近年の環境変化の激しさや高年齢者雇用安定法、労働契約法の改正といった外的要因も加わって、人事制度改定のニーズが増えて来ています。ノウハウや知見の活用、社内リソースの関係から外部のコンサルティング会社へ依頼するというケースも多いのではないでしょうか。今回は人事制度改定をテーマに外部のコンサルティング会社のより良い活用法について考えてみたいと思います。

提案段階でいかに具体的な提案をしてもらうか

外部に人事制度改定のコンサルティングを依頼するときに企業が一番重用視するのは何でしょうか。やはり「個社の課題解決にマッチした具体的な内容になっているか」でしょう。人事制度については、少なくとも一般的な箱ものの仕組みをそのままあてはめても機能しないことは明白ですので、自社オリジナルにこだわるという事はある意味当たり前と言えます。
提案段階における一般的なプロセスとしては、複数の会社より提案書を作成してもらいその内容を吟味して、コンサルティング会社を選定するということになりますが、研修やセミナーと違って人事制度の提案書についてはなかなかなオリジナリティが出しづらく一般的な実施タスクの記載に留まってしまうケースも少なくありません。
「弊社の売りはカスタマイズです。御社に合った人事制度を導入させて頂きます。」という言葉とは裏腹に実際に出てきた提案書の内容を見ると一般的なプロセスとタスクが記載されているだけで具体的な内容に乏しいものだったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
第3回 コンサル会社活用にあたっての大切なひと手間とは
しかしながら、コンサル会社の立場からすると現状分析を実施していない状況では圧倒的にデータが不足しているので、そもそも具体的な課題の特定と解決のための仮説が設定できないということがあげられます。もちろん人事部門の方からヒアリングを実施し、それをもとに課題設定はしますが、報酬分布や評価データといった定量データの分析をしていない状況では、やはり限界があり、一般的な使い回しのような提案書にならざるを得ないという事情があります。

個社オリジナルの提案内容にするためには

それではどうすれば良いのか。現状分析のプロセスだけを1社に依頼し、その現状分析の結果を報告書として納品してもらい、その報告書をベースに入札形式にて各社に提案書の作成を依頼するようにすれば良いのです(現状分析を依頼したコンサル会社については、もちろんその後のプロセスを事前に説明しておく必要はありますが)。ゼロから各種データを加工して分析するというプロセスはさすがに工数がかかり過ぎてしまい、提案段階でそこまで各社に負担をかけるのは難しいかと思いますが、取り纏めた現状分析報告書を提供するという段取りまで踏めば、各社とも具体的な内容でその企業にあったオリジナルの提案書を作成してくるはずです。また、どれだけ個社のためにオリジナルの提案書を作成してくれるかで、コンサル会社の案件に対する本気度も測ることができるでしょう。
提案書の内容については、どれだけ具体的でオリジナルのものになっているかに加えて、評価者研修など制度構築後の運用支援について実施可能かどうか、本体の人事制度以外にも役職定年制度や再雇用制度といったサブシステムについても具体的な内容として盛りこまれているかも各社のケイパビリティを見る一つの指標になるのではないかと思います。

現状分析をするための費用は発生しますが、確信がないまま全てのプロセスを1社に依頼するよりも失敗しないコンサルティング会社選びのための先行投資と考えれば有益な支出といえるのではないでしょうか。さらに提案段階である程度、改定コンセプトの方向性について社内承認を取ることができれば、その後のコンサルティングのプロセスも非常にやり易くなります。コンサルティング会社をうまく活用する一つの手法として是非お試しください。


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