その一方、学業や研究との両立に苦慮しながら就職活動に励む理系院生であるが、コロナ禍の影響をどのように捉え、現在の就職活動に対してどのように取り組んでいるのだろうか。
HR総研(ProFuture株式会社)とLabBase(株式会社POL)は、今年1月における2022年修了理系院生の就職活動の実態について共同調査を行っており、以下にその結果を報告する。
<概要>
●6割近くの理系院生が「修士1年6月」までに就職活動開始
●6割の理系院生が就職活動に対して「不安」
●コロナ禍による研究遅延は6割近く、就職活動への影響の懸念も半数以上
●過半数の理系院生が「4社以上」のインターンシップに参加
●参加したインターンシップはオンライン型が主流、長期間タイプは対面型が多い
●最も重要視するインターンシップ内容は「対面での実務体験」
●志望する職種は「研究職」が6割、業界の絞り込みが進む学生も8割
●理系院生の4分の3が「仕事内容への自身の専門性活用は重要」
●すでに内定を得た理系院生は1割、7割以上が内定企業のインターンシップに参加
●推薦応募の利用予定は2割、推薦応募枠の廃止に「困る」は4割
●理系院生の6割がダイレクトリクルーティングでスカウト受けた経験あり
6割近くの理系院生が「修士1年6月」までに就職活動開始
まず、理系院生の就職活動の状況を聞いてみると、82%が「就職活動を続けている」状況であり、これから「就職活動を始める予定」は13%と、ほとんどの学生がすでに就職活動を始めていることが分かる。また、3%ではあるものの、すでに「就職活動を終了した」という学生もいる(図表1-1)。
就職活動を始めた時期としては、「修士1年6月」が最も多く30%で、6月までに開始した学生の割合は58%となっている(図表1-2)。大学院に進学して間もない時期(もしくは学部時代)から就職活動を始めている学生が6割近くいることから、せっかく進学しても大学院生の本業である研究になかなか集中できない状況にあることがうかがえる。
【図表1-1】2021年1月時点の就職活動の進捗
【図表1-2】就職活動を始めた時期
6割の理系院生が就職活動に対して「不安」
就職活動に対する所感については、「やや不安である」が最多で34%、次いで「とても不安である」が24%と「不安」とする理系院生が58%と6割近くを占めており、一方、「とても楽観している」(3%)と「やや楽観している」(20%)を合計した「楽観している」とする理系院生は23%と4分の1にも満たない状況にある(図表2-1)。
このような学生の所感の理由として、「楽観している」とする学生は、「オンラインでの就職活動が可能となり、効率的に活動できる」が最多で41%、次いで「インターンシップへの参加で有利になっている」が36%、「就職活動への苦手意識がない」が29%などとなっており、デジタルネイティブな学生にとってはコロナ禍による就職活動のオンライン化は歓迎すべき変化となっていることがうかがえる(図表2-2)。
一方、「不安」とする理由では、「面接が苦手」が最も多く60%、次いで「新型コロナウイルスの影響で採用が減少しそう」が55%、「自己分析ができていない」が43%などとなっており、就職活動への対策に自信を持てないでいる学生が多いことがうかがえる。また、「研究が進んでいないので、就職活動との両立が難しい」も39%と約4割に上り、理系院生ならではの悩みを抱える学生も少なくない(図表2-3)。
【図表2-1】自身の就職活動に対する所感
【図表2-2】楽観視している理由
【図表2-3】不安視している理由
コロナ禍による研究遅延は6割近く、就職活動への影響の懸念も半数以上
前述したような悩みを持ちながら就職活動を続ける理系院生であるが、大学の研究等の進捗にはコロナ禍の影響は出ているのだろうか。
コロナ禍での大学の研究・授業の進捗状況については、「計画より遅延している」が圧倒的に多く51%で過半数となっており、次いで「計画を変更し遅延なく進行している」が32%、「計画より早く進行している」が7%などとなっており、少なくとも「遅延している」(「計画より遅延している」と「計画を変更したが遅延している」の合計)とする学生は57%と6割近くに上っている(図表3-1)。
また、これらの進捗による就職活動への影響については、「やや影響がある」(36%)と「大いに影響がある」(18%)を合計すると54%となり、過半数の理系院生が少なくとも「影響がある」と感じている(図表3-2)。
