・分析・改善を繰り返していくことで、結果を得られます。つまり、「G-PDCA」(Goal、Plan、Do、Check、Action)のサイクルを回していきます。目標として得たい数値から逆算すれば、各プロセスで達成すべきことが分かり、目標に至る設計図を描くことができます。この設計図に従って行動するのが営業の業務であり、決して難しいものではないことを管理職は部下に伝えていく必要があります。
これまでの一般的な営業活動は、最初から「気合い」で勝負しています。これでは続きません。科学的に考えた営業の技術をメンバーに伝えていく仕組みを作り、部下が潰れることを防ぐことがとても重要です。
「がんばれ」とか「一生懸命やろう」と部下を叱咤激励しても、それだけでは意味がありません。大切なのは「一生懸命やってもダメだった」という部下を作らない仕組み作りです。
では、具体的にどう仕組みを作っていくか考えていきましょう。
個人の力と、組織の力をバランス良く、伸ばしていく
組織というものは、チームワークで成果をあげるものです。より良い結果を得るには、「メンバー個人のスキルを向上させていくこと」、「組織全体の力を底上げしていくこと」このバランスを取りながら進めなければなりません。個人の力に依存すれば、特定のメンバーの実績に頼る組織になってしまう。組織としての力に依存していると、商品力に頼った営業活動しかできなくなる可能性が考えられます。個人の力と、組織の力をバランス良く、伸ばしていくことは管理職の重要な役目と言えます。そのためのノウハウに「5ステップ70スキル」があります。これまで6,700社を超える企業に営業コンサルティングを提供してきた経験から、特に有能な営業担当者の行動を分析、分解し、重要な要素を抽出した70種類のスキルを5段階に分類したものです。結果を出すためのスキルを標準化でき、上司と部下が目標や改善が必要な点について、共通の言葉で意思疎通ができるようになり、業務スキルを着実に向上できます。
また、上司と部下が一緒に学ぶ「ダブルラーニング」も有効です。一般的に大企業では職位の階層ごとに受講者を分けて研修を実施されることがあり、各研修プログラム間に壁ができます。部下が上司に「研修報告書」を提出することもありますが、きれい事しか書かないものです。つまり、上司は部下がどんな教育を受けているのかを把握していないわけです。そこで、上司と部下を同じ場所に集めて一緒に学ぶ「ダブルラーニング」研修をおすすめします。
弊社が何よりも大切にしているのは「実践」です。実践をすれば、何か意味がある結果が出ます。その結果改善のサポートも、私たちの役割です。クライアントに指導できるのは、弊社社員にも同じことを実践し、裏付けがあるためです。
個人の能力を客観的に測って、育成にデータを活用する
5年ほど前から東京大学大学院経済学研究科 稲水伸行准教授、筑波大学システム情報系社会工学域 生稲史彦准教授、筑波大学大学院ビジネス科学研究科 佐藤秀典准教授といった先生方と共同研究を続けています。先生方の知見と、弊社の実務経験から得た知見を合わせて、組織の営業力を診断するツール「セールス・ダイアグノシス(R)」や、営業組織が活性化し、組織としての力を発揮できるような要因を探し出すツール「組織活性化アセスメント」などを開発しています。また、これまで紹介したサービスやツールをセットにして『営業マン育成コンサルティング』『プロセスマネジメント大学』『アセスメント』など様々なサービスを提供しています。
弊社の『アセスメント』の大きな特徴としては、複数の客観的評価を組み合わせて使う点が挙げられます。例えば組織の営業力を診断する「セールス・ダイアグノシス(R)」と、個人の資質や一般的なマネジメントスキルなどを診断する「自己認知力向上アセスメント」を組み合わせ、組織と個人の資質や能力などを精密に診断します。
現在の日本企業は、科学的に組織や個人の資質、能力を診断できるツールを活用できていないと感じています。例えば、採用時に実施するSPIの結果です。科学的データを取得しているにもかかわらず、上司が活用することなく、ただ「一生懸命やろう」と叱咤激励するだけでは、部下が潰れるだけで続きません。
日本企業は、人財育成についての考え方を大きく変える必要があると感じています。最近は、新卒で優良企業に入社して、優秀な業績を上げている人財や、自己実現欲求が強い人財は、入社後3年ほどで「必要なキャリアを積めたので次のステップに進みます」と言って辞めてしまいます。企業も、人財は3年程度で辞めることを前提として、事業の成長につながる人財育成プログラムを作り直さなければならないわけです。
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