キャリアデザイン研修を実施・検討している企業は56.9%
調査結果によると、キャリア研修を実施している企業は29.8%、実施を検討している企業は27.1%で、実に6割近くの企業が実施・検討していることが明らかになりました。また、企業がキャリア研修を実施する対象者年齢についての調査では、30代が70.1%と突出し、次いで40代が53.3%となっており、若手社員、中堅社員に対し早期にキャリアデザインを行う企業が多いことが分かります。
企業を取り巻く環境変化とキャリアデザイン研修へのニーズ変化
最近人事部様などからご相談いただく研修プログラムの内容に、少し変化があらわれ始めています。例えば、2~3年前までは、50代以上の層に対する、いわゆる福利厚生の一環としてライフプランの要素も含んだキャリアデザイン研修のご相談を多くいただいていました。しかし最近は、まだ入社前の「内々定者・内定者向けのキャリアデザイン研修プログラム企画」、「20代~30代社員向けのキャリア研修相談」、といった若手人材にフォーカスした依頼内容が大変増えてきているのです。図2の調査結果でもその傾向が顕著に表れています。この動きは、まさに採用市場における企業側の苦悩を表していると感じます。
近年景気回復の兆しが見え始め、企業の採用意欲は上昇傾向にあり、厚生労働省の発表では平成28年9月の有効求人倍率は1.38倍、失業率も低下するなど、労働市場は求職者にとって明るい方向へと向かっており、より良い条件を求める人材で転職市場も活気があります。
一方で企業の採用担当者は手放しに喜べない状況です。少子高齢化の加速も影響し、多くの業界で深刻な人手不足が続いており、特に将来を担う若手人材の獲得競争が激しさを増す状況にあるからです。新卒採用の現場では、内定を出しても、辞退が続出し、採用見込み人数を大幅に割ってしまうという悲鳴に近い声を耳にすることも少なくありません。
この様に、今企業が若手人材へキャリアデザイン研修を実施する背景には、下記のようなことが例にあげられます。
◆「新卒者(内定者)に対し、入社への不安を自信に変えて、優秀な新卒人材を確実に獲得したい。」
◆「“若手社員向けの研修”を手厚くし、人材定着率を上げたい。」
◆「若手社員に対し早期にキャリアデザインを行い、目標を明確にし、仕事に対する士気を高めることで、組織強化、業績向上につなげたい」
研修を通じ人材育成を行うことは大前提としつつ、現在はそこに〝人材確保“という別の観点が生まれてきているようです。
キャリアデザイン研修実施で陥りやすい失敗
キャリアデザイン研修は、「自律的に自身の役割、業務目標を考えられる人材の育成をする」
「社内価値だけでなく、市場価値を向上させることの重要性を認識する」
「強みに自信を持ち、今後の強化点を認識する」
などを目的に実施されます。
前項でもお伝えしました通り、多くの企業が社員に対し、様々な目的でキャリアデザイン研修を実施しています。
しかし、キャリアデザインは描いたものの、“絵に描いた餅”になっているケースはないでしょうか?
研修で自分が目指すべきゴールが分かり、それに向けての行動目標を書く。研修直後はモチベーションも高く、描いた通りのプランを進めることでしょう。しかし数か月経ってみるとどうでしょう。日々の業務の忙しさなどもあり、徐々に研修直後の気持ちの高まりも薄れ、1年後にはすっかりプランは止まっていることが多いのではないでしょうか。
どんなに素晴らしい研修内容を、どんなに素晴らしい研修講師が行ったとしても、1回限りの実施で劇的な変化が表れる、ということはほぼ無いに等しいと言えます。ではどうすれば、キャリアデザイン研修の内容を活かし、人材開発を成功させ、企業の発展に繋げていくことが出来るのでしょうか。
キャリアデザイン研修を“絵に描いた餅”で終わらせないために
キャリアデザイン研修を“絵に描いた餅”で終わらせないためには、研修実施後の継続的なフォローアップを行うことが大変重要です。フォローアップがなければ研修効果は薄れ、結果は得られず、せっかくの研修が無駄になってしまいます。ここにキャリアデザイン実施後に行うと効果的なフォローアップの例をご紹介します。
■研修実施後に研修のアウトプットとしてキャリアプランニングシートを持参し確認
(社内外カウンセラー共通)
■社内事情・業務を良く知るカウンセラーが、具体的な社内キャリアパスに関する相談を受ける
(社内カウンセラー)
■ラポールを構築して社内で相談できないような本音を引き出し、早期解決につなげる
(社外カウンセラー)
■設定したキャリア目標について、定期的に進行状況などを確認する場を設け、キャリア成長のサポートを行う
■対象者だけでなく、上司に対しても長期的なキャリア開発の必要性を認識させることで、適切な導きを与えられる環境をつくる
<ポイント>
社員に対し研修を実施し、キャリアデザインの重要性についての理解が深まっても、上司がそれを理解していなければ効果を得られるどころか逆に社員のストレス要因になってしまいます。キャリアデザイン研修を実施するときは、管理職に対しても研修等を通じて理解・認識を合わせることが非常に重要です。
キャリアデザイン研修は点ではなく、線・面で効果を考える
人材開発によって企業が成長するには、社員のキャリア目標を正確に把握し、目標達成の過程と企業の方向性を一致させ、能動的にかつ継続的にキャリア開発へのフォローアップを行うことが不可欠です。そうすることで社員の仕事への満足度も上がり、定着率も向上します。そして従業員満足度は高く、定着率の良い企業は新卒者、求職者にとっても魅力的に映り結果、採用率の向上=人材確保へとつながる、ひとつのきっかけになるのではないでしょうか。この様に全く違った分野の課題のように思えるものでも、全てつながりを持って考えることで、一つひとつ実施する課題解決策の効果が最大化、倍増化していくことがあります。
研修はあくまでもひとつのきっかけです。その後のフォローアップも含めた総合的なキャリアマネジメント施策を構築することが、キャリアデザイン研修実施の本当の価値を得ることになり、企業の発展へとつながります。
キャリアデザイン研修を企画される際は、ぜひ、『点ではなく、線・面で効果を考える』ことを意識してみていただければと思います。
マンパワーグループは1966年の設立以来、長年キャリア開発に関するノウハウを蓄積し、人事制度構築・改訂、研修企画・実施、定着支援など多岐にわたるサービスをワンストップで提供してまいりました。総合的な人材開発の施策構築にご興味がございましたら、是非一度お気軽にお問合せください。
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