このようにコロナ禍による学業の遅延は、理系院生の就職活動に対する不安感をより一層増長する要素となっているのだろう。
【図表3-1】コロナ禍での大学の研究・授業の進捗状況
【図表3-2】大学の研究・授業の進捗の就職活動への影響
過半数の理系院生が「4社以上」のインターンシップに参加
ここからは、インターンシップへの参加状況について見てみる。
まず、インターンシップへの参加社数については、「4~6社」が最も多く29%、次いで「3社」が16%、「2社」と「10社以上」がともに13%などとなっており、過半数がすでに4社以上に参加していることが分かる。一方、「0社」(応募していない/選考で漏れた・欠席した)はわずか9%と1割にも満たない(図表4-1)。
参加する目的としては、「業界・職種・企業への理解を深める」が圧倒的で86%、次いで「企業と自分の相性を確認する」が65%、「仕事を体験してみる」が58%などとなっており、自分の肌で業界・職種・企業を感じた経験を、その後の就職活動に活かしたいと考えていることがうかがえる(図表4-2)。
理系院生においても学部生と同様に、インターンシップへの参加は就職活動における常識となっているようである。
【図表4-1】インターンシップへの参加社数
【図表4-2】インターンシップへの参加の目的
参加したインターンシップはオンライン型が主流、長期間タイプは対面型が多い
次に、参加したインターンシップの実施形態(対面型かオンライン型か)については、「対面型」の「0社」が51%となっており、インターンシップに参加した過半数の学生は「オンライン型」のみで参加していることが分かる。一方、「オンライン型」の「0社」はわずか3%で、ほとんどの学生が1度はオンライン型のインターンシップに参加していることが分かる(図表5-1)。
また、参加したインターンシップの実施期間については、「対面型」も「オンライン型」もともに「1日」が最多となっているものの、特に「オンライン型」での「半日」~「2~3日程度」の割合が多く、「対面型」の1.7~1.8倍のポイントとなっている。一方、「1週間程度」と「2週間程度」では「対面型」が「オンライン型」より多くなっている(図表5-2)。現状の「オンライン型」のインターンシップは、実質的には、「オンライン型の1DAY仕事体験」となっている傾向が強く見られる。
さらに、参加したインターンシップのプログラム内容を見てみると、「会社説明、業界・事業紹介」が「対面型」と「オンライン型」ともに最多でそれぞれ77%、89%、次いで「ケースワーク・グループワーク」がそれぞれ63%、85%などとなっており、どちらも「対面型」より「オンライン型」の割合の方が高くなっている。これらはオンライン型でも実施しやすいプログラムとなっているのだろう。一方「実務体験」と「現場見学」に関しては、やはり「対面型」の割合の方が高く、いずれも4割以上あるのに対し、「オンライン型」では2割前後となっている(図表5-3)。
今年度はインターンシップのオンライン化が一気に拡大した年となったが、まだプログラム内容には偏りがあり、インターンシップの本来の目的である「就業体験」をオンラインで経験した学生は少数派であるのが実態のようだ。
【図表5-1】参加したインターンシップの実施形態
【図表5-2】参加したインターンシップの実施期間
【図表5-3】参加したインターンシップのプログラム内容
この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研×LabBase】2022年卒理系院生の就職活動動向調査(1月)
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)、LabBase(株式会社POL)
調査期間:2021年1月8日~15日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:LabBase会員である2022年卒理系院生
有効回答:451件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
3)HRプロ運営事務局へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用先名称(URL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
- 1