人事評価もそのひとつである。テレワーク下では「従業員が実際に勤務している様子を直接確認できない」という大きな変化があり、オフィス勤務を前提とする評価方法とは異なる人事評価の在り方が求められている。本レポートでは、各企業のテレワーク下における人事評価の実態や今後の方針等について、フリーコメントを含めて紹介する。
<概要>
●人事評価制度は「成果重視派」が8割
●テレワーク下における人事評価、出社時より困難と感じる企業が7割以上
●テレワーク下の適正な人事評価のための取り組みは「面談機会の増加」が最多
●テレワーク対応の人事評価制度への変更、「変更済み」「検討中」を合わせると約半数
●テレワーク下の望ましい評価方法、「成果重視派」が8割
人事評価制度は「成果重視派」が8割
まず、企業が採用している人事評価の方法について実態を見ていこう。「採用している人事評価の方法」については、「業績評価(KGI:目標の達成度)」が最多で71%、次いで「行動評価(目標達成のための行動)」が68%、「能力評価(能力やスキル)」が63%などとなっている。一方で、「バリュー評価(自社の価値観や行動基準)」(14%)、「360度評価(多面的評価)」(11%)を採用している企業はともに1割程度にとどまった(図表1-1)。
次に、「自社の人事評価制度において重視されている点」については、「成果に重点を置きつつ、成果とプロセス両面をバランスさせている」が最多で57%、次いで「主に仕事の成果で評価」が24%、「プロセスに重点を置きつつ、成果とプロセスの両面をバランスさせている」が13%などとなっている。「主に仕事の成果で評価」と「成果に重点を置きつつ、成果とプロセス両面をバランスさせている」を合わせた「成果重視派」は81%となっており、目的達成のための行動等のプロセスは加味しつつも、成果に重点を置く評価制度が主流であるようだ(図表1-2)。
企業規模別で見ると、従業員規模301~1,000名の中堅企業では「主に仕事の成果で評価」との回答が極端に少なく、3%にとどまっている。「主に仕事の成果で評価」と回答した企業の割合は従業員規模300名以下の中小企業では34%、1,001名以上の大企業では23%となっており、最も成果重視の傾向が強いのは中小企業であることが分かる(図表1-3)。
【図表1-1】採用している人事評価の方法
【図表1-2】自社の人事評価制度において重視されている点
【図表1-3】企業規模別 自社の人事評価制度において重視されている点
テレワーク下における人事評価、出社時より困難と感じる企業が7割以上
次に、テレワークを導入している企業について、「テレワーク下では、人事評価が出社時よりも困難であると感じるか」を聞いたところ、「非常にそう思う」(18%)、「ややそう思う」(56%)を合わせると74%と、7割を超えている。やはり多くの人事の実感としても、テレワークによる人事評価は、オフィス出社時と比べて困難な点があるようだ(図表2-1)。
こういった実感は、人事評価のタイプによって異なるのだろうか。成果重視の傾向が強いほど定量的な評価となるため、テレワーク化による影響を受けづらいものと予想されるが、実際はどうだろうか。前述の「自社の人事評価制度において重視されている点」のタイプ別に、「テレワーク下での人事評価の困難さ」についての実感の度合いを比較してみる。テレワークにより人事評価が難しくなったと感じている企業の割合(「非常にそう思う」と「ややそう思う」の合計)は、最も成果重視のタイプである「主に仕事の成果で評価」と回答したグループで81%、「成果に重点を置きつつ、成果とプロセス両面をバランスさせている」のグループでは71%、「プロセスに重点を置きつつ、成果とプロセス両面をバランスさせている」のグループでは83%となっている。この結果を見ると、単純に「成果重視であるほどテレワーク化による影響は少ない」ともいえないようだ。テレワーク化による人事評価への影響の大小を決める要素としては、テレワーク下でのコミュニケーションの習熟度等、「人事評価制度における成果重視の傾向」以外にも加味すべき点が多々ありそうだ。なお、「主に仕事のプロセスで評価している」のタイプの企業は5社のみであるため、傾向を分析するにはサンプル数が不十分であると思われる(図表2-2)。
【図表2-1】テレワーク下では人事評価が出社時よりも困難であると感じるか
【図表2-2】評価制度のタイプ別 テレワーク下での人事評価の難しさについての実感
テレワーク下の適正な人事評価のための取り組みは「面談機会の増加」が最多
次に、「テレワーク下の人事評価における課題」については、「勤務態度を実際に見ることができない」が最多で54%、次いで「仕事のプロセスを詳細に把握できない」が49%、「他のチームメンバーとのコミュニケーションの状況がわからない」が45%などとなっている(図表3-1)。
このような課題がある中で、「テレワーク下での適正な人事評価のための取り組み」については、「特に取り組んでいることはない」が39%となっており、なんらかの取り組みをしている企業は61%であった。取り組みの内容については、「1on1等、面談・コミュニケーション機会の増加」が最多で39%、次いで「人事評価 方法の変更」が13%、「勤務状況を詳細に把握するためのシステムの導入」が12%などとなっている。テレワークに合わせて人事評価の方法を変えるというアプローチよりも、テレワークにより減少したコミュニケーションをなんらかの方法で補完するというアプローチをとる企業が現状では多いようだ(図表3-2)。
ただし、人事評価の方法の変更には時間を要するため、今後このアプローチをとる企業が増えていく可能性はある。後述するように、テレワークに沿った評価方法への変更の必要性を感じている企業は少なくない。
【図表3-1】テレワーク下の人事評価における課題
【図表3-2】テレワーク下での適正な人事評価のための取り組み
テレワーク対応の人事評価制度への変更、「変更済み」「検討中」を合わせると約半数
次に、「テレワークに対応した人事評価方法への変更の必要性」については、「テレワーク対応のためにすでに人事評価方法に変更を加えた」(5%)、「テレワークに対応するよう人事評価方法の変更を検討している」(43%)を合わせると48%と半数近くとなっている。前述したように、「テレワーク下での適正な人事評価のための取り組み」においては「人事評価方法の検討」は13%となっており、既に変更したり、変更に向けて動きだしたりしている企業はまだ一部であるが、必要性を感じている企業はもっと多いようだ(図表4)。
【図表4】テレワークに対応した人事評価方法への変更の必要性
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【調査概要】
アンケート名称:テレワーク下における人事評価の実態調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年1月29日~2月5日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人事担当者様
有効回答:265件
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