2018年6月8日~6月15日に実施した本調査では、まず「採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ」という人的資源管理の軸と、「組織・制度・仕組み・システム」という組織管理の2軸を設け、それぞれの「現状」と「将来(3~5年後)」について質問した。
今回の調査レポート第1回では、この2軸に関する人事の課題意識について報告したい。
●人的資源管理の課題のトップは今年も「次世代リーダー育成」
現状の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題について質問したところ、トップ3は順に「次世代リーダー育成」(61%)、「新卒採用」(59%)、「キャリア採用」(51%)となった。これらは順位の前後はあるものの、最近3か年の調査結果と変わらずトップ3をキープしている。
「最重要課題」に関する回答では、「次世代リーダー育成」(24%)と「新卒採用」(22%)が「キャリア採用」(11%)、「マネジメントスキル向上」(10%)に差をつけているが、やはりトップ3の項目は変わらなかった。
ただし、「最重要課題」について企業規模別で見てみると、「次世代リーダー育成」への関心は、従業員数301~1000名の中堅企業が最も高い(37%)。
最重要課題を「キャリア採用」と回答した割合は、従業員数1001名以上の大企業で4%、301~1000名の中堅企業で7%、300名以下の中小企業で17%を占めており、企業規模が小さくなるほど、キャリア採用に対する課題感が大きくなっていることが分かる。
【図表1】現状の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(全体)
【図表2】現状の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での最重要課題(全体)
フリーコメントを見ると、やはり「採用難」と「人材育成」が多いが、今回の調査では、「適切な人材配置」に関する悩みが散見された。
・教育面に確立されたものがなく、行き当たりばったりの状態である。また「教育担当者の教育」も完全ではない。(1001名以上/サービス)
・事業構造、事業展望に基づく適性人員適正配置にはなっていない(1001名以上/サービス)
・年齢別人員構成が歪(1001名以上/サービス)
・組織が年齢ピラミッドと同じ構成。50歳前後がボリュームゾーンで、しかも管理職となっており、若手が全く育たず、管理職がコア業務に集中できなくなっている。(1001名以上/メーカー)
・人員構成の歪みの是正が必要であるものの、急にそれを実現するのは困難であり、とすれば大きく膨らむシニア層の活性化が必要になる(1001名以上/メーカー)
・店舗展開の見直しによる人員配置の問題、社員・部署活性化や適所適材のための異動(301~1000名/サービス)
・会社の成長に人財の育成と選抜(抜擢)が後手になっているため、組織構造上のアンバランスが顕著。(301~1000名/サービス)
・人員の年齢構成や職種構成の歪み・ミスマッチの是正が最重要課題である。(301~1000名/商社・流通)
・従来は長期間を経て淘汰されたベテランに頼ったが今後は短期間で管理職層を育成せねばならない。マネジメントスキル研修を始め、評価、配置等を含むタレントマネジメントが必至だが経営層の理解がなく動きがない。(301~1000名/運輸・不動産・エネルギー)
・定年再雇用の適材適所配置の検討と給与体系の整備(300名以下/商社・流通)
●3~5年後の人事課題は「新卒採用」がトップ。
今後3~5年の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題については、「新卒採用」(44%)、「次世代リーダー育成」(41%)、「マネジメントスキル向上」(35%)が上位を占めた。「キャリア採用」(33%)も4位につけている。
企業規模別で見ると、従業員数1001名以上の大企業は「次世代リーダー育成」の課題感が高く、52%でトップとなった。一方で、従業員数301~1000名の中堅企業では「キャリア採用」(40%)、「若手育成」(35%)が大企業、中小企業と比較して突出している。
採用と育成に関する人事の課題は、やはり高い。
【図表3】今後3~5年の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(全体)
●「新卒採用」に対する課題感が大きく躍進
同じく、今後3~5年の最重要課題を質問したところ、「新卒採用」(21%)が他に抜きんでてトップとなった。
2017年の調査では「次世代リーダー育成」(29%)がトップで、「新卒採用」は16%だったことを考えると、「今後も採用難が続くこと」を肌で実感している人事担当者が増えたことが窺える。
大卒の求人倍率は下降に転じる気配もなく、企業の求人意欲は依然として高い。昨今の採用環境はとてつもなく厳しいことが分かる。
【図表4】今後3~5年の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での最重要課題(全体)
フリーコメントでも、「新卒採用」に関する課題や展望が多く寄せられた。
・労働人口が減っていく中で、各企業で(優秀な)新卒の取り合いになることは必至。(1001名以上/サービス)
・これから約10年後~20年後くらいにかけ、人材のボリュームゾーンの60歳定年退職が起きる。無策のままでは、人の数は減る一方。(1001名以上/メーカー)
・継続的な新卒採用は重要であり、採用環境は激化するとともに変化していくことが予測される。(1001名以上/メーカー)
・労働市場が縮小していく中で、女性活躍推進含め、ダイバーシティ推進が必須と考えている。(1001名以上/メーカー)
・新卒採用に重点をシフトしているが、採用した若手の活躍が会社成長の鍵を握る
