日本本社の役割

稲垣 日頃、日本本社にいる人事の方々から「海外の拠点をどのようにフォローしたらいいか分からない」という声を聞きます。同時に、駐在員の方々が本社人事のフォローに満足していないことが多いのも感じています。つまり、行き違いが多い。どうしてこうなるのでしょうか。

ブライアン よくある課題と言えますね。本社の人間が、はっきりしたスタンスを持たずに海外拠点へ行き、「サポートしますので情報をお願いします」と言っても、関係は良くなりません。駐在員からすると、そのような抽象的なことを言われても、伝えた情報が社内でどのように使われるか分かりませんし。

また、そうした本社の人が、何かの依頼に対しスピーディーに答えない、もしくは「日本じゃないから分からない」などの回答を重ねていくと、駐在員は何も期待できなくなっていきます。このような現象をたくさん見ています。こういう現象を減らす、もしくはなくすためには、まず海外のビジネスに対して、本社が“本社のスタンス”を決めないといけません。

そのスタンスには、大きく3つのカテゴリーがあります。1つ目は「トップダウン」、2つ目は「コラボレーション」、3つ目は「関わらない・こだわらない」というものです。この3つのスタンスを、内容ごとに使い分けていきます。

1つ目の「トップダウン」は、簡単に言うと「我々は本社なので指示に従って行動してください」ということ。たとえば、「理念の浸透」などはこのカテゴリーに入ります。つまり、「本社はこういう理念を大事にしており、全世界共通言語にするので、この理念に基づいてちゃんと行動してください」ということですね。

2つ目の「コラボレーション」は、「理念の定義や行動レベル、導入プロセスは国や地域ごとにアレンジするので、一緒に作っていきましょう」というスタンスです。さきほどの「本社が指示命令を出すスタンス」と、この「一緒に考えましょう」というスタンスでは、必要なコミュニケーションの違いがあるわけですね。

3つ目の「関わらない・こだわらない」は、「もし現地の方で相談があればしてください。我々が手伝います」というスタンスです。もしくは、「現地の取り組みを浸透させるためにリソースが必要なのであれば、我々がリソースを提供します。ただ、現地から特にリクエストがなければ、本社は何もしませんよ」とも言えます。

こういう3つのスタンスで、本社のコミュニケーションの取り方を決めることが重要です。こうやって本社からのガバナンスを効かせることができている日本本社は、まだまだ少ないという危機感を持っています。

日本人駐在員の心得

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