大企業の8割強、中小企業も6割以上は採用活動をほぼ終了
9月下旬現在での採用活動の状況を聞いてみたところ、大企業では「終了」した企業が71%、「(留学生などの)一部を除きほぼ終了」した企業が11%と8割以上の企業が終了している。一方、中堅企業では「終了」58%、「ほぼ終了」16%で合計74%、中小企業では「終了」56%、「ほぼ終了」8%で合計64%と、企業規模が小さいほど終了している企業は少なくなる。
中堅企業の4社に1社、中小企業の3社に1社はまだ採用活動を継続しており、まだ内定のない学生にもあきらめずに就活を続けてほしいところである。
図表1:2014年新卒採用活動の状況
3月までの採用活動を覚悟する中小企業
採用活動の終了時期(予測含む)では、当然前問の結果とリンクしており、「ほぼ終了」としていた企業のほとんどは「10月」に終了すると見込んでいる。今後の予測では、中堅企業のほとんどの企業は年内で採用活動を終了するとしているのに対して、中小企業では2割近くが年明け以降も継続すると予測しており、「3月」まで継続すると考えている企業が4%となった。なお、大企業の中にも「3月」までを覚悟する企業がないわけではない。規模だけでなく、業種による人気・不人気の差は大きそうである。
図表2:2014年新卒採用活動の終了時期
内定充足率90%以上の割合は大企業、中堅企業で6割超
採用計画数に対する内定充足率を聞いたところ、大企業の61%、中堅企業の60%は内定充足率が90%以上。充足率が70%以上で見ると、大企業は92%に達するのに対して、中堅企業は81%と10ポイント以上の差がある。
中小企業は内定充足率70%以上でようやく6割に達する。充足率90%以上では48%と5割に満たない。
図表3:内定充足率(全体)
採用活動を「終了した」企業と「継続中」の企業による違いも見てみよう。「(ほぼ)終了した」企業では、大企業の84%、中堅企業の85%が内定充足率90%以上。逆に言えば、15%程度の企業は、内定者数が採用計画を下回っているにも関わらず「終了した」わけである。厳選採用は今年も継続されている。
図表4:内定充足率(終了企業)
「継続中」企業を見ると、充足率「70%以上」は大企業の63%、中堅企業の54%あるものの、中小企業では27%しかない。「50%未満」の企業の割合は、大企業で25%、中堅企業で38%、中小企業では実に53%と過半数もある。
図表5:内定充足率(継続企業)
既卒者の受け入れは大手先行
既卒者を新卒枠で選考し、内定者が出たかどうかを聞いたところ、企業規模による違いが鮮明に出た。既卒者の内定者が出たと答えた企業は、大企業36%、中堅企業22%、中小企業10%と、大手企業の方が割合が高い。
図表6:既卒者の新卒枠選考の状況
既卒者の内定者割合は5%未満
内定者に占める既卒者の割合では、どの従業員規模も9割前後が「10%未満」と回答。ただし、「5%未満」となると規模による差異がみられる。中小企業61%、中堅企業69%に対して、大企業は79%にも及ぶ。政府の要請を受けて、既卒者の受け入れをしているものの、必要最低限の数字でクリアしようとする姿勢がうかがえる。
図表7:内定者に占める既卒者の割合
中小企業は「大いに満足」と「大いに不満」の2極化
内定者の質、量について満足度を聞いたところ、中小企業53%、中堅企業59%、大企業68%と、「まあまあ満足」とする企業の比率は企業規模が大きいほど高いものの、「大いに満足」となると感想は一転する。大企業2%、中堅企業7%、中小企業11%と企業規模が小さいほど満足の比率が高くなっている。大企業の満足度のハードルが高いのかもしれないが、中小企業でも合わせて60%以上の企業が「満足」と答えており、中小企業にも人材が流動していることをうかがわせる。
ただし、「大いに不満」とする企業の割合も中小企業が最も高くなっていることには留意したい。
図表8:内定者の質、量についての満足度
大企業では外国人採用を減らす企業も多い
グローバル人材採用として、多くの企業が外国人の採用を積極化しているとの報道が目立つものの、今回の調査では若干異なる傾向となった。中堅企業では「減っている」5%に対して「増えている」13%と増加傾向がみられるものの、大企業に目を移してみると状況は異なる。「増えている」が9%に対して「減っている」が12%と、「減らす」企業数の方が上回っている。
ただし、外国人を採用する企業の割合としては、大企業53%、中堅企業45%、中小企業8%と大企業が最も多くなっている。中小企業での外国人採用の浸透には、まだまだ時間がかかりそうである。
図表9:外国人の採用数の対前年比
留学経験のある日本人学生ニーズは高まる一方
外国人採用の状況と大きく違うのが留学経験のある日本人学生の採用ニーズである。採用数は「(前年と)変わらない」とする企業は多いものの、「増えている」企業と「減っている」企業の割合はどの企業規模でも「増えている」が大きく上回っている。大企業では「増えている」17%、「減っている」2%、中堅企業では「増えている」15%、「減っている」7%、中小企業でも「増えている」12%、「減っている」2%といった具合だ。
異文化にも触れたことのある日本人学生の方が、コミュニケーションや日本文化理解の点で、外国人よりも使い勝手がよいとの思いが強いのであろう。年々海外留学生が減り続ける中で、争奪戦は激しさを増す一方となる。国としての効果的な留学生アップ施策の実施が待たれる。
図表10:海外留学経験のある日本人学生の採用数の対前年比
内定辞退者の増減は企業により大きく異なる
内定辞退者の増減では、「同程度」とする企業が37%と最も多く、次いで「昨年よりも少ない」とする企業が27%、「昨年よりも多い」とする企業が24%となった。辞退者が減った企業と増えた企業ともにそれなりの割合になっており、一概に傾向を論ずるには厳しそうだ。ただ、「かなり少ない」と「かなり多い」の比較では、「かなり少ない」13%に対して、「かなり多い」は5%しかなく、辞退者は減少傾向であったといってもいいかもしれない。
図表11:内定時辞退者数の対前年比
内定取得ですぐに就活をやめる学生
今年4月末に実施した学生向けの調査では、「第一次志望の企業から内定は出ていないが就活を終了する」学生が、前年よりも増加傾向にあることが見受けられた。
今回、企業に今年の内定者の特徴についてのコメントを求めたところ、
「内定連絡後、直ぐに就活終了する学生が多い」(情報処理・ソフトウェア)
「追加募集をしている企業が少ないためか、内定を出したらすぐに承諾をもらえるケースが目立った」(百貨店・ストア・専門店)
と、それを裏付けるかのようなコメントが見られた。
ただし、全体の中ではまだ少数派であり、
「内定をもらっても満足せずに就職活動を続ける学生が増えた」(商社)
「会社の回答期限に対して、できるだけ時間稼ぎをしようという傾向が強くなっている」(その他サービス)
といった声もある。
また、多くの企業から
「志望がはっきりしない、あるいは明確な意思がないまま選考を受けている学生が増えている」(マスコミ関連)
「企業・仕事への理解が浅い。同業界よりも全く違う業界とのバッティングも多かった」
等の意見があった。結果、判断軸がぶれているため、内定後も決断できない学生が多いのであろう。選考の中で、学生の志望を高めていくような機能がより求められる時代になっている。
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年9月17日~30日
有効回答:210社
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