多彩な内容なのでレポートを2回に分け、今回は2013年度新卒採用の結果を報告し、次回は2014年度新卒採用について解説したい。
全体の7割が終了している2013年度新卒採用
2013年度新卒採用が9月上旬時点で終了した企業は全体の69%だが、規模と業種でばらつきが大きい。非メーカーよりもメーカーの方が早期に終了しており、規模が大きいほど早い。
メーカー「1001名以上」は「終了した」が60%、「一部(留学生など)を除き、ほぼ終了した」32%であり、合計92%に達している。ほとんど終わっているという数字である。
ただ規模が小さくなると、(ほぼ)終了したのは「301名~1000名」が71%、「300名以下」が62%と、まだ採用を継続している企業企業が多い。
非メーカーでは「1001名以上」でも(ほぼ)終了したのは75%に過ぎず、メーカーに比べて継続中企業が多い。「301名~1000名」が62%、「300名以下」が72%と、中堅企業で継続中の企業が多くなっている。
【図表1】9月上旬現在での採用活動状況(メーカー規模別)
【図表2】9月上旬現在での採用活動状況(非メーカー規模別)
5月から9月までに集中する採用活動の終了時期
月別に採用活動の終了時期(予定含む)を質問したところ、「2012年3月以前」という回答は皆無だった。倫理憲章は「4月からの選考開始」を謳っているが、「4月」で終了した企業は少なく、4%。5月から9月までが10%台で終始している。ただし9月で全体が終わっているわけではなく、「10月~3月まで」とする企業が22%、「その他」が3%もあり、中堅、中小企業の採用活動は長期化している。
規模別でみると、「1001名以上」では7月までに6割が終了し、9月までで9割が終了(予定含む)している。「301~1000名」では7月までに終了した企業は半数に満たず、9月までで7割の企業が終了すると見込む。「300名以下」では7月までに終了した企業は4割に過ぎず、終了月として最も多かったのが「8月」の23%だ。9月までには「301~1000名」と同程度の7割の企業が終了すると見込む。
【図表3】採用活動の終了時期(予定含む)(全体、規模別)
苦戦を通り越して9%が惨敗した小規模企業
9月上旬現在の「採用計画人数に対する現在の内定者数」は、規模別でばらつきが大きい。適正と考えられる「90~110%未満」は、「1001名以上」では64%だが、「301~1000名」では35%と3分の1に過ぎない。「300名以下」では48%と、「301~1000名」よりも検討している。中堅企業は、大手企業との内定者の争奪戦で苦戦しているものと思われる。なお、「300名以下」では「0%」が9%もある。苦戦というより惨敗の様相だ。
その一方で「110~130%」「130~150%」「150%以上」の回答は規模が小さいほど大きくなっているが、内定辞退者対策のために多めに内定を出している場合、採用計画数が少ないと1人のウェイトが大きくなるためであろう。
【図表4】採用計画人数に対する現在の内定者数(全体規模別)
82%の企業が既卒者の新卒枠採用を実施したが、内定を出した企業は12%
厚生労働省は「青少年雇用機会確保指針」を2010年に改正し、卒業後3年以内の既卒者を「新卒枠」で採用すべきとしている。この既卒者の新卒枠採用については、多くの企業が選考の受け入れを実施している。
「新卒枠」で採用選考しなかった企業は全体の17%、「その他」が1%あり、全体の82%が既卒者を新卒枠で採用する道を開いている。
ただその結果は厚生労働省の期待に反しており、内定者が出たのは全体のわずか12%に過ぎない。「選考中、または選考はこれから」も5%にとどまっている。
最も多いのは「新卒枠で採用選考したが内定に至らなかった」であり、全体の40%。「新卒枠での既卒者応募がなかった」も多く、25%だ。規模別、業種別の違いはあまりない。
【図表5】既卒者の新卒枠採用(全体)
新卒枠で内定を出した既卒者の比率は業種規模でばらつき
既卒者の新卒枠採用は、どの程度なのだろうか? 「新卒枠で内定を出した既卒者の比率」という設問では、業種規模別の違いが出る。
予想通り既卒者採用は少なく、全体の「5%未満」は56%と過半を占め、「5~10%未満」が22%だ。「10~20%未満」は11%、「20~30%未満」が7%、「30%以上」4%と続く。
しかし、業種規模別では異なっている。メーカー、非メーカーともに「1001名以上」の企業規模では、「5%未満」がメーカー67%、非メーカー50%と多い。ところがそれより小さい企業では「10~20%未満」がかなり多く、非メーカーの「300名以下」では「20~30%未満」と「30%以上」が3割に近い。ただし、採用数自体が少ない場合、1人のウェイトが高くなるためであろう。例えば、全内定者が5人の場合、うち既卒者が1人いれば20%になってしまう。
【図表6】内定者に占める既卒者の割合(メーカー規模別)
【図表7】内定者に占める既卒者の割合(非メーカー規模別)
メーカー「1001名以上」の企業は過半数が外国人を採用
グローバル人材に関する論議が熱くなっているが、外国人採用は進んでいるのか?