(301~1000名/サービス)
・女性に限らずではあるが、人手不足が加速して行く中で、特に女性に活躍してもらう機会を増やしていかないとうまく回らなくなる(301~1000名/サービス)
・建設業を志望する学生の減少および同業他社あるいは異業種との建築・土木系学生の採用における競合。(301~1000名/メーカー)
・次代を担う人材が確保できない(300名以下/メーカー)
・更に採用環境が厳しくなっている(300名以下/メーカー)
・少子化、売り手市場を受けて、どうしても外せない課題。そんなにすぐには好転しないでしょう。(300名以下/情報・通信)
・今後も若手人材の市場価値は上昇し続ける見込みのため(300名以下/マスコミ・コンサル)
●組織管理の現状課題は「人事制度の改定」と「従業員のモチベーション維持・向上」
現状の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題について質問したところ、「人事制度の改定」と「従業員のモチベーション維持・向上」が43%で同率1位となった。
続いて、「教育体系・能力開発の導入・改定」(41%)、「評価の定着、評価者スキルの向上」(38%)が続く。
2017年の調査では、「従業員のモチベーション維持・向上」(43%)がトップで、上位4項目は今年と変わらなかった。ただし、2017年調査では「人事制度の改定」(36%)は4位であり、今年は7ポイント躍進している。
一方で、2017年調査において「人事制度の改定」(36%)と同率だった「長時間労働への対応」は、今回の調査では11ポイント下がって25%となった。「働き方改革」に伴う「長時間労働の是正」が、少しずつ回り始めているということだろう。
その証として、最重要課題に関する回答では「長時間労働への対応」は、昨年1位(16%)から、5位(7%)にまで順位を下げている。
最重要課題のトップは、「人事制度の改定」(25%)である。
以下、「人事制度の改定」に関するフリーコメントをいくつかご紹介する。
・結局、制度がほかの項目のほとんどと関係してくるので、最重要と考えた。だが、ただ作ればよいというものではなく、どのように考え、人事制度を構築するか、が鍵。仏作って魂入れず、ではダメ。(1001名以上/メーカー)
・多様な人材の活躍の場を広げていくためにも柔軟な人事制度が必要になってきている(1001名以上/メーカー)
・時代の潮流に合致した制度への変更(1001名以上/メーカー)
・人材育成と連携した評価システムを中心とした人事制度構築(1001名以上/メーカー)
・現状にあった人事制度への改変を行う必要があり、現在取り組んでいる。(1001名以上/情報・通信)
・制度疲労を起こしているので、見直しが必要。(301~1000名/サービス)
・人事制度の重要性と必要性を経営が認識しつつも、実態が伴わない。(301~1000名/サービス)
・人事制度を改定中であるが、システム変更をできる人材がいない。(301~1000名/メーカー)
・人事評価制度とそれに直結する処遇について情報収集→改訂作業中(300名以下/金融)
【図表5】現状の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(全体)
【図表6】現状の【組織・制度・仕組み・システム】面での最重要課題(全体)
●3~5年後の課題も「人事制度の改定」が1位
続いて、今後3~5年の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題を聞いたところ、こちらも「人事制度の改定」(41%)がトップとなった。
最重要課題も同様に「人事制度の改定」(21%)がトップである。最重要課題では、「組織開発・組織風土改革」(12%)が2位となり、「従業員のモチベーション維持・向上」(11%)を若干上回った。
フリーコメントでも、「人事制度の改定」や「組織開発・組織風土改革」に関する回答が見られる。多数のコメントの中から、いくつかを抜粋してご紹介する。
・モチベーション低下やメンタルヘルスの根源は組織の風土にあると考えるので、そこを改善しないことには何も良くならない。(1001名以上/サービス)
・組織風土の改革によって、実力主義に持っていきたい。(1001名以上/メーカー)
・多様な人材が活躍できる人事制度の再検討(1001名以上/メーカー)
・モチベーションが上がる制度設計になっていない。運用がうまくいっていない。(1001名以上/メーカー)
・グローバル化が加速する中で、柔軟な人事制度が必要となってくる(301~1000名/メーカー)
・色々な改定を含めて働く人のフォローアップが必要(301~1000名/運輸・不動産・エネルギー)
・新しい働き方や価値観に対応できる制度改革が必要(300名以下/マスコミ・コンサル)
【図表7】今後3~5年の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(全体)
【図表8】今後3~5年の【組織・制度・仕組み・システム】面での最重要課題(全体)
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】人事の課題とキャリアに関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年6月8日~6月15日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事責任者・ご担当者
有効回答:165件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
3)HRプロ運営事務局へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用先名称(URL)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
- 1