日本人駐在員の心得

稲垣 日本人が海外駐在をする際、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。

ブライアン まず大事な前提として、駐在員の方々は“特別に選ばれた人間”として海外に行かれるわけですよね。しかし、そうした認識や振る舞いをしていない方がほとんどです。研修をやるとき、多くの方は周りを見ず、挨拶もしないで自分のところにこっそりと座って待っているだけ。ですから「みなさんは駐在員として特別に選ばれた人間でしょう? いま部屋に入ってきたとき、あなたがとった行動は、それにふさわしいものだったでしょうか」と、みなさんが部屋に入った瞬間から指摘するようにしています。

やっぱり、現地に行かれる駐在員の方は、“見られて”いるんです。どんな表情で、どのように現地の人とコミュニケーションを取るかを。そして現地の人は、そこから会社全体の雰囲気や文化はもちろん、いい会社かよくない会社かまで感じ取ります。駐在員の方の何気ない振る舞いが、現地の人をそこまで左右するのです。

また、多くの赴任者は、現地で初日に行う自己紹介で「英語がまだ上手ではありません。何も知らないので助けてください」などと言います。このような挨拶を、現地の人は心の中で「え? 高い給料が払われてる、特別に選ばれた人がこんなことを言うの!?」と受け止め、決していい印象を与えません。いい印象を与えるためには、「最初にどのように自己紹介をするべきか」といったところから考えておくことが重要です。

駐在員はリーダーです。日本で働いているときは“one of many”でも、海外に行くと“you are special”、“you are chosen”なのです。ですから、National staffの気持ちをきちんと理解して、「自分は駐在員としてここに来る意味があるんだ」というアピールをしないと、なかなかいい関係は作れないわけですね。

私自身、海外で働くことの大変さは身をもって知っていますが、海外に出た日本人にも、ぜひ頑張ってほしいと思っています。チームワーク、協調性、良いコミュニケーションを重視する日本人であれば、きっとそれができると私は信じています。
第7回:海外に拠点を置く日本本社や海外駐在員に求められること

インタビューを終えて

このインタビューをきっかけに、ブライアンさんとはイベントや講演会で一緒に登壇することが多くなった。彼は日本人と外国人両方の心情を理解しているので、講話には説得力があるし、日本語も非常に流暢で聞きとりやすい。登壇回数も多い方なので、機会があれば講演会などのご参加をお勧めしたい。

>>コンテクスト参考記事:「海外進出企業の『人と組織の活性化』~インドネシアに架ける熱き想い~」第7話 インドネシアにおける従業員教育で失敗しないためのポイント
第7回:海外に拠点を置く日本本社や海外駐在員に求められること
取材協力:Bryan Sherman(ブライアン・シャーマン)さん
グラマシー エンゲージメント グループ株式会社 代表取締役

97年に富山県黒部市役所「国際交流員」に就任後、99年ニューヨーク市にて日系企業向け人事コンサルティング会社入社。04年、米国住商情報システムズ株式会社入社、人事総務部長。07年株式会社ファーストリテイリング入社。東京本社人事部にてグローバル人事戦略業務に参画、欧米露アジア拠点の人事マネジメント業務に従事。 国内外で、企業の内と外から日本企業の抱えるグローバル人事課題の解決にあたる。

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