時代遅れの評価

日本の人事制度の背景には、いまだに根強く年功的な考え方が残っています。例えば多くの会社では、40代や50代よりも新入社員や20代社員の給料が低くなっています。この裏側には、日本独特の文化である、年齢を基準とした「タテ社会」の考え方が染みついているのです。

昔から日本は「家」を主体としたコミュニティ型の社会を築いてきました。企業でも「うちの会社」、「うちの部署」というように、「うち」という言葉で自分の所属するコミュニティを表現することがあるでしょう。コミュニティでは、何かあれば最も経験豊富な年長者に助言を求めることが一般的でした。学校や部活でも年上の人を「先輩」と呼びます。欧米のように、年上の人をファーストネームで気軽に呼ぶことはまずないでしょう。こうした日本独特の文化があるため、これまでどんなに人事制度を変えても年功的な考え方が残ってきたのです。

こうした年功的な文化背景が根強くあるにも関わらず、日本企業では欧米をまねて成果主義を取り入れてきました。成果主義人事制度の導入は、当初はパフォーマンスを上げることに一定の効果を発揮したものの、すぐに年功的な運用に戻ってしまいました。現代の日本企業では、表向きは成果主義と謳っているにもかかわらず、年功的な評価を続けたことで、目的が形骸化している評価制度が存在しています。

また、日本企業の多くは年度評価を取り入れています。年度初めに1年間の目標を設定し、6ヵ月を過ぎた頃に中間レビューを行って、年度末に評価を確定する取り組みです。しかし変化の激しい現代では、年初に設定していた目標が2~3ヵ月たつと変更せざるを得ない状況が存在しています。そもそも目標としていたことがなくなってしまうことも度々あります。そのため多くの日本企業では、年次評価に対する納得感や妥当性が薄れてきているのです。

このように、日本企業における評価制度は多くの場合、時代遅れとなってしまっているのです。

令和の評価制度はこう変わる

では、これからの評価制度はどうなっていくべきなのでしょうか。今後のトレンドを予想してみました。

個別評価よりもチーム評価
まず、評価制度が企業ごとに、より複雑化していくことが考えられます。リモートワークが普及する現代では、企業によってはよりチームで働くことを重視するようになるでしょう。会社という物理的な空間でのつながりが薄れるため、あえてチームで働くことで会社としての一体感を求める企業が増えると考えられます。そのため、個人に対する評価よりも、チームに対する評価を重視する企業が増えることが予想できるのです。

成果に対する評価
リモートワークが普及すると、仕事のプロセス管理が難しくなります。逆に言えば成果さえ出せば、いつどのように働いてもよい、自由な働き方へ徐々にシフトしていくと考えられます。そのため、生産性を高めたい企業を中心に、真の意味での成果主義が広がっていくでしょう。これまでの成果主義は実際のところ年功制でしたが、今後の成果主義は、本当の成果に見合った対価を支払う仕組みへとシフトしていくことが予想されます。

評価の廃止
少し前に話題になったノーレーティングのように、評価自体をやめる企業も増えるかもしれません。変化の激しい現代では、目標を立てて評価するサイクルがどんどん短くなっています。目標が頻繫に変わるのであれば評価制度を廃止し、会社の業績に応じて原資を分配する方が、従業員にとっても納得感があるでしょう。

日本企業は、時代遅れになった評価制度を大きく変える時に来ています。そもそも現在の人事制度は今回ご紹介したように、1950年代に始まった年功制を基本としています。年功制の誕生から70年が経過し、成果主義の導入からも20年が過ぎています。令和時代に、企業はいま新たな評価制度を導入する必要に迫られているのです。
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