この問いに対し、今回の調査では外国人採用には業種規模により差異があるという結果になった。
規模が大きいほど外国人採用は進んでおり、非メーカーよりもメーカーの方が熱心である。
メーカーでは「300名以下」では92%が「採用していない」だが、「301名~1000名」になると「採用していない」は75%と少なくなり、「1001名以上」では半数を割る48%である。つまり52%は外国人を採用しているということになる。しかも内訳を見ると、「5%未満」が多いけれど、圧倒的に多いわけでなく、「5~10%未満」「10~20%未満」「20~30%未満」「30%以上」がかなりある。
非メーカーはメーカーに比べると、かなり外国人採用企業は少ないが、「1001名以上」では25%が採用し、「301名~1000名」では16%が採用し、「300名以下」でも10%が採用している。
【図表8】内定者に占める外国人の割合(メーカー規模別)
【図表9】内定者に占める外国人の割合(非メーカー規模別)
急増しているわけではない外国人採用
外国人採用は広がっているが、急増しているわけではない。メーカー、非メーカーの規模別データを見ると、外国人の採用計画数は「減っている」が「増えている」よりも多くなっており、「増えている」が多いのはメーカーの「1001名以上」の企業だけだ。メーカー「1001名以上」で「減っている」は12%であるのに対し、「増えている」は24%とタブルスコアになっている。規模の大きいメーカーが外国人採用に前向きであることがわかる。
外国人採用が大きく広がっているかのような報道もあるが、現地法人での採用を含めてのことであり、日本法人だけに限定した場合、大手メーカーを除けばそれほど外国人採用が増えているとは言えないようである。
外国人採用に関する人事のコメントを読むと、外国人留学生対象の合同説明会を利用する企業もあるが、多くは「日本人と同じ採用手法でフラットに評価している」「一般と同様に募集を行い、外国人可として求人票を出している」など、自然体で留学生に接する企業が多いようだ。
【図表10】外国人採用の増減(メーカー規模別)
【図表11】外国人採用の増減(非メーカー規模別)
海外留学経験者が多い大企業の内定者
海外留学を経験した学生は語学力が評価されるが、内定学生のどの程度が海外留学を経験しているのだろうか?
留学経験者採用比率の調査データを読むと業種の差は小さいが、規模別で大きな違いがある。規模が大きいほど留学生採用比率が大きく、小規模になると比率は小さくなる。
「1001名以上」の企業の3分の2は海外留学経験学生を採用しているが、「300名以下」になると留学生経験学生を採用する企業は4分の1に過ぎない。
ただ企業のコメントを読むと、「海外留学は採用基準ではない」とする企業が多く、海外留学経験者を優遇して採用している企業は少ない。結果的にこういう数字になっているものと思われる。おそらく留学経験のある学生は、自分の強み(語学力)が生かせそうな企業に応募し、そういう企業は規模が大きいことが多いということではないだろうか。
また海外留学する学生は、前に踏み出す力が強く、評価が高くなるので、採用されることが多くなるとも考えられる。
【図表12】内定者に占める日本人留学経験者の割合(全体規模別)
減少気味の内定辞退者。女子学生に高い評価
採用担当者を悩ませるのが内定辞退だが、内定辞退は年によってかなり変動する。2013年度新卒採用ではどうだったのか?
企業規模で数字は変わるが、「かなり少ない」「やや少ない」と「やや多い」「かなり多い」を比べると、どの企業規模でも「少ない」が「多い」を数ポイント上回っている。
内定辞退の理由については、当たり前だが「他社への内定」が圧倒的だが、「マンパワーが足りず、採用業務以外の業務で採用に手が回らなかった」と反省する人事担当者もいる。また「決まった時点で就活のエネルギーがなくなっている感じがする」と学生のパワー不足を指摘する声もあった。
内定学生の特徴として、例年と比べて感じたことを問うたフリーコメントでは「学力レベルが高い」「意欲とバイタリティがある」と高く評価する声もある一方、「業界・企業理解が進んでいない」「小粒」「おとなしく特徴が少ない」「覇気・目的意識・積極性に劣る」と批判する採用担当者もいる。
一方、女子学生への評価は高い。「女子学生全般の意識が大変高く、全員がポジティブ」「男子学生の草食化。女子学生の期待以上の優秀さ」と絶賛する採用担当者がいる。かつて「男らしい」「女らしい」という言い回しがあったが、現在は意味が逆転しているように思う。
【図表13】内定辞退者の増減(全体規模別)
内定者フォローの施策。定番は「内定者懇談会」
学生に内定を出した後に行う施策が内定者フォロー。「内定者懇親会」(74%)、「定期的な連絡」(62%)の2つは定番となっている。
「若手社員との懇親会」も45%と3番目に多く、入社後の自分をイメージしてもらえるし、先輩、後輩という関係作りにも役立つ。
以下多い順に項目を上げると、「eラーニング・通信教育」41%、「社内報の送付」40%、「入社前集合研修」30%、「経営者・役員との懇親会」29%、「課題提出」24%、「内定者サイト・SNS」と「社内行事への参加」が19%である。
いずれもコンタクトを絶やさないことが重要だが、企業の中には「内定者フォローは極力実施せず、自由に学生生活を送ってもらうことをモットーにしている」という意見もある。これは1つの見識として評価できる。
「内定者サイト・SNS」は19%にとどまっているが、こちらは規模による差が激しい。内定者数が多い「1001名以上」では48%とほぼ半数の企業が導入している。「301~1000名」では18%、「300名位以下」では7%に過ぎない。これまでは内定者への一斉連絡やアンケートの実施に利用されることが多かったが、内定者同士や内定者と企業のコミュニケーションの場として考えた場合、内定者数の多寡には関係なくなることから、今後はもっと増えていく可能性が高い。ただ人事のコメントには「内定者SNSをやめて人事とのマンツーマンでのコミュニケーションを重視している」という声もある。
【図表14】内定者フォローの施策(全体)
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年9月3日~12日
有効回答:233社(メーカー89社、非メーカー144社)
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