最近の社会的趨勢か、長時間労働対策に対するお悩みを受けることが多くなった。長時間労働対策は企業全体で取り組むべきものだが、これを推進するにあたり、必要な業務の整理の段階で、足踏みする企業が多いのではないだろうか。いくら会社が労働時間を削減しようと働きかけても、営業や事務系の現場は、とかく「忙しい」、「面倒だ」という声に押されがちである。顧客に対して“価値ある業務”を生み出しているのか、見直すビッグチャンスなのに…。
デスク回りから残業削減

ミス、ムダをゼロにするおすすめ管理法

「書類はクラウドで管理しているし、帰る時は、個人のデスクには何もないルールになっている」という企業なら別だが、通常、デスクはその社員の個性が現れるところとなる。概ねきちんと整理整頓されているデスクの主は、仕事のデキる社員である場合多い。一方で、しょっちゅう「あれ? あの書類どこへいったっけ?」と言っている社員もいるが、これはいったい何が違うのか。そこを追及すると、長時間労働削減にも結びつく、意外なミス、ムダが見えてくる。

それにはまず、どこへしまったか迷ったり、必要なファイルや文書が見当たらなかったりするといった“あるある”を、限りなくゼロにすることを目標にするとよい。

例えば、文書のライフサイクルは次の通りだ。

(1)(文書の)発生
(2)活用または処理
(3)保管
(4)保存
(5)廃棄

会社は、このようなサイクルに沿って、文書の置き場所を決定し、周知するのがよい。 

また、「探す」、「迷う」、「ミス防止」のおすすめ簡単デスク管理は、次の10項目のような工夫が有効である。

(1)デスク上のトレーやファイルの配置を、仕事の流れに合致させる。
(ポストイットやボックスの色分けで、ライフサイクルの経過が一目で分かるようにするのもよい。)

(2)他人でもわかるように、卓上カレンダーに期限等を記入する。
(これにより、自分がいかにたくさん期限を抱えた案件をやっているか、分かってもらえる場合もある。 アポなどは基本、個人の手帳で管理する。)

(3)デスクで処理する案件は1件に限定する。
(電話対応等で、別の案件が発生しても混在させないようにする。)

(4)一時保管のファイルが複数ある場合は、順番が分かる番号を振るか、マークをつける。

(5)保存に移行する場合は、帳簿に記入し、保存期間・巻数をファイルに記入する。

(6)文房具類はすぐ使える状態にしておく。
(筆記用具、紙、ハサミなど、使う頻度の高いものから置き場所を決める。原則、使ったらすぐ戻す。余計なものは置かない、溜めない。)

(7)伝言メモは定型にし、必要事項の漏れを防ぐ。
(電話の伝言では、重要事項が漏れていると確認に時間がかかったり、対応が遅れたりでトラブルになりやすいので、メモは定型にしておくのがよい。)

(8)メールやファックス、電話などで文書が発生した場合は、1件ごとクリアファイルに入れて担当に渡し、紛失を防ぐ。

(9)ファイルの使い分けをする。
(リングファイルは追加や差し替えがしやすいのでおすすめ。本来分類すべきものがフラットファイルのタイプだと、時系列になってしまい、データ化できないし、肥満ファイルになりやすい。目的によってファイルの使い分けをすることが重要。)

(10)いつでも引継ぎできるファイルにする。
(仕事の属人化を防ぐうえでも、マニュアルにもなるようなファイル作りがおすすめ。新しい仕事や知恵を追加して完成度を上げると、より付加価値の高いデータになる。)

…以上は、紙ベースのチェック項目だが、パソコン上でも考え方は同様である。

自己の成長を感じられる、楽しい“残業削減”

こうした個人レベルでのデスク回りの見直しは、ウオーミングアップ。その次は、グループでの効率・能率アップを考える。これには研修形式がよい。

手順としてはまず、1ヶ月分の業務と、それに要する時間の棚卸しをする。業務日報がある会社の場合、業務の書き出しは容易だ。

そして棚卸しした業務を、「緊急性」と「重要度」のマトリックスで分類する。これにより、忙しさの“質”を自覚し、より重要なことに時間を確保するスキルを会得できる。

研修では、各々の価値観も確認したい。例えば、「週に1回は早く帰って子供をお風呂に入れたい」、「夜は大学院で学びたい」、「もっと企画する時間を持ちたい」など、ただ残業を減らすだけでなく、何に時間を使いたいのかを明確にすることで、仕事に対するより自発的な意欲が期待できる。

こうして労働時間の質への意識が高まったところで、現場グループごとにミス・ムダの削減へつなげていくとよい。

――このように、各々が時間の価値をより高める意識を持ち、積極的に仕事に取り組める、スピード感のある爽やかな職場を目指しませんか? そうすれば、面倒と感じがちな残業削減への取り組みも、気分よく、楽しく感じられ、自己の成長をも感じられるものとなります。
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