働き方改革が進む中、人事評価制度に注目が集まっている。厚労省の“人事評価改善等助成金”も、このような動きを後押ししていると言える。
とはいえ、社長の評価がそのまま会社からの評価という会社や、明快な人事評価制度がなくとも、気持ちよくかつワークしているという会社など、様々であろう。筆者は、人事評価制度は、人を育て、会社の利益が上がる仕組みと捉えている。しかし果たして、この人事評価、実態はどうなのか。
評価をパワーに変える
ここに産業能率大学が行った興味深い調査結果がある。従業員数100人以上の上場企業に勤務し、部下を1人以上持つ課長を対象に行ったものだ(学校法人産業能率大学「第4回 上場企業の課長に関する実態調査」2018年1月)。

これを見ると、働き方改革の中心を担う中間管理職の苦悩が、ひしひしと伝わってくる。

課長のお悩みのトップは前回(2年前)、前々回(5年前)同様“部下がなかなか育たない”。気になる人事評価に注目すると、全体として2番目に“部下の人事評価が難しい”(前回調査比 4.5ポイント増)、9番目に“部下の人事評価のフィードバックがうまくできない”(前回調査比 4.5ポイント増)がくる。働き方改革推進の影響か、どちらも大きくポイントを伸ばしている点が見逃せない。

また、現在の仕事における役割に関して尋ねると、99.2%がプレイングマネジャーであり、マネジメント業務に支障を感じている割合が6割にものぼる。前述の人事評価を含め、部下に関する悩みが増加するのは必然なのかもしれない。

職場状況の変化については、働き方の多様化、外国人社員の増加が上位にあがっている。当然、課長は組織からの期待も高く、部下の育成も求められている。本人としてもそれは自分がやるのだと自覚していることだろう。だがこうした状況は、課長職にとってますます負担が増えている構図だ。

課長の悩みは組織の悩み

部下育成に関する悩みが多い中で、今後強化したい自身の能力は何かと尋ねると、“語学力”と“戦略的にものごとを考える力”が同率でトップ。ここでは“部下を育成する力”は4位となっており、今回のテーマである人事評価すなわち“部下を適正に評価する力”は、21項目中14位であった。

しかし、多くの課長が抱える“部下がなかなか育たない”という問題は、“人事評価が難しく”、“人事評価のフィードバックが上手くできない”、という点とリンクしているはずだ。抱えている問題と本人が強化したい能力との間に乖離があることを見るにつけ、現場任せでは限界があるように感じる。採用、教育、評価、成長という仕組みがきちんと組織的に動いているのか、以下の視点から改めて一つひとつチェックしてみる必要がありそうだ。

(1)査定のためだけの評価になっていないか?
(2)評価と教育が連動しているか?
(3)評価が給与と連動しているか?
(4)評価制度が現状に合わなくなっていないか?(バブル時代の昭和型のままになってはいやしないか)

如何だろうか。課長の望む能力アップ項目として人気のない“評価”能力だが、いざ必要なものを“選択”する場面になると、いかに“評価”が大切かが、身にしみて分かってくるのではないだろうか。

評価は選択の積み重ね、現実の把握

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