内定者フォローは接触頻度をアップ

[図表6]で見たように、まだ採用活動を継続している企業が全体で5割、大企業ですら4割もある中では、内定式を無事に越えることができたと言ってもまだ油断はできません。内定先企業へ就職することについて、何らかの不安が残っている限り、別の企業からの誘いや内定を受け入れ、これから内定辞退が発生することも十分に考えられます。現に、私の知人の子どもも、12月に新たな内定を受け、10月の内定式に出席した企業の内定を辞退したと聞きました。

では、企業はどんな内定者フォローを考えているのでしょうか。既に実施した、あるいはこれから実施を予定している内定者フォローの内容(複数回答)について確認しました。最も多かったのは「対面での内定者懇親会」(68%)、次いで「定期的な連絡」(45%)、「対面での若手社員との懇親会」(40%)などが実施されるようです[図表8]。また、「eラーニング・通信教育」(26%)、「入社前集合研修」(22%)など、成長意欲の高い近年の学生に向けて早くも研修を実施する企業も2割を超えています。遠方の学生や、多忙な理系学生に配慮して、「オンラインでの内定者懇親会」(32%)や「オンラインでの若手社員との懇親会」(20%)など、対面型だけでなくオンラインを活用する例も少なくありません。

内定辞退理由のフリーコメントで紹介したように、就職先の最終決定においては、両親をはじめとした家族の意見の影響は決して小さくありません。「オヤカク」は、選考段階だけでなく、内定後においても軽んじてはいけない時代にはなっていますが、「保護者向け資料送付」は4%、「保護者向け企業説明会」に至ってはわずか1%など、実際にはそれほどの対策は実施されていないようです。
[図表8]2025年卒採用で実施する内定者フォロー(複数回答)
内定者フォローについて寄せられたフリーコメントを抜粋して紹介します。懇親会、面談、社内イベント、アルバイトなど、内定者との接触頻度を増やした企業が多いようです。

・施策は前年同様ですが、接触頻度を増やしました(301~1000名、運輸・不動産)
・社員との面談をWEBから対面へ変更(1001名以上、メーカー)
・まめに連絡を取り合っています(300名以下、メーカー)
・個別面談を定期的に実施(301~1000名、メーカー)
・2カ月に1回対面でのミーティングを行うようにしている(300名以下、運輸・不動産)
・入社までの接点を増やした(301~1000名、商社・流通)
・選考段階、内定段階で人事との1on1を実施した(1001名以上、情報・通信)
・社員事業部対抗&内定者も参加しての「ボッチャ大会」を実施したところ、意外に盛り上がりました(301~1000名、商社・流通)
・実際にアルバイトとして勤務できる仕組みを取り入れた(301~1000名、サービス)
・以前は内定式を兼ねた役員との食事会を実施していたが、格式高い雰囲気が当社の実際の雰囲気とは合っていなかったため、今年度は若手社員など年齢が近い社員との食事会に変更した(300名以下、情報・通信)
・若手交流会、懇親会の数を増やす(301~1000名、情報・通信)
・オンラインでのグループワーク(301~1000名、メーカー)
・内定者向けに専用のポータルサイトを開設し、会社の最新情報や業務に関する資料、FAQなどを提供しています。また、ポータルサイトを通じて内定者同士のコミュニケーションも促進しています(300名以下、メーカー)
・社内のイベント見学(1001名以上、情報・通信)

中堅企業は「大学対策」と「ダイレクトリクルーティング」に苦労

2025年卒採用で苦労したことを複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「ターゲット層の応募者を集める」55%、次いで「応募者の数を集める」52%で、この2項目だけが半数を超え、3位以下の項目と大きく開きがあります[図表9]。ほかには、「内定者フォロー(内定辞退抑制)」(26%)、「応募者フォロー(選考辞退抑制)」(20%)といった、辞退抑制を挙げる割合が比較的多くなっています。

従業員規模別で見ると、大企業では「ターゲット層の応募者を集める」が70%と圧倒的に多く、単に「応募者の数を集める」は22%にとどまるなど、他の従業員規模とは異なる結果となっています。数を集めるだけなら苦労はしないが、自社の求めるターゲット層について充足することには腐心しているというのが実態のようです。こちらと全く逆の結果となっているのが中堅企業で、「応募者の数を集める」が72%と突出しており、「ターゲット層の応募者を集める」は44%となっています。ターゲット層にこだわる前に、まずは数を集めたいという様子がうかがえます。一方、中小企業は「ターゲット層の応募者を集める」と「応募者の数を集める」はともに54%で並んでおり、大企業と中堅企業の中間となっています。中小企業よりも、中堅企業のほうが「応募者の数を集める」ことを課題と認識している割合が多いことは、興味深いところです。

そのほか、従業員規模別の特徴を見てみると、大企業では「理系採用の強化」(26%)が他の2倍以上の割合となっています。中堅企業では「大学との関係強化」(31%)と「ダイレクトリクルーティングの実施」(25%)が、他の従業員規模の2倍以上になっています。規模による課題の違いがうかがえます。
[図表9]2025年卒採用で苦労したこと(複数回答)

「入社前」に配属先伝達が約6割

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